#0
　冤罪……それはやってもないのに犯人扱いされることである。
　そして、これはそんな冤罪に関する事件簿である

#1
　……事件は数年前に遡る……
　天四斗(あまよと)、商店街
＊「誰か〜〜、痴漢よ〜〜〜！！」
　ドカドカッ
一同「テメェか！」
＊「なっ……ちょ……俺じゃねぇ……」
　天四斗(あまよと)商店街にて白昼堂々と起こった痴漢事件……犯人は即刻逮捕され、事件は無事、終了したかに思えたのだ
が……

　富山県、富山県警
志摩椅埴亜(いじえ)「ああ？いい加減に白状したらどうなんだ？畑中劉一。お前がやったんだろ？」
畑中劉一「それでも僕はやってない！」
※映画の宣伝ですか？アンタ……
椅埴亜(いじえ)「アンタがそう言いたいのは分かるがな……しかし、被害者はアンタが犯人だ……と証言している」
劉一「違う、俺じゃない……監視カメラの映像を見ればわかるはずだ……」
椅埴亜(いじえ)「残念だがな……監視カメラは何者かに破壊されていたんだ……」
劉一「そんな……」
椅埴亜(いじえ)「だから、被害者の証言……そして、周りの証言からもお前しか犯人はいないんだ……」
劉一「でも、俺じゃないッ！」
　……この、婦女暴行事件は裁判により有罪となり、劉一氏には懲役10年の実刑が言い渡されたのだ……
劉一「違うんだ！俺じゃねぇんだ！！……」
　だが、犯人の叫びも虚しく、劉一は投獄されることとなったのだ……

　……そして、今に至る……

　富山県、富山県警
上(かみ)総介「……フン、それで、何年もずっと黙っていたのか？」
椅埴亜(いじえ)「……あの……上(かみ)警部？」
総介「……今更この心の傷、社会の批判は消えんぞ……貴様ら……何をやっていた！？」
椅埴亜(いじえ)「……あの……上(かみ)警部……さっきから一体何の話をしているんでしょうか？」
山咲(やまざき)桜「警部は数年前の婦女暴行事件のことについて話しているんです」
椅埴亜(いじえ)「え？……ああ、あの事件……ですか？それなら、犯人は……」
総介「劉一じゃない！真犯人の話をしているんだ！」
椅埴亜(いじえ)「はい！？上(かみ)警部……あの……どうも話が見えてこないんですが……」
警官「ま……まさか……狂言痴漢だったとでも？」
総介「いいから、ヤツをつれて来い……」
椅埴亜(いじえ)「は……はいッ！」
　と、言うわけで数分の後、拘置場から劉一が連れてこられる
劉一「俺じゃない……俺じゃないんだ……」
　劉一はもはや幽鬼の如く……ぶつぶつと『俺じゃない』……と呟くばかりであった……

#2
総介「……おい、しっかりしろ……」
劉一「……俺じゃない……俺じゃない……俺じゃない……俺は、俺じゃない……」
　もはや、自分が誰かも分かっていないんじゃないだろうか……
総介「……はぁ、桜……」
桜「はい、警部」
　ズドガシャッ
劉一「げふぉっ！？」
　その時、何が起こったのか……誰にもわからなかった……ただ、桜の目が怪しく光ったような……
※あれ？総介が珍しく山咲(やまざき)のことを名前で呼んでいる……（誤植じゃないよ！）
劉一「はっ！？」
総介「気がついたか！？」
劉一「……今更……何の用ですか？警部さん……俺ぁね……もう会社や家族から捨てられたも同然なんだ……」
総介「……お前を痴漢だと告訴したのはこの女で間違いないな？」
　すっと写真を見せる総介
劉一「……ああ、そうだよ……ソレがどうした！？……」
総介「……そうか……なるほどな……ならば、やはり……」
劉一「何だ？アンタ……1人で納得しやがって……言っておくがな……俺は……いや、もういい。何度叫んでも俺
の声はお前らには届かん……」
桜「……彼女の名前は……大律……大律泰子」
劉一「今さら名前を聞いたところで何だってんだ……ってちょっと待て……今何て言った……大律……とか言わな
かったか……！？」
総介「……そうだ。大律だ……大律……泰子」
劉一「……大律……だと！？……まさか……大律ってまさか……あの……！？」
　突如驚き、そして血相を変えて憤る劉一
総介「ああ、痴漢の事件の後、暫くたって大律栄一と結婚した女がその大律泰子だ！」
劉一「な……何だと！！？大律ぅううう！！！アイツが！！……あいつが！！」
総介、桜「……」
劉一「警部さん……まさか……俺は……」
総介「……そうだ……」
　ドダンッ
　憤怒の表情で思いっきり机に殴りかかる
劉一「栄一ぃいいい！！！！てめぇが……てめぇが……てめぇが俺の人生を狂わせやがったってのか！！くそっ！
くそっ！くそっ！」
　ドガンッダンダンダンッ
　尚も出血しようがお構いなしに机に殴りかかる劉一……
　一方……取調べ室の前では……
椅埴亜(いじえ)（上(かみ)警部……何をやっているんでしょうねぇ？いまさらあんな事件を持ち出して……）
警官（大律……泰子とか大律栄一とか言ってましたけど……）
椅埴亜(いじえ)（それが……？今回の事件とどう繋がるんだ！？）
警官（確か……大律……泰子さんは痴漢事件の後、男性恐怖症になりかけたけど、それを栄一さんが救ったことが
きっかけで結婚に至ったと聞いたんだが……）
警官（え？……じゃあ……正にヒーローと悪党の関係じゃないですか……）
椅埴亜(いじえ)（こいつぁ……ひょっとしたら歪んだ愛情表現だったのかもしれんぞ……）
　数年前に起こった婦女暴行事件……一体、この事件の裏にはどんな真実が隠されているというのか！？


続