Eighter -Scarlet Nocturne-
50ther 〜姉の仇を弟で討つ C〜



#5
 《ザ・テンペスト》が蒼嵐、荒曲井(あれくせい)ソカタが、ヴァルカナリアクターではない存在に敗北す。
 その衝撃は余りにも大きかった。
イシュー・ネゼリアル、マイル・ネゼリアル「そんな……馬鹿なッ!?」
バイラ・エウリデス、アーヴァ・エウリデス「蒼嵐様が……死んだ!?」
 これには他のEighter・有嗎幇(ユーマハン)メンバーと死合っているイスマイル兄弟、バイラヴァ兄弟も思わず動きを止めて
茫然と立ち竦んだ。
(かみ)総介「フッ、勝負あったな……」
 既に勝負はついたという感じで呟く総介。
イシュー、マイル「何を?」
バイラ、アーヴァ「まだ、俺たちが残っている!」
御御脚(ユウ・ユウジャオ)「ならバ……」
旧透水(ジウ・トウシュイ)「続けヨう!」
新田姜馬(きょうま)「まだ終わりではないというのならば、見せてくれ」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「貴様は、まだ双虎拳を知らない!」
 そして、四つの死合は再開される。
古畑呂司(りょうじ)「あれ?あの女、どこ行ったんだ?」
 すっかり観客の人一人と化していた呂司(りょうじ)は、その時、桜の姿が見当たらないことに気づく。
総介「フッ、どうやらあちらも決着したようだな」
梓與鷹(よたか)「決着?」
 そう、ここまでの戦いは全て、総介の作戦通り。
 ユーサーを遠ざけ、神羅万象を無効化する幽闘術の脅威を退け、ソリスを遠ざけ、空間を自在に操る幽闘術を封
じた。その上で出音(でおん)に姉の仇を討たせる。
 だが、それだけではない!
 バイラの無限の正義製(インフィニット・ジャスティス・ワークス)……無数の剣を生み出す幽闘術には御脚(ユウジャオ)甲蟲と炎雷(ヒート・メタル)……肉体の鋼鉄化と炎を操る幽闘術
で対抗
 アーヴァの兵装完全掌握術(クロス・ナイブズ)……武器の性能を十全に発揮する幽闘術には透水(トウシュイ)覇道色の闘気(アドバンス・オブ・オーラ)……気を練り、気を
操る幽闘術で対抗
 イスマイル兄弟は……彼らが使う幽闘術が本質的にはパワーアップする幽闘術なので、姜馬(きょうま)梶太郎(かぢだろう)をもってし
てこれに対抗
 これらすべてが総介の采配である。全ては《ザ・テンペスト》を叩き潰すために!
※イスマイル兄弟の相手だけ適当だな……あとアーヴァの幽闘術に透水(トウシュイ)の幽闘術で対抗できるのもイマイチ分から
 ない……
 ちなみに、桜は今、セイに報酬を届けに出向いているからここにはいないのだ。

#6
 そして、再び死合いはソリスの方へ移る。
謂之府(いわのふ)ソリス「ッ!?」
 何度か攻防を繰り返した後、突如ソリスはそれまでに感じたことのない様な悪寒を感じた。。
ソリス(な、なんだ!?今のは……何か、途轍もなく嫌な予感がする……)
包英清堅(つつみひで・きよかた)「死合いの最中に動きを止めるとは、余裕だな……」
 清堅(きよかた)としても、ここでソリスを倒すわけにもいかず、ひとまず声をかける。
ソリス「……」
 このままここで清堅(きよかた)と死合っていては取り返しのつかないことになる。
 そんな予感しかしないため、ソリスはこの死合を中断させる方法が何かないか考える。そして、ソリスは一つの
策を思いつく。
ソリス「……俺を倒すのはお前ではない……お前はさっきそう言ったな?」
清堅(きよかた)「あぁ、確かに。それが、何か?」
ソリス「ならば、俺たちが死合う理由は、ない」
清堅(きよかた)「まぁ、確かにな……」
ソリス「で、あれば……」
 死合の中断の申し込み……しかし、そんな提案が受け入れられることはないだろうとソリスは内心思っていた。
 それ故に、ソリスは自分に跳ね返ってくることを覚悟の上で幽闘術を使うと行動を起こそうとした……
清堅(きよかた)「なるほど……その提案、受けよう」
ソリス「え!?」
 しかし、呆気ないほどに提案は受け入れられた。あまりにも拍子抜けしてしまい、思わず間抜けな声を出すソリ
ス。
清堅(きよかた)にとってみれば、ソリスを倒すことが目的ではないので、死合の中断は問題ない。が、それ以上に、清堅(きよかた)は総
介からソリスが死合を中断する申し入れがあれば、承諾するようにと依頼されていた。
 おそらく、ソリスは何らかの方法でユーサーの身に何かあったことを察知するだろうから……と
清堅(きよかた)(しかし、神がかっているな……まさかここまで読んでいたというのか?)
 あの漢、ただ腕が立つとかそんな理由でSRAPという役職についているわけではない。と、清堅(きよかた)は総介の底知れな
さに恐怖を覚えた。
清堅(きよかた)「こちらとしてもそろそろ戻りたい。あちらでもいろいろ決着がついている頃だと思うんでね」
ソリス「……」
 かくて二人は(まだ腕が鎖でつながったまま)嵐ヶ丘へと戻るのであった。


続

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