Eighter -Bizarre Investigate-
46ther 〜獄炎に焼かれる(つみ)



#0
 数ある自殺の方法で焼身自殺が一番苦しい死に方だと言う。
 そして、これは、突如焼身自殺を図った謎の少年に纏わる事件簿である。

#1
 東京都、大化学園
*「ぐあああっ!?」
一同「なな、なんだ!?」
 突如屋上で悲鳴が響き渡る。
 騒ぎを聞きつけて駆けつけてみると、そこには炎に包まれる一人の生徒の姿があった。
*「う……うごごごご!?」
 よろよろとふらつきながら、彼は屋上から落下する。
*「だ、誰か警察を!」

 そして、十分後……
警官「刀持警部……ホトケは木下健一。この学園で一番のイケメンだったそうです」
刀持隕山(いんざん)「ふむ」
警官「彼は成績優秀、体力抜群、絶倫超人と三拍子そろった人物でして」
※成績優秀、体力抜群はいいとして、絶倫超人って……
隕山(いんざん)「で、なんで彼は死んだんだ?」
警官「それが……分からないんです……」
隕山(いんざん)「分からない!?」
警官「はい、先ほど申し上げた通り、彼は学園で一番のイケメン……つまり、イジメを苦に自殺なんて線はないで
す」
隕山(いんざん)「ならば、自殺ではなく、他殺という可能性は?」
警官「なるほど!その手があったか!」
※いや、その手があったか!じゃねぇから!
警官「確かに、彼のことを妬ましく思っているスクールカースト底辺がいてもおかしくはないですね」
警官「早速スクールカースト底辺にいそうなブ男連中を連行してきました!」
※お前ら馬鹿にしすぎやろ!
警官「さぁ、正直に答えろ、どうしてあいつに火をつけたんだ?」
一同「いや、つけてねぇし!」
*「ってか、炎に焼かれていた時って授業中だったから、みんなにアリバイがあるんじゃ!?」
隕山(いんざん)「馬鹿者!そういうことはもっと早く言うんだ!」
 いや、アンタの部下が馬鹿やって有無を言わさなかったからだよ……
 その後、真面目に捜査をしたところ、以下のことが分かった。(いや、最初から真面目に捜査しろよと言いたい
んだが……)
警官「刀持警部……犯行時刻にアリバイのない生徒がたった一人だけおりました」
隕山(いんざん)「何!?誰だ!?そいつはどこにいる!?」
警官「ですが、その一人というのが、病気で家で寝込んでいる生徒でして……」
 それはアリバイがない生徒がいましたとは言わない。

#2
木下健一「何かあったんですか?」
*「あぁ、木下健一が炎に焼かれて……」
一同「どわお!?」
 その時、何事もなかったかのように死んだはずの木下健一が登場、一行は慌てふためく。
*「馬鹿なっ、お前は死んだはず……」
健一「いや、酷いな……」
*「だ、だが、確かに炎に包まれて、屋上から落下するのを俺たちはこの目で見た!」
*「ちょ、ちょっと待ってくれ、そういえば、思い出したことがあるんだ!」
 その時、生徒の一人があることを思い出す。
隕山(いんざん)「なんだ?その思い出したことと言ううのは?!」
*「俺たちは確かに炎に包まれ、屋上から落下する木下健一を見た……」
*「だが、屋上から身を乗り出して落下地点を見たとき、そこには何もなかったんだ」
*「た、確かに、あの時、地面には何もなかった……」
 てっきり骨まで残さず燃え尽きてしまったのかと思ったが、常識的に考えてみればそんなことはありえない。
警官「はっ、まさか、落下途中に窓から校内へ入り込むことに成功したということか!?」
警官「確かに、彼は体力抜群だったと聞く……で、あれば、落下途中に窓から校内へ飛び込む芸当も不可能ではな
いだろう」
※いや、そんな芸当、常人には無理だから!
健一「ええと、その……ちょっといいかな……」
 申し訳なさそうに健一が口を開く。
隕山(いんざん)「何か言いたいことがあるのならば、聞こうではないか……」
健一「実は……」
 そして、おずおずと語り出す健一。
健一「実は俺、毬矩原美須汰(まりくはら・みすた)に弟子入りして、マジシャンになろうと思っていたんだ」
一同「な、何ぃ!?あの世界的に有名なマジシャンの毬矩原美須汰に弟子入りぃ?!」
隕山(いんざん)「で、マジシャンに弟子入りしたアンタはどうして焼身自殺を!?」
健一「だから、焼身自殺ではなく、あれは人体発火マジックと脱出マジック?!」
※なんで疑問形なんだろうか!?
警官「ってことは……」
隕山(いんざん)「やれやれ、人騒がせにも程があるな……」
 白けてきた……みたいな感じで刀持警部一行は警視庁へと戻っていくのであった。
*「よ〜し、お前ら、授業を再開するぞ……」
 そして、何事もなかったかのように授業も再開される。

#3
 しかし、この事件は裏があった。
 木下健一は確かにあの時、炎に焼かれて死んだのだ。
 では、なぜ無事だったのか……そもそもどうして屋上から落下したのに地面に激突してなかったのか……
 全ての真相は……悪魔との契約である。そう、あの時、炎に焼かれ生命を落とした健一は、この世に未練があり
過ぎた。それは執念と言っても過言ではない。
 そして、その凄まじい執念に悪魔が興味を示し、この世に黄泉帰ることができたのだった。
健一「さぁ、それでは脅威の人体発火アンド脱出マジックをとくとご覧あれ!」
 ドゴオオオッ
一同「きゃ〜!?」
 叫ぶと同時に業火に包まれて燃え尽きる健一……しかし、次の瞬間には何事もなかったかのように奇跡の生還を
果たす。
※いや、マジで種も仕掛けもなく、炎に焼かれても平気、へっちゃらってことなのだが……
一同「お〜〜〜!?」
 だが、こんなことのために悪魔は彼に力を貸したわけではないのだが……
 いつの日か、悪魔に見限られて無残な死を遂げるその時まで、彼は人体発火アンド脱出マジック一本で食ってい
くのだった。


END

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