Eighter -Blindness Wizard-
2nder 〜咎人は暁に消える A〜



#0
 夜原彰晃……その名を知らぬものは居ない。
 彼は王蟲(オウム)真理教という新興宗教団体の教祖であり、地下鉄サリン事件など13の殺人事件や殺人未遂事件を巻き起
こした稀代の大罪人。悪名高いとは正しくこのことである。
 そんな極悪人に死刑が言い渡されたところから闇は動き始めた。

#1
 東京都、東京都留置所
 その地下深くにある特別独房に彼は居た。
夜原彰晃「……」
 裁判で死刑判決が言い渡されたときも、彼は静かに『最早私の役目は終わった』と一言呟いただけで、後は何一
つ語ることなく今に至っている。
警官「……奴は、何もしませんね……」
警官「逆に何かしでかされたら困りもんなんだがな」
 だが、この静寂は返って不気味だ。
 ヒュンッ
 その時、何かが通路の片隅を横切ったかのように見えた
警官「おい、今何か動かなかったか?」
警官「え?気のせいだろ?」
 慌てて何かが動いたかに見えた場所にライトを当てるも何もない
警官「ったく、驚かせやがって……」
警官「おかしいなぁ……何かが動いた気がしたんだがなぁ……」
 だが、しかし、その警官が見たものは正しかった。その頃、独房では異変が訪れていたからだ。

*「やぁ、迎えに来たよ」
彰晃「……」
 突如として独房の中に出現する謎の子供。彼は言うまでもなく場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)、その上位存在・七罪塔(しちざいとう)が一人
だ。
*「聞えてるかい?」
彰晃「……」
 しかし、何の返事もしない
*「人間(パーツ)風情が、いい気になるなよ?」
 ザワリ……と空気が凍る。
彰晃「がならずともさっきから聞こえてはいる」
*「そうかい、だったら返事位してほしいものだな」
彰晃「お前は何だ?」
*「ゴール……ベルフェゴール……君を適合者として迎えに来たんだ」
彰晃「下らんな……」
ベルフェゴール「何?」
 またしてもビキリと空気が凍る。
ベルフェゴール「人間(パーツ)如きが、図に乗るなよ!貴様は適合者として選ばれた、だから一緒に来い!」
彰晃「断る。私の役目は既に全て終わっている……」
ベルフェゴール「貴様ッ!」
彰晃「そんなことよりも、今宵は千客万来だな」
ベルフェゴール「ハッ!」
 何を戯言を……と思った次の瞬間、ゴールは自分の背後に何かがいることを察する。
 振り向くとそこには、女の子を連れて歩く謎の……不審者?がいた。
ベルフェゴール「何だ、貴様」
 こっちは忙しいんだ、後にしろ!とシッシッとあしらうゴール。しかし、奴の目的は彰晃ではなかった
*「私の目的はお前だ、《怠惰(スロウス)》のベルフェゴール」
ベルフェゴール「何?」

#2
 場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)、しかも上位存在、たる七罪塔(しちざいとう)の一人を知る者など、滅多にいない。
 そして、《キツネザルの使徒》の仲間の様には見えない。
*「我らが大願のために、ご足労願おうか?」
ベルフェゴール「巫山戯(ふざけ)るなよ、人間(パーツ)が!」
 ズドオオンッ
警官一行「な、何だ!?」
 突如巻き起こる大爆発……それは彰晃の独房の方からだ
警官「い、一体、何が!?」
 慌てて彰晃の独房へ向かう警官一行。すると、そこには内側より爆破され黒焦げになった独房があった
警官「な、何だ!?一体何が!?」
*「ゲホゲホ……」
 そして、そこから現れたるは、女の子を連れた不審者だった
警官「貴様、一体!?」
 ジャカカッと拳銃を突きつける警官一行
警官「動くな!」
*「ここは退くぞ……」
 ガガガガッ
警官「な、何だアレは!?」
 銃弾は謎の障壁にて阻まれる。
 警官一行がぽか〜んとしている間に、謎の不審者はその場を去っていくのであった。
警官「た、大変です!夜原彰晃が居ません!」
警官「な、何だと!?」
 更に、独房から彰晃の姿が消えていた。
警官「馬鹿な、奴はどこに!?」
 先ほど独房から逃げた謎の不審者、奴が重要参考人であるとして警察は早速指名手配を開始するのであった。

 ところ変わって天四斗(あまよと)、Eighter本部
梓與鷹(よたか)「消えた夜原彰晃……」
(かみ)総介「独房から幼女を連れて逃げ去る謎の不審者を見た……という情報もある」
與鷹(よたか)「なっ、総……」
 いつの間にここにやって来たのか……最早ここにいるのが当たり前的な感じで総介が、桜がいた。
山咲(やまざき)桜「今回肝心な情報は、幼女を連れて逃げていった謎の不審者……というところです」
與鷹(よたか)「幼女?……まさか……」
 幼女と聞けば最早場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の上位存在、七罪塔(しちざいとう)しか思い浮かばない一行。
※それはそれでどうかと思うけど……
與鷹(よたか)「夜原彰晃を連れ去った目的は……」
桜「間違いなく場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の適合者として使い潰すためでしょうね……」
総介「だろうな……」
 だが、奴らが今どこにいるのか、それが分からないのでは手も足も出ない……
白拍子かんな「夜原彰晃の興した王蟲(オウム)真理教は今、アレフ・ゼロという名に代わっていますが……」
與鷹(よたか)「それだ!奴らはきっとそこにいる!」
 かんなが突如こんなことを言い出すのにはワケがある。つまり、それは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)が関与している!と勝
手に思い込む與鷹(よたか)
総介「落ち着け、與鷹(よたか)!」
與鷹(よたか)「す、すまん……」
 だが、そこには何か手がかりがあるかもしれない!?


続

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