Eighter -Bizarre Investigate-
55ther 〜トラが主役と(いえど)も〜



#0
 2022年……干支で言えば寅年。
 つまり、トラが主役の年。そして、これは虎が犯人(主役)になったとんでもない事件を綴ったファイル

#1
  栃木県某所、那須サファリゾーン
 そこは那須湯本温泉の近くにあるリゾート施設。その最大の特徴は万歩計を装備して500歩以内であれば捕まえ
た野生の動物を持ち帰ることができるという点だ
※ポ○モンのサファリゾーンじゃねぇんだぞ!
 時は2022年、時代は空前絶後の虎イヤー(ただの寅年)。ならば、文字通り虎の子として虎を全面的に押し出し
ていくことになったのだが、その準備期間中に悲劇は起こった。
*「ジョン・虎ボルタ〜!わぁ〜っ!」
 飼育員の一人、風天寅三(かぜあま・とらみ)。36歳の悲鳴が響き渡った。
 異変を察知した同僚はすぐさま警察に連絡。虎に襲われた彼女は右手首から先を失うこととなった。

警官「土部(どぶ)警部……襲われたのは飼育員の風天寅三(かぜあま・とらみ)土部(どぶ)陸「うむ」
警官「聞いて驚かないでくださいよ。彼女、何と!36歳で」
警官「年女なんです!」
警官「前厄なんです!」
 見事に二人の警官が同時に叫んだ
警官「おい、てめぇ、女性で36歳って言ったら厄年だろうが!」
警官「バカ言うな!36歳と言えば年女って相場が決まってるんだよ!」
 と、喧嘩をしだす馬鹿が二人。
 そんな謎のマウント合戦を行う馬鹿二人を放置して、土部(どぶ)警部は支配人の葛原(かつらはら)値に話を聞く
葛原(かつらはら)値「あなたが栃木県警にその人ありと謳われた土部(どぶ)警部ですか……」
 お噂はかねがね……と言いだす支配人に今はその時ではないとピシャリと切り捨て事件当時のことを聞き出す。
 ちなみに、余談であるが、この土部(どぶ)警部、栃木県警で一番の巨根の持ち主ということで、その界隈では有名だそ
うだ。
※いや、なんでそんなことで知名度が上がってるんだよ!
値「このジョン・虎ボルタは普段は大人しく人懐っこい虎なのですが……」
一同「ジョ、ジョン・トラボルタ!?」
 無茶苦茶なネーミングに一同は驚きを隠せなかった。
 ちなみに、施設の動物目録にはジョンボルタと書かれているが、本施設の飼育員はその名前で呼ばずに、親しみ
の意味を込めてジョン・虎ボルタと呼んでいるそうだ
※絶対にどこぞから苦情が来そうなネーミングである

#2
陸「……虎が大人しくて人懐っこいって時点で突っ込みどころ満点なのだが……」
値「ちなみに、あちらにいますのはジョン・虎ボルタの奥さんの虎ンザム・ライザーでございます」
一同「……」
 こちらは動物目録にはムザムライザと書かれていた。

 さて、話を戻そう。
警官「なるほど、寅年だから虎を全面に押し出していこうと画策していた矢先の出来事だったと……」
値「はい。正に青天の霹靂と言ったところですな……」
陸「ってか、なんで大人しくて人懐っこいんだ?」
 そもそもの疑問をぶつける土部(どぶ)警部。
陸「そこは企業秘密ですので……」
 人を襲わないように飼育している技法は那須サファリゾーンの秘中の秘。もし、この情報がバレれば、他の施設
でも同じことが起きてしまう。
 しかし、それは避けたいのだと力説する支配人であった
※いや、どこも真似しないと思う。そもそも、捕獲した動物を持ち帰ることが可能と言われても、大型肉食獣とか
 普通飼えないから……
警官「やはり、人を襲うような虎は殺処分するしかないのでは」
値「それを殺すなんてとんでもない!」
 食い気味で叫ぶ支配人。
*「た、大変です!」
 と、その時、一人の飼育員が血相を変えて飛び込んでくる
値「なんだ、一体、今は取り込み中で……」
*「それが、虎ンザム・ライザーが暴れているんです」
一同「な、なんだってぇ!?」
警官「やはり人間に歯向かう愚かな動物は殺処分しかないですね!」
 目をキラキラさせながら物騒なことを言いだす警官。お前、動物を殺したいだけなんじゃ?
値「しかし、どうしてそんなことに……」
*「ジョン・虎ボルタを一旦檻に閉じ込めたじゃないですか……そのせいで奥さんである虎ンザム・ライザーが怒
り心頭なんじゃないでしょうか?」
値「むぅ……ならば、二匹を同じ檻に入れるしかないか……」

 と、いうわけで虎捕獲のために一行は現場へと駆けつける。
警官「はっ、土部(どぶ)警部……見てください、虎の腹が赤く光ってますよ!」
警官「これが虎ンザム・ライザーか……」
 そんなわけはない。

#3
警官「土部(どぶ)警部……別に殺してしまってもかまわんのだろ?」
一同「ダメに決まってんだろ!」
※と、言うかそれは死亡フラグ
陸「お、おい……檻の中の方も腹が赤く光ってないか」
一同「なんだって!?」
値「まさか、突然の凶暴化の原因はそれなのか!?」
警官「土部(どぶ)警部……これはもしかしたらテスラ・ライヒ博士が残した遺産が暴走しているのではないでしょうか」
一同「テメェはマンガの見過ぎだ馬鹿野郎!」

 ひとまず、馬鹿どもは放置して麻酔銃で眠らせて、司法解剖(いや、だから殺さないから!)を行うことになっ
た。
 すると……
警官「土部(どぶ)警部……鑑識の結果、二匹の虎の中から検出されたのは殺生石らしいです」
陸「殺生石だと!?……いや、あの施設は那須湯本温泉の近く……で、あれば、何らかの要因で殺生石が紛れ込む
こともありえない話ではないな」
※いや、ありえない話です。
警官「それから、殺生石を取り除いた結果、大人しくて人懐っこくなったとの報告もあります」
一同「……」
 殺生石、やはりそれは危険な物質かもしれないということ改めて認識されされた一行であった。
 ちなみにその後、右手首から先を失った彼女は小型の大砲を仕込んだ義手をつけて復帰したというが、信じるか
信じないかはあなた次第である。


END

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