Eighter -Bizarre Investigate-
47ther 〜戸籍の無い漢の怪 B〜



#3
黒酢卵油(くろす・らんゆ)「本当にDNA鑑定の結果は間違いないんだな?」
警官「はい。間違いありません……レイプされた女子高生がレイプ前に池端卓也(真)と合意の元性交渉を行って
おり、池端卓也(偽)の魔手から逃れられていたというのなら話は別ですが……」
警官「ふむ……ならば、間違いはないか……」
※いや、どこから犯人の精液を採取したの?
 ってか、想定がいろいろとおかしい……
卵油(らんゆ)「ちなみに、念のために確認しておくが、犯行当時、池端卓也(真)は?」
警官「はい。まだまだWeb会議の真っ最中だったとの確証はとれております」
 どうでもいいけど、三時間以上ぶっ通しのWeb会議とは一体!?
卵油(らんゆ)「クソッ、池端卓也(偽)め!」
 ガンと近くの電信柱に拳を叩きつけて警官が叫ぶ。
警官「もしかしたら池端卓也(偽)は精子バンクかどこかから池端卓也(真)の精液を奪取して、それを使ったの
ではないでしょうか?」
警官「なるほど、ありえない話ではないな……」
卵油(らんゆ)「よし、ただしに精子バンクへ問い合わせろ!……それから池端氏の家の近くのゴミ捨て場でゴミ袋を漁って
ティッシュを盗んでいった不審者がいないかもチェックだ!」
一同「はっ!」
※いやいやいや、精液の入手経路の想定、ひとつ絶対に間違っているだろ!
 あと、埼玉県警の連中はひとつ、肝心なことを見落としている。
 それは、レイプ現場に残された精液は池端卓也(真)のものだけだったということだ。きっと池端卓也(偽)は
無精子病だったんだよとかアフォなことを考えているのだろう。

 だが、池端卓也(真)は精子バンクへの登録が未実施だった。
 また、当然のことだが、ゴミ捨て場に不審者もいないという確証はとれた。
警官「大変です!また表の星女学院に池端卓也(偽)が出現!九人の女子高生を拉致していったと……」
警官「奴め、自宅でスクール愛奴隷(アイドル)としゃれこむつもりか……」
卵油(らんゆ)「いくらネオサイタマコーポレーションが埼玉の顔だとしても、これ以上もみ消すのは無理がある……」
※お前ら今までの犯行もみ消してたの!?
 堪忍袋の緒が切れたということで埼玉県警の一行はすぐさま池端氏の家へと駆けつける。

#4
池端卓也「これは一体どういうことですかな?」
 屋敷に突入しようとしたその矢先、池端卓也(真)がリムジンで帰宅。
卵油(らんゆ)「実はあなたによく似た漢が数々の犯行を行っておりまして……その事情聴取を……」
卓也「私に似た!?……アンタらは似ているというだけで私が犯人だと決めつけるのか?」
一同「そ、それは……」
警官「で、ですが……あなたに似た犯人というのが、表の星女学院に乗り込んでレイプを行いましてね……」
卓也「で?」
警官「現場に残された精液をDNA鑑定した結果、あなたのものだと断定されたもので……」
卓也「……はぁ!?なな、何を馬鹿なことをッ!」
 その時、卓也は一瞬物凄く動揺したかのように見えたが、埼玉県警の連中はそれに気づくことがなかった。
卓也「ともかく、アンタらは早く犯人を捕まえて俺の無実を晴らせ!」
一同「は、はい。埼玉県警の総力を挙げてネオサイタマコーポレーションに忠義を尽くします!」
 そして、ひとまずこの場は解散となったのだ。

 翌日
警官「今日は池端卓也(偽)が何か事件を巻き起こしたなんて報告はありませんね……」
卵油(らんゆ)「流石に奴も馬鹿ではないということか……」
*「そして、馬鹿は貴様らの方だな……」
一同「うわあああッ!?」
 突如聞こえる総介の声。振り返るとそこには桜とともに総介がいた。
 まるでこの世の終わりを見たかのように埼玉県警の連中は震え上がるのであった。
(かみ)総介「貴様らでは話にならんだろうから、俺が来た」
警官「かかかかっ(かみ)警部、何を!?」
総介「とっととこの事件を終わらせるぞ」
 そして、総介が向かった先は池端氏の家だった
卵油(らんゆ)「ちょ、ちょ、ちょっと、(かみ)警部……いくら犯人が池端卓也に似ているとはいえ、池端卓也を犯人に決めつけ
るのはよくないかと……」
山咲(やまざき)桜「はい。犯人は池端卓也ではありませんね」
警官「でしょう……」
総介「だが、池端卓也であると言えなくもない」
卵油(らんゆ)「一体何を言っているんですか?」
卓也「アンタら家の前で五月蠅いな……」
総介「SRAPの(かみ)総介だ!」
卓也「なっ、SRAPだと!?なんで……」
総介「貴様には用はない。とっとともう一人を出せ!」
警官「もう一人!?」

#5
 一体(かみ)警部は何を言っているんだ?と埼玉県警の連中は首を傾げる
*「……SRAPの眼はごまかせないということですか……」
卓也「クッ……」
 ギリギリと歯ぎしりする卓也……そして、屋敷の奥からもう一人卓也が現れる
一同「ん、なぁ!?卓也が二人!?」
 そう、これが事件の真相。なんてことはない。双子だったのだ。それも一卵性双生児。
 一卵性双生児とはいわば天然モノのクローンである。故にDNA鑑定の結果は卓也のものと断定された。
警官「し、しかし、卓也氏に双子の兄弟がいたという話は聞きませんが……」
総介「フン、当然だろう……奴は戸籍に登録されていないのだからな」
一同「えええ!?」
卓也(真)「……なるほど、そこまでお見通しというわけか……」
卵油(らんゆ)「い、いや、一体どういうことなんですか、(かみ)警部、教えてくださいッ!」
桜「つまり、片方はスペア……ということです」
卵油(らんゆ)「す、スペアぁ!?」
卓也(偽)「……あぁ、俺は奴が不慮の事故にあった際に身代わりになるスペア……そして俺は戸籍のない人間…
…つまり、俺は存在しないから何をやっても許される!」
総介「そんなわけあるかボケナス!」
 こうして、この奇妙な事件は幕を閉じることとなった。
 なお、卓也(偽)は事件発覚後、流石に戸籍登録せざるを得なかったのは言うまでもない


END

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