Eighter -Bizarre Investigate-
54ther 〜弱虫ペダルの懺悔 C〜



#5
佐場濡那(さば・ぬな)「お前に……それができるのか?」
西村慎太「任せてください。俺の自転車も沼淵モーターのウ○トラダッシュモーターをモーターライズした一品。
スピードでは奴に引けを取りません」
濡那(ぬな)「ならば、任せたぞ」
警官「佐場(さば)警部!?いいんですか!?」
濡那(ぬな)「もう、漕ぐの限界……」
一同「えぇ……」
 佐場(さば)警部、リタイア
慎太「大野田……お前は、俺が止める!」
 ドギュオオオオッ
 まるでポケ○ンBDSPのロック○ライムを途中で中断させて自転車に乗るというようなバグ技みたいなエフェクト
をまき散らして西村の自転車が走り出す。
慎太「お、お、の、だぁああああ〜〜〜ッ!」
大野田坂道(はんど)「に、西村ッ」
 ガガガガガガガッ
 両者、漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ……力の限り漕ぐ。
 それは、公道最速伝説(自転車編)……逃げる者と追う者……勝者はどちらに!?

慎太「警部さんから話は聞いた……今ならまだ間に合う(……と思う)。だから自首してくれ!」
 大野田を眼前に捕え、西村が叫ぶ。
坂道(はんど)「いやだ、まだ(選手として)死にたくないッ!」
 しかし、大野田はそれを(自分勝手な理由で)拒む。
慎太「馬鹿な!(警察から)逃げきれるとでも思っているのか!?」
坂道(はんど)「それでもッ!守りたい(自分の)世界があるんだぁ!」
 パァン!と、そのとき、大野田の中で何かが弾けた
※そんな種割れじゃないんだから……
慎太「いいだろう!だったらお前のプラ○マダッシュモーターと俺のウル○ラダッシュモーター……どっちが上か
決着をつけようぜ!」
坂道(はんど)「だったら……俺も本気を出さざるを得ないようだな……」
慎太「ハッタリだ!この期に及んでまだ力を隠しているなどと……」
坂道(はんど)「フッ」
 ニヤリと北叟笑(ほくそえ)むと、大野田は左ハンドルの変速ギアのようなものを押す。
 ギュオンッ
慎太「なっ、馬鹿な!?」
 するとどうだろう……両者の差は完全に埋まったかに思えたが、しかし、大野田が更にそこから加速する。
 互いにモーターライズしているのならば、条件は互角のはず……ならば、どうして大野田は更に加速できるのか
慎太「ハッ!?お前……まさか!」
坂道(はんど)「そうだ!前輪と後輪をモーターライズした!これで速度は更に倍!」
 瞬間最大速度(トップスピード)120km/hも夢じゃない!と豪語する坂道(はんど)
※いや、その理屈はおかしい。

#6
 徐々にだが、しかし、確実に差は広がっている
坂道(はんど)「誰も、俺を止めることはできないッ!……止まるんじゃねぇぞ、俺!」
慎太「だが、お前は間違っている!……そして忘れている!」
 しかし、西村は諦めずに食らいつく
坂道(はんど)「なっ!?馬鹿な?!」
慎太「モーターが二倍なら、電池消費量も二倍だ!」
坂道(はんど)「はっ?!……しまったぶれっとぉ〜〜」
 なんとも初歩的なことを忘れていた大野田であった。
 かくて、両者の差は再び縮まっていく。それも加速度的に
坂道(はんど)(俺が……負ける!?……嫌だ、そんなのは嫌だ……俺はまだ捕まりたくない……刑務所の中でクサい飯を食
いたくはない……そして何より、深夜アニメをリアルタイムで見れないのは嫌だッ!)
 どうでもいいことだが、大野田はオタクだった。
 じゃあ、なんでそんなオタクが自転車で肉体を鍛えるようになったのかは、本家弱虫ペダルで説明してもらえる
と思うので割愛して、大野田は捕まりたくない一心で今、己の限界を超える
※いや、だから、本家弱虫ペダルとは一切関係ない話だから!
坂道(はんど)「う、うおおあああああっ!」
 ギュゴオオオッ
慎太「な、なんだと!?」
 既にモーターライズの恩恵も十分に受けられないはずなのに、意地と根性で加速する大野田。
 これには西村も驚きを隠せない。
慎太「お前……そこまでして……」
 そして、ここに来て西村のモーターライズの恩恵も終焉を迎える。
慎太「くっそぉ!どうしたら……どうしたら大野田を止められるんだ!」
 どうでもいいけど、愛知県警の連中は何をしてるんですかね。パトカーで追跡しろよ……
慎太「どうしたら、あいつの心に響く言葉をかけてあげられるんだ……」
 しかし、その時、西村に電撃が走る。
慎太(そうか!俺と大野田は同じ土俵に立っていない……だから、俺がいくら説得しても届かない……)
 それは悪魔の発想……そして、友を止めるためには地獄に落ちる決意を胸に、西村は一線を超える
慎太「ぬ、うぉおあああっ!」
 ズゴガガガガガッ
坂道(はんど)「な、何ぃ!?」
 再び縮まる両者の距離……
 そして、一瞬の交錯の後、西村は大野田を超える
坂道(はんど)「へ!?」

#7
慎太「おりゃああっ!」
 ズバンッ
 そのまま西村は歩道に突っ込み近くにいた女性を車輪で両断。彼女は苦しむ暇もなく絶命した。
一同「キャアアアア!」
 そして、響き渡る悲鳴!
慎太「大野田ッ!俺と一緒に刑務所(地獄)へ行こうぜ!」
 そんな悲鳴を無視して西村はどこぞの上弦の鬼みたいなポージングと共に叫ぶ
坂道(はんど)「西村……お前……な、なんでだよ!なんで、こんな……」
 その西村の壮絶な覚悟に、大野田も走るのをやめる。
坂道(はんど)「お前は、俺と違ってまだ……将来が……」
慎太「いいんだよ、大野田……お前と一緒なら……」
坂道(はんど)「う、うああああ!」
 大野田、慟哭……それは魔がさして人を殺してしまった時以上のものだった。

濡那(ぬな)「西村慎太……お前をスピード違反、および殺人の現行犯で逮捕する」
坂道(はんど)「待ってくれ、警部さん……俺がやりました!」
 すっと両手を差し出す大野田
※いや、この状況で『俺がやりました』は無理がある
 さておき、こうして『弱虫ペダル』と呼ばれる風評被害も甚だしい事件は幕を閉じることとなる。


END

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