Eighter -Bizarre Investigate-
5ther 〜催眠術商法の恐怖 C〜



#5
志摩椅埴亜(いじえ)夏来蛙有里(げらあ・ゆり)……年貢の納め時だ!」
 志摩警部を筆頭に、警官一行が叫ぶ。
夏来蛙有里(げらあ・ゆり)(チッ……こいつら……)
 ご自慢の催眠術を使えばこんな場所、アッサリと切り抜けられる……と思われがちだが、そうでもない。
 催眠術をかけるにはそれなりに準備がいるのだ。そして、今回、催眠術をかけるお膳立てが整ったその瞬間に警
官隊の突入である。これにより、催眠術をかける下地は破壊されてしまったのだ。
有里(ゆり)「ハッハッハッハッハ……だがなぁッ!」
 ブオンッ
 近くにあったダンボールを投げつけ、その隙に逃走しようとする有里(ゆり)
椅埴亜(いじえ)「そんなものでぇ……」
 だが、そのダンボールに詰まっていたものが問題だった……そう、札束である。
*「うおおおおお!!!!金だぁあ!!!」
*「俺の金ぇ!!」
*「ふざけるな!それは俺のものだぁ!!」
 ドカバキッ
 ガコッ
 有里(ゆり)が投げつけたのはダンボールいっぱいのお札……金に眼が無い若者は競い合うように金を奪い取り……
 その混乱のなかでは流石に警官も身動きがとれなかった……
警官「ええい!その金は騙し取られた金だ!……お前たちのものでは……」
*「うるせぇい!!」
警官「き……貴様ら……公務執行妨害で逮捕するぞ!!」
*「ハッ!警察が怖くてお金を手に出来るかってんだ!!」
*「てんめぇ……俺の金……」
 若者と警官の乱闘騒ぎに発展し、最早犯人逮捕という状況ではない
警官「……くそっ……」
 さっ
 すすすっ
 忌々しげな顔をしつつ、何食わぬ顔で舞い散るお札を掴んでは懐にしまっていく警官が数人
一同「おい!そこのッ!!」
警官「なっ……勘違いするなよ!これは、別にくすねているわけじゃねぇ……証拠物件として後で署に提出する…
…だから安心しろ」
 明後日の方向を向いたまま熱弁する警官
椅埴亜(いじえ)「……本当かよ!?」
 じろ〜〜っと志摩警部が疑惑の眼差しを……
*「てめぇ……そいつは俺の金だぁ!!!」
 と、その最中、更にお金の取り合いは白熱する
警官「お前ら……全員本当に逮捕するぞ!!」
*「ああ!?やってみやがれってんだぁ!!!」
 ゴシャンッ
 ズドバンッ
 ビリビリッ
 ゴキャンッ
※何かお札が破けるような音も混じっているのですが……気のせいではないですよね?

 暫く暴動騒ぎとなり……域椙侘(いきすぎた)ホールが沈静したのはそれから1時間後のことだった……

#6
 一方、何食わぬ顔で大混乱の域椙侘(いきすぎた)ホールを後にした有里(ゆり)は……
有里(ゆり)「フッフッフッフ……ここまでくれ……ばっ!!?」
 ここまでくれば安全と思っていた有里(ゆり)だが、彼の目の前には総介が立っていた。
(かみ)総介「夏来蛙有里(げらあ・ゆり)、貴様を詐欺の疑いで逮捕する!」
有里(ゆり)(クソッ!こいつらはダメだ!)
 催眠術にもかかりやすい人、かかりにくい人がいる。そして、総介と桜は後者だ。
 ちなみに、総介はいざとなったら桜に任せる覚悟で域椙侘(いきすぎた)ホールに潜入を試みようとしていたのだが、富山県警
の連中に先を越されたため、逃げ出してくるであろう有里(ゆり)を待ち伏せする方針に切り替えたため、ここにいる。
山咲(やまざき)桜「貴方にはもう逃げ場はありませんよ!」
有里(ゆり)「ぬぐぐぐ……だが、貴様らは俺の力を見誤ったようだな!」
 見せてやる!俺の催眠術を!と有里(ゆり)はポケットの中から手鏡を取り出す。
有里(ゆり)「うおおお!何も他人にかけるだけが催眠術ではないッ!」
 自分自身に強力な暗示をかけることもまた催眠術の一つだ!
 ムキムキムキッ
 ボバァッ
 筋肉が膨れ上がり、有里(ゆり)の衣服がはじけ飛ぶ。それは北斗〇拳のケンシ□ウを彷彿させた。
有里(ゆり)「貴様に俺の動きが見切れるかっ!」
 バヒュオアッ
 そのまま総介の回りを高速移動する有里(ゆり)有里(ゆり)「どうだ!手も足も出ないだろう!」
総介、桜「……」
 だが、しかし、総介も桜も、慌てず騒がず高速移動する有里(ゆり)を眼で追っていた。
※ってか桜も動きを追えるとか只者じゃねぇな……
有里(ゆり)「行くぜ、おらぁ!」
 周りが見えていないのは有里(ゆり)ただ一人。
 ドゲシャアッ
有里(ゆり)「ほげぇあ!?」
 背後から襲い掛かる有里(ゆり)だが、総介は振り向きもせず裏拳を放ち、有里(ゆり)を一瞬でノックアウトに追い込む。
総介「貴様如きが催眠術を使って強くなったところで、俺とは勝負にもならん!」
 悲しいことに戦闘力が違いすぎた……あんなに筋肉もりもりだったのに……ハリボテだったのか!?
桜「警部、これで大丈夫ですね」
 そして、桜は気絶した有里(ゆり)にハンカチで目隠しを行う。それは催眠術対策である。
総介「後の事は富山県警の連中に任せればいいだろう……」
桜「はい。警部」
 こうして、目隠しされ、手錠で拘束された有里(ゆり)は疲労困憊の様子で域椙侘(いきすぎた)ホールから出てきた志摩警部に引き渡
された。
 その際、くれぐれも目隠しは取るな!と念押しをしたのは言うまでもない。
 そして、有里(ゆり)が逮捕されたことにより、催眠術商法もまた姿を消すこととなった。
 だが、忘れるな、彼が再び野に解き放たれたとき、催眠術商法は黄泉帰る……かもしれない……
※いや、そこはなんか対策とか講じられないものなんですかね?


END

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