Eighter -Blindness Wizard-
8ther 〜瞬速な怠惰の終焉(ラピッド・スロウス) B〜



#3
 七罪塔(しちざいとう)を巡る三つ巴の死合。うち、シレントワイザードは敗退した。
 そして、かんな VS ゴールの死合もいよいよ最終局面を迎える。
白拍子かんな「……」
 神滅超越者(ラグナロクエクセル)を下段に構えたままゴールをじっと見つめるかんな。
ベルフェゴール(何を考えている?)
 ゴールの持つスピードという優位は失われても、全てを無力化するゴール最大最強の奥義は健在。
 で、あるというのに、なぜかんなはこんなにも落ち着いていられるのか?
 そんなことを考えている間に、かんなは一足飛びにかかる
かんな「龍咬舞刃(りゅうこうぶじん)!」
 キィンッ
 と、同時に応龍(おうりゅう)に変幻する光の龍を解き放つ
ベルフェゴール「ハッ!」
 ぎゅんっ
 慌てず騒がずクワトロフルア〇セルで回避。
かんな「鳳鸞舞刃(ほうらんぶじん)!」
 ドンッ
 続けざまに平安を(もたら)す鳳凰を解き放つかんな。
ベルフェゴール「無駄なことをッ!蝕無戴漫(しょくむたいまん)!」
 しかし、迫る鳳凰はあっさりと無力化される。
ベルフェゴール「はあっ!蝕無戴漫(しょくむたいまん)!」
 そのまま振り向くと同時に背後から迫りくる応龍(おうりゅう)をも無力化するゴール。
 これは応龍(おうりゅう)と鳳凰の挟み撃ち。だが、そんなことはお見通しなんだよ!と得意気なゴール。
 だが、そんなことが分からないかんなではない。
かんな「てぇいっ!」
 ゴールの背後を取るとそのまま神滅超越者(ラグナロクエクセル)を横に薙ぎ払う。
ベルフェゴール「う、うおおおおっ!」
 更に加速!背後から迫る凶刃を回避するゴール。
 いつからクワトロフルアク〇ルが最速だと錯覚していた?
※クワトロフルア〇セルを超えた加速。さしずめクインテプルオーバー〇クセルといったところか
ベルフェゴール「終わりだ!《キツネザルの使徒》ッ!」
 そのままかんなの背後を取ると必殺の斬撃たる蝕無戴漫(しょくむたいまん)を繰り出さんとするゴール
かんな「龍鳳麟龜(りゅうほうりんき)ッ!」
 ドドドドッ
 対してかんなは、そんなゴールよりも一拍子早く応龍(おうりゅう)、鳳凰、麒麟、霊龜(れいき)を一気に解き放つ。
ベルフェゴール「無駄なんだよッ!」
 ガキンッ
ベルフェゴール「何だと!?」
 その時、神滅超越者(ラグナロクエクセル)の刃が五尺の長さとなり、ゴールが振り下ろした盲いた蘭学(ブラインド・ダッチ)の鍔の部分を打つ。
 それは超運を持つかんなだからこそできるカウンター、無力化の無力化である。
ベルフェゴール「う、うおおおおっ!」
 このままかんなと打ち合い続けることをすぐさま諦めたゴールは神滅超越者(ラグナロクエクセル)盲いた蘭学(ブラインド・ダッチ)に激突した反動を用い
て後方に戦線離脱。

#4
 ゴールがもちうる最大最高のスピード、クインテプルオーバーア〇セルを以てして脱出。
 先ほどまでゴールが居た場所にかんなが放った応龍(おうりゅう)、鳳凰、麒麟が炸裂する。
 ドカンッ
ベルフェゴール「ぐおお!?」
 しかして、霊龜(れいき)だけはゴールを追い詰める。
 いや、応龍(おうりゅう)、鳳凰、麒麟の激突を反動に、霊龜(れいき)をゴールに打ち出す。
※ビリヤードじゃないんだから……
ベルフェゴール「《キツネザルの使徒》ッ!」
 ギロリとかんなを睨み付けるゴール。
ベルフェゴール「だが、これで勝ったつもりならば、片腹痛いわっ!」
 こんな不意打ち、二度も通用すると思うなよ!
かんな「いいえ、これで幕引きです……」
 ふるふると首を振りながら、かんなが呟く
ベルフェゴール「舐めるな、《キツネザルの使徒》!」
かんな「龍鳳麟龜(りゅうほうりんき)!」
 怒りに猛り狂うゴールに四大奥義を一気に見舞うかんな。
ベルフェゴール「蝕無戴漫(しょくむたいまん)!」
 ドンッ
 応龍(おうりゅう)、鳳凰、麒麟、霊龜(れいき)が無力化……されない。
ベルフェゴール「何?!」
 貴様、一体何をした?!……などと考えている場合ではない。まずはこの場を離脱してから反撃のチャンスを窺
う。
 だが、思ったよりスピードが出ない。
ベルフェゴール「馬鹿なッ!?」
 かくて、四霊はゴールに直撃す。
ベルフェゴール「が、がああああッ!?」
 一体、ゴールの身に何が起こったのか?
 優雅にゴールに歩み寄り、神滅超越者(ラグナロクエクセル)を突きつけるかんな。
かんな「お終いです」
 これにて、幕引きだ!
ベルフェゴール「《キツネザルの使徒》!貴様ぁッ」
 かんなが使う流派、羅神無綺(らじんきむ)流……その四大奥義が一つ、龜鎧舞刃(きがいぶじん)……その最大にして究極の効果は相手の運命
を狂わすことにある。
 そう、先ほど、四霊の三つで霊龜(れいき)を打ち出し、ゴールに直撃させたあの時が運命の分かれ目。
 既にゴールの命運は狂わされていたのだ。
 故にこの結末である。
ベルフェゴール「まだだッ!ゲヘナテリトリーをバースト!」
 まだ、万策尽き果てぬ!冥王の心臓……まだ、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)には奥の手がある。
 最後の一撃。
かんな「……」
 ズダンッ
 だが、既に天命を狂わされたゴールが、ここでパワーアップするのはあまりに遅すぎた。
 もし、霊龜(れいき)を喰らう前にパワーアップしていれば、あるいは結果は違ったかもしれない……だが、全ては手遅れ
である。
 かんなの一撃の前に、ついに、ゴール堕つ!

#5
ベルフェゴール「あ、あがああああッ」
フキエル「な、なんてことだ……七罪塔(しちざいとう)が!」
 その時、フキエルもまた屋上へ到着。ゴールの断末魔を聞き悲痛の表情を浮かべる。
エランドラ「クッ、七元徳(ななげんとく)を一つ失った挙句、七罪塔(しちざいとう)も……」
フキエル「そんな……」
エランドラ「撤退だ!」
梓與鷹(よたか)「あっ、待て!」
エランドラ「ハッ、待てと言われて待つ馬鹿がいるかッ!」
(かみ)総介「よせ!」
 撤退するシレントワイザードを追おうとせん與鷹(よたか)を制止する総介。
エランドラ「再々の黄門(リレミト)!」
 カカッ
一同「うお!?」
 エランドラが叫ぶと同時に懐から取り出したアーティファクトを地面に叩き付ける。
 と、同時に眩い閃光がエランドラ、フキエルを包み、光が収まったころには二人の姿は忽然と消え失せていた。
※ってか『リレミト』ってなんだよ……ダンジョンの入り口に戻る呪文じゃねぇのかよ?

與鷹(よたか)「総……いいのか?」
総介「フン、今はまだ……な……」
 決戦の日はいずれ来る……
 シレントワイザードを斃すのはその時でいい。
 今回の最大の戦果はアスモに続き二体目の七罪塔(しちざいとう)を斃せたことにある。
総介「帰るぞ……」
総介「あ、ああ……」
 七罪塔(しちざいとう)、残り五つ……


END

前の話へ 戻る 次の話へ