Eighter -Scarlet Nocturne-
45ther 〜宿命逆巻く影埼玉(ネオサイタマ) A〜



#0
 埼玉県、秩父盆地某所……そこには咲魔(サイタマ)の隠れ里があり、そこで今、ヴァルカナ争奪戦が始まった。
 今回もヴァルカナ出現の反応は数舜で消えてしまったのだが、U(セカンド)シレントワイザードの星露(シンルー)・ユピテルメアと大
神の降真靈(こうしんりょう)弥如(びぎん)はその反応を見逃さなかった。
 かくて、血を血で洗う因縁の兄妹喧嘩が始まったのだ。

#1
 ここで、話はその因縁の兄妹対決へ移ります。
星露(シンルー)・ユピテルメア「死ねぇ!クソ兄貴!」
弥如(びぎん)「無駄ですよ、愚妹!」
 ラ○デ(もどき)をブンブン振り回し、脳天目掛けて攻撃を繰り出す星露(シンルー)。しかし、その斬撃は全て轟曦真靈杖(ごうきしんれいじょう)により阻
まれる。
 咲魔(サイタマ)流忍術を使っている限り、星露(シンルー)に勝ち目などないのだ。
弥如(びぎん)(つくづく諦めの悪い……)
 愚妹の攻撃を片手間で受け止めつつ、どうしてこんなことになったのかと弥如(びぎん)は考え込んでいた。

 虎骨(フーグイ)・ユピテルメアという漢は、やがて咲魔(サイタマ)を背負って立つ存在だとその将来を有望視される忍びだった。
 そして、もう一人、虎骨(フーグイ)に勝るとも劣らない……いや、実際には虎骨(フーグイ)の方が上なのだが、ともかく、話が進まな
いので実力伯仲という体で話を進めるが、そういう相手がいた。それが彼の双子の妹、星露(シンルー)である。
 しかし、他の咲魔(サイタマ)より抜きんでた実力を持つ二人に、やがて悲劇が訪れる。
 そう、咲授(しょうじゅ)の儀だ……兄妹で殺し合い、勝った方のみが咲魔(サイタマ)の棟梁として認められる。
 兄に刃を向けることなんてできないと涙ぐむ妹の顔を、虎骨(フーグイ)は今でも忘れられない……そんなこんなで、咲魔(サイタマ)の
風習やら、掟やら、全てが馬鹿らしくなり、虎骨(フーグイ)咲魔(サイタマ)を出奔した……
 ちなみに、その後虎骨(フーグイ)は大神の降真靈(こうしんりょう)に拾われたことで出奔から出家にクラスチェンジしたのだが、それはまた
別の話である
※いや、クラスチェンジってなんだよ!
星露(シンルー)(クソ兄貴ぃ!クソ兄貴!クソ兄貴ぃ!殺す!絶対に殺す!今日という今日こそは殺す!)
 星露(シンルー)にとって虎骨(フーグイ)は憧れの対象だった。咲魔(サイタマ)の隠れ里で、彼女より強いのは(棟梁とかは別とすると)虎骨(フーグイ)だけ
だった。
 いつか、彼と並び立ち、共に咲魔(サイタマ)を導いていくことが星露(シンルー)の小さな夢だった。
 しかし、現実は非情であり、咲授(しょうじゅ)の儀がその夢を打ち砕いたのだ……兄に刃を向ける位ならば、咲魔(サイタマ)棟梁の座な
ど辞退しようと彼女は考えた。

#2
 そして、直後、虎骨(フーグイ)が出奔したという話を聞いて星露(シンルー)は目の前が真っ暗になった。
 更に裏切り者の妹という烙印を押され、粛清の対象になってしまったのだが、茫然自失としつつも、迫る刺客全
てを返り討ちにする程には星露(シンルー)は強かった。
 なお、そこで正気に戻った星露(シンルー)は、死屍累々を見て、兄が虐殺して逃げ出したんだと思い込み、真実を探るべく
咲魔(サイタマ)の隠れ里から出る決意を固めたという。
※つまり、星露(シンルー)は自分が裏切り者の妹だとか、腫物扱いされているなどということを知らない……
 その後、なんやかんやで星露(シンルー)赤眉(チーメイ)の一員になって、暗殺稼業に勤しむようになり、なんやかんやでU(セカンド)シレント
ワイザードのGB夫人(ミセスグレートバシャール)を暗殺しようとしてヴィルヘル・奈美に完膚なきまでに叩きのめされ、彼女を師匠と仰ぐよう
になったのだが、それはまた別の話である
※いや、その『なんやかんや』って部分を知りたいのだが……

星露(シンルー)「どうやら咲魔(サイタマ)流忍術ではクソ兄貴を殺せないようね……」
 暫くの攻防の後、星露(シンルー)はぽつりとそう漏らす。
弥如(びぎん)「愚妹よ、漸く悟ったか……ならば、無駄な抵抗は……」
星露(シンルー)「では、ここからは赤眉(チーメイ)の暗殺者としてクソ兄貴を殺す!」
弥如(びぎん)「何!?」
 星露(シンルー)の雰囲気が変わったことを察知し、思わず一歩後退る弥如(びぎん)
星露(シンルー)投月華(とうげつか)!」
 ブウンッ
 ラ○デ(もどき)を思いっきり弥如(びぎん)目掛けてぶん投げる星露(シンルー)。
 ってか、よく考えたらラ○デ(もどき)って巨大な手裏剣の形状なんだから、この使い方が本来の使い方なのでは!?
弥如(びぎん)「そんな巨大なな武器で暗殺などと……愚妹よ、暗殺の意味を今一度よく調べるの……はっ!?」
 そこまで喋って、思わず屈む弥如(びぎん)。そして、その直後、立っていれば弥如(びぎん)の首の位置だった場所をラ○デ(もどき)が通
り過ぎる。
 この投月華(とうげつか)と言う技はブーメランのように戻ってくることが真骨頂なのだ。
星露(シンルー)「チッ……」
 帰ってきたラ○デ(もどき)を手に取りつつ、舌打ちをする星露(シンルー)
弥如(びぎん)「なるほど……いいでしょう、愚妹よ……では私も仏門獄曼掌(ぶつもんごくまんしょう)で相手をしてあげましょう」
 弥如(びぎん)もまた、これまで手を抜いて死合ってきた。故にここから先が真の血で血を洗う兄妹喧嘩の始まりである。


続

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