Eighter -Blindness Wizard-
11ther 〜首(くく)りは連鎖せり A〜



#0
 東京都、迥巛(はるかわ)工業専門学校
 そこで一人の女性が首をつって自殺を図ったことから今回の事件は始まった。
 彼女は誰もいない教室で、首をつって自殺を図ったのだが、奇妙なことに首吊りに使用する台座がその教室には
見当たらなかった。
 まるで彼女は宙を舞って参上し、ロープに首をくぐらせて宙を舞うのをやめたかのようだった。

#1
 朝方、教室に入って首吊りを見て度肝を抜かれた教師の通報により、早速捜査は始まった。
警官「中川警部……ホトケは外谷鮎巳……死因は言うまでもなく縊死(いし)です」
中川邦武(ほうむ)「ふぅむ……」
 黄土色のスーツが嫌に目立つことで有名なのがこの中川警部だ。
 『中川』という名の『警察』、そして『黄土色のスーツ』……そこから導き出される結論は……いや、今はそん
なことはどうでもいいが……
邦武(ほうむ)「自殺か?」
警官「そうですねぇ……遺書とか見つかってませんが、自殺なんじゃないでしょうかね?」
 適当なことを言い出すのは無能警官の面目躍如と言ったところだ。
邦武(ほうむ)「いや、ちょっと待て……」
 しかし、無能警官の中でも少しは有能な(酷い言い様だ……)中川警部は現場から違和感をかぎ取った。
邦武(ほうむ)「これは、他殺の可能性が無きにしも非ず……」
警官一行「え、どういうことですか?中川警部!?」
邦武(ほうむ)「これが自殺ならば必要なあるモノが欠けている……」
警官一行「遺書ですね?」
 違うわッ!
 冒頭でも述べた通り、現場には首吊りするために使うはずの台座がなかった。
 え?教室なんだから、机や椅子があって然るべきであり、台座がないわけないんじゃないか?と思う人もいるだ
ろう。
 しかし、その教室には机も椅子もなかった。だからこそ、彼女が自殺したとは思えなかったのだ
※じゃ、この教室、何の教室だよ!って疑問が出てきますが、そこは華麗にスルーしてください。
警官「な、中川警部、大変です!」
 と、そこへ一人の無能警官が血相を変えて飛び込んでくる
邦武(ほうむ)「何だ?騒々しいぞ、どうした?」
警官「首吊りです!」
邦武(ほうむ)「知ってる」
 と、言うか、その通報を受けて警視庁捜査一課の俺達がここへやって来たんだ。
警官「いや、違いま……あ、逢ってるけど、違う……」
邦武(ほうむ)「はぁ?」
 お前は一体何を言っているんだ?と首をかしげる中川警部
 ともかく、来てください!と叫ぶ無能警官に連れられて、中川警部は校舎の外……庭に生える松の木までやって
くる。

#2
邦武(ほうむ)「なっ、これはぁ?!」
 そこには、松の木で首を吊る男性の姿があった。
 無能警官が首吊りと騒いだのはこのことだったのだ。
警官「中川警部……こちらのホトケは夏川七雄と言い……」
 言うまでもなく、迥巛(はるかわ)工業専門学校の生徒である。
 そして、松の木の近くにはそこにはそぐわないあるものがあった……そう、机と椅子である。
邦武(ほうむ)「これは……」
 やはり、あっちの教室の首吊りは他殺……そして、ここにある机と椅子はおそらく、あの教室から持ち運んだ物
……
 つまり、あの教室で彼女を自殺に見せかけて殺したのは彼で、続いてここで自殺をしたのだ……
 中川警部はそう推理した。
警官「え〜、中川警部……聞き込みの結果分かったことなのですが、どうも、夏川氏は外谷氏を殺してやりたいと
考えていたそうで……」
邦武(ほうむ)「そいつぁ聞き捨てならないな……」
警官「ええ、二人は幼稚園からの幼馴染だったんですが……」
 いつも一緒にいたせいか、相思相愛だと勝手に勘違いした夏川氏が外谷氏に告白したのだが、彼女からしてみれ
ば無関心だったようで夏川氏は盛大に恥をかいたとのこと。
 その場では夏川氏は笑ってごまかしたのだが、その日を境に夏川氏は外谷氏を殺してやる!と心に決めたそうだ
※まぁ、当然と言えば当然か?……殺すというのは行き過ぎだけど……
 そして今、夏川氏は外谷氏を自殺に見せかけて殺した……のだろうか!?

 さて、ところ変わって天四斗(あまよと)、Eighter本部
梓與鷹(よたか)「……」
 例によって例の如く、勝手知ったるEighter本部と言ったような感じで総介が桜と共にはせ参じていた。
與鷹(よたか)「え〜〜と、総……」
 今日は一体どんな用件で?と與鷹(よたか)が問おうとしたその矢先、狙った如く総介が口を開く
(かみ)総介「先日、東京にあるさる工業専門学校で首吊り事件が発生した……」
與鷹(よたか)「首吊り?」
 何か事件が起こったからこそ、総介がここへ来たのだろうとは思っていたが、首吊りとは想像の外であり、與鷹(よたか)
は思わず聞き返す。
山咲(やまざき)桜「ちなみに、事件は2件あった」
 なんだよ、その船は2隻あった(JoJo)だかフィルムは2つあった(BJ)だかわからん言い回しは!
総介「これを見ろ!」
 乱暴にA4サイズの茶封筒を放り投げる総介。
 それを受け取った與鷹(よたか)は早速中身に眼を通す
與鷹(よたか)「何だこれは!?」
 そこには驚くべきことが記載されていた。
雨水(おぼろ)「ん〜〜?……過去5年間で首吊りした生徒、教師の数実に100人強ぉおお!?」
 さり気なく盗み見してみた(おぼろ)も素っ頓狂な声を張り上げる。
 一体あの学校で何が起きているというのか!?


続

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