Eighter -Scarlet Nocturne-
32nder 〜孤島に眠る影社札(ヴァルカナ) D〜



#7
弥如(びぎん)「愚妹よ、お前はそこで無様に生き恥を晒せ!」
星露(シンルー)・ユピテルメア「アイエエエエ!?」
 シャドウに殺されない程度に痛めつけられ、派手に吹き飛ばされる星露(シンルー)。
 洞窟の壁に激突した彼女は、そのまま海へと墜落するのであった。
※殺さないって言ってたけど、これ、下手すれば死んでない?
 ともかく、弥如(びぎん)がなぜ咲魔(サイタマ)を去ったのか、その理由が今、判明した。
 そう、軽々しく生命を武器に任務を遂行するという忍びに嫌気がさしたのだ。
弥如(びぎん)「……さて、愚妹も始末したことですし、そろそろ大神の降真靈(こうしんりょう)としての役目を果たすとしますか……」
※始末って言ったぞ、コイツ、さっき殺さないって言っていたのに……
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「あぁ?!まさかてめぇ一人で俺達全員に喧嘩売ろうってのか!?」
 例によって例の如く、虎伏絶掌(こふくぜっしょう)が発動するまで與鷹(よたか)に丸投げしている梶太郎(かぢだろう)が吠える。
新田姜馬(きょうま)(だが、シャドウをどうやって倒せばいいのか……という問題はあるな……)
(かみ)総介(フッ……幽闘術には幽闘術ってのがセオリーだろう)
古畑呂司(りょうじ)(そうか!あくまで幽闘術を通常の手段で何とかしようってのが間違っているのか……)
弥如(びぎん)「……フフフ……では、俺の幽闘術、影に生き影に逝く哉(シャドウ・ハウス)の真価を貴様らに見せてやろう」
 ぶあああっ
梓與鷹(よたか)「な、なんだ!?」
 シャドウが軍隊を成す……
総介「チッ、影を操るってのはそういうことか……」
御御脚(ユウ・ユウジャオ)「なルほど……一人旅団トいうわけカ……」
 いや、なんかそれ意味が違うんじゃないですか?
クラウド・ノシュケー・マルーメ「いいだろう。ノース光輪結社に盾突く愚か者は全て倒す!」
ジョスィフ・クロード「月の御手(ムーン・レィス)をあまり舐めるなよ、忍者坊主が!」
 ノース光輪結社 VS Eighter、有嗎幇(ユーマハン)は中断。ここから先は大神の降真靈(こうしんりょう)を相手取った乱戦の開幕だ。
 当然のことだが、Eighter、有嗎幇(ユーマハン)連合軍は大神の降真靈(こうしんりょう)だけを相手取ればいいというわけではない。ノース光
輪結社のことも警戒したうえで戦わなければいけない。
 しかし、ノース光輪結社と大神の降真靈(こうしんりょう)の方は違う。とりあえず片っ端から邪魔な奴を倒せばいいだけなのだか
ら楽なものだ。

#8
 一方その頃、クソ兄貴に敗北し、無様な生き恥を晒して海に落ちた愚妹は、邪悪な笑みを浮かべていた。
 そう、実はこれ、全てはヴィルヘル・奈美から授かった作戦の内だったのだ。
 軽々しく生命を投げ出して勝利を掴もうとすれば、おそらくクソ兄貴は殺しはしない……ヴィルヘル・奈美はそ
う読んでおり、そして、その読みは正しかった。
 また、海に落ちたのも計算の内。Sアイランドに日向(ひゅうが)海軍研究所という軍事施設があることは分かっており、そ
こにヴァルカナが隠されているとすれば、地上ではなく、地下であると……
 島の地下には天然の洞窟があるのだとすれば、ヴァルカナは海中に没している可能性の方が高いのではないか…
…そのことから、自然に海に落ちて秘密裏にヴァルカナを探す必要があったのだ。

クラウド「超級武振覇影斬(ちょうきゅうぶしんはえいざん)!」
ジョスィフ「月齢掌(げつれいしょう)繊月(せんげつ)有明(ありあけ)!」
御脚(ユウジャオ)白乾児魔炎(パイカリック・バーナー)!」
 クラウドがまるで頭だけを固定して体を回転して斬撃を繰り出しているかのような人体の構造を無視した回転斬
りで、ジョスィフが左右の拳で、御脚(ユウジャオ)がゲッツのような恰好から人差し指から炎を放って弥如(びぎん)の操るシャドウの軍
団を蹴散らす。
 しかし、蹴散らしても蹴散らしても一行にシャドウは減らない。
 ここが暗い洞窟の中だからなのか、シャドウの群れは留まることを知らない。
與鷹(よたか)「総……このままじゃジリ貧だ……何とか……」
総介「うぐっ!?」
與鷹(よたか)「総?!」
 総介に指示を仰ごうと思った與鷹(よたか)だが、突如総介が頭を抱えてその場に蹲る。
 そんな隙を見て今がEighterを叩くチャンスと思うノース光輪結社だが、與鷹(よたか)識狼天見(しきろうてんげん)を発動させ辺りを警戒
し、攻撃にすぐさま対応できるようにしているため、迂闊に手が出せない。
山咲(やまざき)桜「警部?」
総介「大丈夫だ。心配ない」
 不安な表情をする桜をぶっきらぼうに押しのけて総介が立ち上がる
総介「なるほど、そういうことか……ならば、もはや、この地にいる意味は……ない」
與鷹(よたか)「おい、それは一体どういう……」
 一人で勝手に納得してないで説明してくれ!と総介を揺さぶる與鷹(よたか)。
 そして、與鷹(よたか)が総介に気を取られているこの一瞬こそノース光輪結社にとってチャンス。

#9
 カカッ
一同「なんだ?!」
 と、その時、突如海が光り輝く。
 いや、正確には海より八つの光が飛び出す。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……そして黒……
※虹色にしては一色多いな……
クラウド「なんだ、これは!?」
 ザクザクザクザクッ
弥如(びぎん)「な、何ぃ!?」
 その光は弥如(びぎん)のシャドウを貫き、そして、その(ことごと)くを消し去っていく。
ジョスィフ「海の中に……何かいる……?!」
姜馬(きょうま)(何かいる!?……違うな……少し前に何があったのか、それを思い出せ……)
 皆が慌てる中、姜馬(きょうま)は静かに分析を進める。
 先ほど弥如(びぎん)の手により星露(シンルー)が海に落ち、そして、今、その海から光が飛び出してきた。更に総介の分かったよう
な態度やセリフ……
 そこから、導き出される結論は……
 そう、この地でのヴァルカナ争奪は既に終わったと、そういうことだ。
 ならば、後は撤退するのみ。しかし、果たしてそう簡単に行くのだろうか……


END

前の話へ  戻る  次の話へ