#0
　これは弱虫ペダルの物語である。
　と言っても某チャンピオンの漫画の事ではない。
　これはとある犯罪者につけられた風評被害が甚だしい事件である。

#1
　愛知県、名古屋某所
　キキ〜〜、ドンッ
＊「あっ、うわぁあ！」
　その日、一件のひき逃げ事件が発生した。
　自転車にひかれた女性は死亡……ひき逃げを行った張本人は、その場を逃げ出した。
　これが、後に『弱虫ペダル』という風評被害も甚だしい名前で呼ばれる事件の始まりである。

　翌日、路上で死亡している女性がいると通報を受け、愛知県警は駆けつける。
警官「佐場(さば)警部、ホトケは野々村恵子……この轍(わだち)を見るに二輪にひかれて死亡しているように見えます」
佐場濡那(さば・ぬな)「ひき逃げか……」
警官「ダメですね、佐場(さば)警部……ここは街角防犯カメラの死角に位置していまして、犯人が誰なのかは分からない
です」
濡那(ぬな)「これは早くも迷宮入りか……」
※いやいや、もうちょっと頑張ろうよ……そんなんだから無能警官の謗(そし)りを受けるんだぞ
警官「事件当時に何か変わったことがなかったか聞き込みを行ってみたんですがね……」
　しかし、誰もひき逃げがあったことに気づかなかったそうだ。
　それ故に捜査は難航した……

　愛知県警
警官「鑑識の結果、事件に使われたのは自転車の様です」
濡那(ぬな)「自転車？！……バイクじゃないのか？」
警官「はぁ……自転車ですね……」
　果たして自転車で人を殺せるのか……そんな疑問が佐場(さば)警部の頭を過ぎった。
　が、しかし、鑑識が自転車による犯行だというのならば、それが真実なのだろうと佐場(さば)警部らは考えるのを辞め
た。
※いや、考えるのを辞めないでください。

警官「ひき逃げの一番の理由は怖くなったから……」
濡那(ぬな)「そうか……ならば、この事件の犯人はさしずめ『弱虫ペダル』だな……」
　一人の警官がぽつりと呟きに佐場(さば)警部が重ねた結果、この風評被害も甚だしい事件の名前は決まった。
　そして、事件発生から一週間後……漸(ようや)く捜査に進展があった。
　事件発生当日、自転車に乗った学生の姿を見たという情報が入ったのだ。
　最も犯人(ホシ)と思しき学生は短いバットのようなものを逆手に自転車を飛ばしていた……ような気がすると
いうような曖昧な情報でしかなかったのだが……

#2
　再び事件現場へ足を運ぶ愛知県警
警官「佐場(さば)警部、新しい情報ですが、事件現場の近くには街角防犯カメラはなく死角となっていましたが、少し離
れた場所の街角防犯カメラに犯人の姿が映っていたようです」
濡那(ぬな)「何？本当か！？」
　早速そのカメラの映像を確認する一行。
※ってか、最初からそうしなさいよって話なのだが……
一行「なっ、これはッ！？」
　そして、その映像を見て一行は驚愕する。
濡那(ぬな)「おいおい……短いバットのようなものを片手に……と言っていたな……」
　片手じゃなくて逆手な。
警官「え、ええ……」
　しかし、その短いバットの正体は……何と！酒瓶だったのだ！
警官「と、いうことは……飲酒運転！？」
　犯人が現場から逃げ出したのは怖くなったのが半分。もう半分は飲酒運転の発覚を恐れてのことだったのだろう
　酒、飲まずにはいられない！と言ったところか
※いや、なんか違うだろ、それ！
　カメラに写っていた映像から、学生の身元が……いや、どの学校の制服なのかが分かったのも大きな収穫と言え
ば収穫だろう。
警官「佐場(さば)警部、犯人は双北(そうきた)高校の生徒のようです」
濡那(ぬな)「そう来たか……」
※駄洒落かよ！
　双北(そうきた)高校……それは小高い山の上に座す高校。生徒の殆ど全てが自転車通学を行っていることで有名な学校であ
る。
　小高い山を駆け上るのに生徒はみな自転車を使っている。だが、ごくごく一部の変わり者だけが自らの脚を使っ
て登山して登校しているらしい。その結果数々の競輪選手を輩出している名門として有名なのだそうだ。
濡那(ぬな)「直ちに双北(そうきた)高校へ向かうぞ！」
一同「オオ！」

　と、意気込んだのはいいが、何といっても小高い山の上にある高校にたどり着いたころには一行はい気が上がっ
ていた
警官「ハァハァ、近頃の若いモンはこんなところを元気に走っているのか」
　お前はどこの老人だよ！ってか、車使えよ……
＊「Oh...Youは何しに我が校へ？！」
　と、そこへ一人の教師が佐場(さば)警部に気づいて声をかけてくる。彼の名は緋得御簾太(ぴえる・みすた)。双北(そうきた)高校で英語教師をやっ
ている。
濡那(ぬな)「警察だ！」
緋得御簾太(ぴえる・みすた)「スコットランドヤード？！」
　どうしてスコットランドヤードが真っ先に思い浮かぶのか……まぁ、そんなことはさておき、聞き込みを開始す
るのだった。


続