朱い宇宙そらの侍・祖章エデン
第1幕 〜雨の中の邂逅〜



忘れえぬ記憶……今から十数年前に俺の目の前で家族を殺した朱い髪の侍……俺はヤツを殺すために侍に
なった……そう、家族の仇を討つために……
天四斗あまよと、某所
ザ〜〜〜
雨が降りしきっている
*「……雨か……忌々しい……」
世界で唯一の侍のための学園……SS学院……家族を殺されたあの日から、俺は仇をる為にその学校で
毎日のように修行に明け暮れた……おかげで学園で俺に並び称されるほどの腕を持つものはいない……
そうそう、言い忘れていたが、俺の名前は……
*「大典光おおのり・ひかる……だね?」
大典光おおのり・ひかる「何だ!!?」
空から声が聞こえる……
ひかる「……なっ!?」
見上げると、そこには……電信柱の……いや、電線の上に立つ人影が……
ストッ
*「やぁやぁ、はじめましてと言うべきか。なるほど、君が大典光おおのり・ひかる君か……」
電線から降りてきたそいつは……全身に真っ黒なボディースーツを着込んだ女だった……
ひかる「何だ?お前……何故俺の名を知っている?」
*「SS学院最強の生徒だ……知らない方がおかしいよ……」
ひかる「……何をバカなことを……それはあくまでも学院内での話だ……」
*「ほう?」
ひかる「……キサマ誰だ!?学院の者ではないな!?」
*「……あ〜〜、うん、そうだね……そうなるね……」
得体の知れないその女……
チキッ
刀に手をかけると
*「おっと、君と争うつもりはさらさら無いんだよ……」
ひかる「だったら、俺に構うな……」
*「君は親の、家族の仇を討つべく修行に明け暮れている……」
ピクッ
ひかる「……キサマ……」
ズヒュオアッ
抜刀して斬りかかる……が、刃はむなしく空を切る
*「おおっと……こんな雨の中に抜刀するだなんて……後で刀の手入れが大変だよ」
ヤツはどこにもいない……ただ、声だけがいずこからか聞こえてくる
ひかる「キサマ……なぜ知っている!……あのときの……?」
ひかる(どこだ!?どこへ消えた!?)
*「忘れたわけではあるまい……あのときお前の家族を殺したのは朱い髪の侍……私ではないはずだ」
……家族を殺した朱い侍……漢とも女ともとれる中性的な顔に、殺戮を楽しみながらの嘲笑……胸は
無かった……
ひかる「フン、姿形などいくらでも変装できる!」
巨乳が貧乳に化けるのは無理……だがな……
*「……だが、君の仇は私じゃない。君が仇を討てる日を楽しみに待っているよ……」
ひかる「ふざけるな!!」
*「……そうそう、忘れるとことだった……私が君の前に現れた理由……」
ひかる「理由!!?」
*「君にプレゼントをあげるよ……大事に扱ってくれたまえ……特別の品だからね……」
ひかる「んなモンいらねぇ!とっとと出てきやがれ!!キサマ……俺の仇を知っているんじゃねえか!」
*「残念ながら、知らないよ……ふふふ……」
ザッ
ひかる「そこ……!!?」
音がしたところには……1人の女が刀を持って立っていた
*「……あなたへのプレゼント……」
すっと刀を差し伸べる女
ひかる「……刀は間に合っている。要らん」
と、告げ、去っていこうとすると……
*「……その刀はもう使えない……雨のせいで直に腐食し、斬れなくなる……」
ひかる「……」
*「……それに……プレゼントは刀だけではない」
踵を返す
ひかる「他に何があるってんだ?」
*「……私……」
ひかる「は!?」
この女……何を言っている!?ある意味犯罪的な言葉だぞ……それ……俺は人身売買なんかに興味は無い
だいたい、何だ?この女……眼に輝きが全く無い……どんな絶望の中に立たされたらこうなるんだ!?
*「……私はあなたと共にあなたの仇を討つもの……」
ひかる「……俺に仲間など要らん……」
*「でも、あなたには必要……」
ザァアア〜〜〜〜
なおも雨は降りしきる……先ほどよりも激しくなっている気がする……
ひかる「くそっ……」
ガッ
彼女の手を掴みその場を離れる
*「あ……」
ひかる「いつまでも雨の中にいるわけにもいかんだろ……話だけでも聞いてやる……どっか雨宿りできそうな
 場所は……」
・
・・
・・・
結局、自分の部屋(寮で1人暮らし)にやって来たんだが……どうにかしてるのかな……俺……
ひかる(くそっ……雨の中抜刀するんじゃなかった……この刀はもう使えん……)
産廃行きとなった刀を無造作にゴミ箱へ……
ひかる「何なんだ!?あの女……」
*「……烏丸からすま……」
ひかる「は!?」
*「……烏丸からすま……としか知らない……それ以上は知らない。何も……」
ひかる「からすま……?あの女の名前!?」
*「……そう」
ひかる「……烏丸からすま……ね、覚えておこう……で、お前は?」
*「……安童切子あんどう・きりこ……」
ひかる「で、安童あんどう……お前は俺の家族を殺したヤツを知っているのか?」
安童切子あんどう・きりこ「……知らない……」
ひかる「……」
切子きりこ「でも、私もあなたと同じ……朱い髪の惨殺者を討つべくもの」
ひかる「何だと!!?」
このとき、運命の歯車が回り始めたのか……いや、あるいは烏丸からすまに出会ったあのときから……全ては動き
だしていたのかもしれない……


続

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