Eighter -Bizarre Investigate-
47ther 〜捜査一課自殺茶事(さじ)



#0
 自殺は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!
※そりゃ『自殺』じゃなくて『事件』だ!
 これは、そんな、とある自殺に纏わる事件簿である。

#1
 静岡県、静岡県警
警官「なんてこった……こんな……」
 ある夜の出来事、誰もいない捜査一課の部屋で、一人の警官が後悔に苛まされていた。
警官「かくなる上は……こうするしかない……」
 ダアンッ
 そして、銃声が響き渡る。

 翌朝
警官「ひっ!?」
 一人の警官が捜査一課に足を運ぶと、そこには血まみれの漢の姿があった。
警官「たっ、大変だ!今すぐ警察に連絡を!」
警官「馬鹿野郎!俺たちが警察だっての!」
警官「あっ、確かに……」
警官「ここは落ち着いて110番に連絡するんだ!」
警官「いや、だから、俺が、俺たちが警察だ!」
警官「そうだ、俺もお前も警察だ!」
※いや、お前はどこの刹那だよ!
 暫く似たような馬鹿騒ぎが続き……十分後くらいに漸く落ち着いた一行は改めて捜査を開始するのであった。
警官「ホトケは巻田一人(まきでん・ひとり)、享年21歳。静岡県警捜査一課の警官だ」
警官「まぁ、それは分かってます……」
警官「拳銃をこめかみに充ててズドンってのが死因……」
警官「そして、一番異様なのがコレだ!」
 床には血文字で『迷惑をかけてごめんなさい。同期の皆がんばって』等と遺書のようなものが残されていた。
警官「警部、これは自殺ではなく、他殺なのではないでしょうか?」
警官「まぁ、その線もあるかもしれないが、ホトケの左手を見てみろ」
警官「これは!?」
 人差し指と中指の先端が銃撃で吹っ飛ばされていた。
警官「おそらくホトケはまず、自分の左手の人差し指と中指を拳銃で吹っ飛ばし、ソレを筆替わりに遺書を書き残
し、そして自殺を図ったんだろう」
警官「そ、そこまでして……」
 なんて凄まじい……と、一行は戦慄を隠せない。
警官「た、大変なことが分かりましたよ!」
 と、そこへ一人の警官が血相を変えて駆けつける。
警官「どうした?大変なこととは!?……はっ、まさか!?」
警官「はい。そのまさかです」
警官「今日は(かみ)警部が視察にやってくる日なのか!?」
一同「はい!?違いますけど……」
※え!?総介がなんだって!?

#2
 総介が視察に来るのかどうかはこの際おいといて……その警官は本当に伝えたかったことを話し出す。
警官「ホトケが最後に担当していた事件ですよ」
警官「それが、何か?」
警官「捜査線上にある人物の名前が浮かび上がったんです」
 そ、その人物とは!?と一行が固唾をのんで見守っていると、彼は続ける。
警官「あの『自殺摺造(みずとり・しょうぞう)』です」
一同「な、なんだってぇ?!」
 自殺摺造(みずとり・しょうぞう)……不自殺自殺志願者として有名な自殺幇助のプロである。『これだから自殺はやめられない』などの
口癖でも有名だが、アンタ、死んでませんから、残念!新域にでも行って来い、斬り〜!
警官「つまり、ホトケは自殺摺造(みずとり・しょうぞう)を追って自殺してしまったということか……」
警官「ええ、おそらくは……」
警官「よし、ではこれにて事件は解決とする。解散!」
一同「ハッ!」
 事件も無事解決したことだし、一行はその場を解散して戻ろうとするのだが、警察署を出たところで、俺たちの
職場ってここじゃん!って思いだし、恥ずかしながら再び現場に集合するのであった。
警官「いいか、お前らも一人で自殺摺造(みずとり・しょうぞう)を捜査しようと思うなよ……意識を操作されて自殺に追い込まれると考え
ろ」
※駄洒落かよ!
 しかし、事件はこれだけでは終わらなかったのだ……
 翌日、再び、静岡県警捜査一課にて自殺が巻き起こる。
一同「なっ、これはぁッ!?」
 しかも、前日と全く同じ、左手の指を拳銃で吹っ飛ばし、それを筆代わりに遺書を残し、こめかみを拳銃で一発
という死に方だ。
 血文字の遺書には『死んでお詫びを……』と書かれていた。
警官「まさか、昨日の明日でこんな出来事が起こるとは……」
警官「あの、それを言うなら『昨日の今日』なのでは?」
警官「いや、よく考えてみろ、『昨日』という視点で見てみると、その日における『今日』というのは『昨日』だ
ろう?」
一同「た、確かに!」
※いや、『昨日の今日』ってそういう意味じゃねぇから!
*「何を馬鹿なことをやっているんだ、お前たちは……」
一同「かっかかかかっかかっかかかっ、(かみ)警部ぅう!?」
 満を持して総介登場。一行に戦慄走る。

#3
山咲(やまざき)桜「死亡したのは篠畑耿暉(しのはた・こうき)……」
警官「……先日死亡した巻田一人(まきでん・ひとり)の同期じゃねぇか!」
警官「まさか、親友の死に後追い自殺を!?」
警官「いや、まだ親友だと決まったわけではない」
桜「警部、これを……」
(かみ)総介「フン……」
 昨日の事件についての調書を総介に手渡す桜。
総介「なるほどなぁ……自分を騙っての犯行は許さんといったところか……」
一同「え!?一体どういうことです!?」
総介「昨日の自殺は今日自殺したそこのバカが自殺に見せかけて殺した事件だと言っている」
一同「そんな馬鹿なッ!?」
桜「そして、自分の名を騙っての犯行を許さない本家が、彼を自殺に追いやった……と、いうわけです」
一同「ですが、どうしてそんなことが分かるんですか!?」
総介「では、昨日の自殺だが、ホトケが自殺に使った拳銃はどこにあった?」
一同「それはもう、みなの拳銃と一緒にキチンと棚に保管されて……ああっと!?」
 自殺に使った拳銃がきちんと棚に保管されていれば、他殺を疑う他ないわな。
 さらに言うと、その拳銃からは篠畑の指紋も検出されたんだからこれはもう確定ですわ……
 こうして、このゴミみたいな事件は本当の意味で幕を閉じるのであった。
 なお、どうして総介がここへやってきたのか、それは不明である。
※いや、不明て……


END

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