Eighter -Scarlet Nocturne-
33rder 〜孤島に起つ影社札(ヴァルカナ) B〜



#3
 拳の連打を叩き込んで勝ち誇ったかのような梶太郎(かぢだろう)に七色の光の玉が襲い掛かる。
新田姜馬(きょうま)(フム、光の玉による攻撃……か……)
 攻防スキのない幽闘術……しかし、黒い光は何のために存在しているのか?
 攻撃には使われてない上に、先ほどの防壁に使われたようにも見えない。
姜馬(きょうま)(ならば、あの黒い光は何の為に?)
 情報厨の姜馬(きょうま)にとってこれ以上気になることはない。
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「この野郎!双虎拳をなめるなよ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)ッ!」
星露(シンルー)・ユピテルメア「無理、無駄、無謀!」
 ガガガガガガガガガガガッ
姜馬(きょうま)「なるほど、拳は二個、それに対して光は七個……防げない道理はないな……」
 七色の光ば防壁となり梶太郎(かぢだろう)の拳を防ぐ。
 無論、その中には梶太郎(かぢだろう)の拳で砕かれる防壁もある。しかし、防壁を多重に展開することで拳を防ぎ、防いでい
る間に砕かれた光を再生させる。
 こんなことを繰り返されれば、梶太郎(かぢだろう)の拳が届くはずがなかった。
梶太郎(かぢだろう)「このクソ(アマ)ァッ」
 怒りに任せて拳打を繰り出すも、光の防壁は鉄壁で全て徒労に終わってしまう。
 このままでは梶太郎(かぢだろう)は疲弊して敗北する……前に虎伏絶掌(こふくぜっしょう)の効果が切れてしまうのは明白。
御御脚(ユウ・ユウジャオ)「助けニ入らなくていいノか?」
 今更って感じもするが、思わずそう漏らす御脚(ユウジャオ)。しかし、それを総介が止める。
(かみ)総介「寄ってたかって一人の女を殴るのはいろいろとマズいと思わないか?」
古畑呂司(りょうじ)「ええ!?そういう場合!?」
御脚(ユウジャオ)「それハなんダ……コンプライアンス的ニとかいう奴カ?」
総介「フッ、まぁそういうことだな」
梓與鷹(よたか)(あ、これはなんか別の理由があるな……)
 長年の付き合いから、與鷹(よたか)は直感的にそう思った。
 だが、どんな理由があり、どんな策をもってしてこの場を切り抜けるのかまでは分からなかった。
與鷹(よたか)「……」
 そろそろ俺が代わりに……声をかけようとした與鷹(よたか)だったが、双狼拳と只ならぬ因縁のある梶太郎(かぢだろう)が素直に交代
してくれるとは思えないのも事実。
 無理やり交代するか、それとも総介の策を待った方がいいのか……
※いや、與鷹(よたか)の命令に逆らえないってのはどうなったのかって?……そりゃ、最終的には與鷹(よたか)の命令に従うだろう
 けど、そこまでに無駄な時間を費やすのが面倒ということだよ。

#4
梶太郎(かぢだろう)「チッ……」
 梶太郎(かぢだろう)も内心焦ってきた。このままでは虎伏絶掌(こふくぜっしょう)の効果が切れてしまうのは自明の理。
 しかし、頭を下げて與鷹(よたか)に助けてくれと言うのも彼のプライドが許さなかった。
梶太郎(かぢだろう)「だったら、これはどうだ。おらあっ!銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 ドゴアアアアアッ
 虎の咆哮の如き衝撃波、それを防ぐために星露(シンルー)は光の防壁を一直線に七つ並べて対処。
 しかし、それは無駄な足掻きだった。梶太郎(かぢだろう)の一撃は七重防壁をすべて砕く。ここにきて星露(シンルー)は初めて驚きの表
情を見せる。
梶太郎(かぢだろう)「ッしゃあッ!勝った!第三部完!」
一同「だから、それはフラグ!」
※あと今は第六部だっつの!
 勝ち誇ったかのような顔で最後の一撃を繰り出す梶太郎(かぢだろう)。
 ガキィンッ
梶太郎(かぢだろう)「な、何ぃ!?」
 やはり、フラグを口にしたのがいけなかったのか、復活した光の防壁が梶太郎(かぢだろう)の拳を阻む。
 ドコドコドコドコッ
梶太郎(かぢだろう)「ゲフォアッ!?」
 そして、光の玉から手痛い反撃を食らう。
姜馬(きょうま)「さっきの攻撃を繰り出すと同時にもう一撃繰り出さないと、奴には届かないようだな……」
 しかし、おそらくそれは不可能に近いのだろうとも姜馬(きょうま)は考えた。
與鷹(よたか)「……」
 グっと拳に力を籠める與鷹(よたか)與鷹(よたか)の持つある奥義ならば、七重防壁を突破して更に拳を届かせることができる。
星露(シンルー)「少しはやるじゃない。でも残念だったわね!あはははははは!」
梶太郎(かぢだろう)「グッ……双虎拳を虚仮(コケ)にしやがってぇ!」
 梶太郎(かぢだろう)はまだやる気だが、これ以上梶太郎(かぢだろう)に任せても勝機を見いだせない。ならば、やはりここは力尽くでも交
代するしかない。
 と、與鷹(よたか)が決意した矢先、総介が與鷹(よたか)の肩を掴んでそれを止める。
與鷹(よたか)「総……邪魔しないでくれ」
総介「いや、俺達もそろそろ撤退だ」
呂司(りょうじ)「いやいや、絶対に逃がしてくれる雰囲気じゃないんですけど……」
 ドゴンッ
星露(シンルー)「アイエエエエ?!」
 と、その時、星露(シンルー)の背後に謎の影が出現。そいつは後頭部目掛けて思いっきりモップを叩き込む。
ヴィルヘル・奈美「全く、何をやっているのかと思えば……」
一同「んなッ!?」
 現れたのは狐面を付けたメイド。それはヴィルヘル・奈美に他ならない。
 ……しかし、いつ、星露(シンルー)の背後に出現したのか、誰にも全く分からなかった。

#5
奈美「全く、ヴァルカナを手に入れたのならば、とっとと帰って報告しなさい」
梶太郎(かぢだろう)「おい、ちょっと待てよ」
総介「撤退だと言ったはずだ」
 なおも食って掛かろうとする梶太郎(かぢだろう)を止める総介。
 流石にこれ以上の戦闘は無意味であると理解した梶太郎(かぢだろう)はようやく戦闘態勢を解く。

奈美「それでは皆様。ごきげんよう」
 奈美も奈美でこれ以上戦闘を続ける気がないと分かった時点で。星露(シンルー)の脚を掴んでズルズルと引きずりながらそ
の場を後にするのであった。
星露(シンルー)の扱いが酷い……

山咲(やまざき)桜「さて、では、私たちも帰りましょう。最早この場所に用はないですから」
 気を取り直して、桜が告げる。
一同「お、おう……そう……だな……」
 かくて、Eighter・有嗎幇(ユーマハン)連合軍も、Sアイランドを後にする。
姜馬(きょうま)「ヴィルヘル・奈美……底が知れない女だ……」


END

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