Eighter -Scarlet Nocturne-
11ther 〜僧兵は影雄を求む A〜



#0
 大神の降真靈(こうしんりょう)、それは蘆屋道満を崇拝する陰陽師が作り上げた秘密結社で異世界の神を召喚することが主な目的
である。
 そのために奴らが求めたものはオーパーツであった。
 しかし、彼らは行き詰っていた……

#1
 兵庫県某所、嘉曦渋寺(かぎじゅうじ)
 ここは大神の降真靈(こうしんりょう)の総本山である。そして、所謂七堂伽藍の一つ、講堂にて会合が開かれていた。
韻麗(いんれ)「……以上がサイレントウィザードにて知りえた情報となります」
 サイレントウィザードで体験したことを語る韻麗(いんれ)。
 これまで大神の降真靈(こうしんりょう)場違いな白き遺物(ポジティヴ・オーパーツ)を使って異世界の神召喚ガチャを行ってきた。
※だから、異世界の神召喚ガチャって言うなよ……
 しかし、サイレントウィザードに出向して場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)を使う方法があることを知ったのだ。
 ただ、問題は、異世界の神召喚ガチャに耐えられるアーティファクトが見つからないという点だ。
*「だ、だったら、て、提案があるんだけど……いいかな?」
一同「な、なんだ貴様は!?」
 その時、突如謎の声が聞こえる。
 一同が振り向くと、そこには前髪で目元を隠した気弱そうな少年が立っていた。
慈円(じえん)「……あれはあなたの親族か何かですか?惹閃(じゃくせん)?」
惹閃(じゃくせん)「ち、ち、ちっ、違うっ」
 ビクっと体を震わせた後、ブンブンと盛大に首を左右に振りながら弱気に答える惹閃(じゃくせん)。
 突如現れた謎の少年と同じく、気弱そうなこの僧兵は何を隠そうサイレントウィザードのサーフィスだ。
 サイレントウィザード壊滅後、韻麗(いんれ)にスカウトされて大神の降真靈(こうしんりょう)に入ることになったのだ。
※なお、彼の配下のバーニーヤも同じく大神の降真靈(こうしんりょう)へ入り、今は灰漸(はいぜん)を名乗っています。
慈円(じえん)「そうですか……いや、それよりも、どうやってここへ!?」
 ここは大神の降真靈(こうしんりょう)の総本山。慈円(じえん)韻麗(いんれ)と言った高僧以外にもDAという戦闘部隊が大勢いるのだ。
 そこを乗り越えてこの場に辿り着くことは生半なことではない。
*「ごめんなさい、ごめんなさい。すいません、すいません」
 へこへこ謝り出す少年。
 襲い掛かってきたから思わず倒してきました。などという彼の発言に、一行は騒然となった。
韻麗(いんれ)「なん……だと!?」
 そして、DAの連中が死屍累々となっているのが見え、一行は戦慄することとなった。
慈円(じえん)(こいつ、得体が知れなさすぎる……)

#2
*「てめぇ、こんなところまで乗り込んできて、死ぬ覚悟はできているんだろうな!」
 と、ここで、突如風もないのに靡くマフラーが特徴の高僧が叫ぶ。
韻麗(いんれ)「待て、弥如(びぎん)!」
 しかし、韻麗(いんれ)の制止する声に耳を貸さず、いいや限界だ、もう殺るね!と言わんばかりの弥如(びぎん)は一足飛びにかか
ると、そのまま殴りかかる。
*「すいません、すいません」
 ズドゴアッ
弥如(びぎん)「アイエエエェエエエ!?」
 ヘコヘコ頭を下げて謝罪すると同時に無造作に拳を繰り出す少年。
 弥如(びぎん)の拳は少年に届くことはなく、カウンターを食らい、派手に吹き飛ばされ、ネオサ〇タマでよく耳にするよ
うな断末魔と同時に壁へ激突すると、そのまま気絶する。
韻麗(いんれ)「だから待てと言った……」
 頭を抱える韻麗(いんれ)。ここまで乗り込んでくる奴がただの気弱な少年であるはずがない。
 それに、サイレントウィザードのサーフィスだって似たような存在だったからこその経験談なのだが、遅かった
と言わざるを得ない。
*「いいでしょう。聞くだけ聞いてみましょう」
一同「た、反永(たんえい)様!?」
 そんな折、この場の一番の上座に座っていた高僧が静かに立ち上がるとそう呟く。
 この反永(たんえい)という僧兵は大神の降真靈(こうしんりょう)のNo.2。この場に居合わせるメンバーの中で最高位の権力を持つ存在だ
慈円(じえん)「しかし……」
反永(たんえい)「忘れたのか?私のモットーは全肯定だということを……」
 これ以上は何を言っても無駄であることは明白。慈円(じえん)は押し黙るほかなかった。
反永(たんえい)っつか、∀だな。
反永(たんえい)「……私は反永(たんえい)。大神の降真靈(こうしんりょう)の高僧が一人……あなたは?」
*「あ、う、うん……えっと、その……ユーサー……ユーサー・コージィ」
 思わず遊佐浩二?!と心の中で突っ込む韻麗(いんれ)であった。
反永(たんえい)「なるほど、では本題に移りましょう。提案とは何です?」
ユーサー・コージィ「あ、はい。ええと、その……つまり……」
 おどおどしながらつたない言葉で語り出すユーサー。そんな彼の語りに思わずイラっとする高僧達であったが、
ここでカっとなって手を出せば弥如(びぎん)の二の舞になることは明白であるため、誰も手を出せずにいた。


続

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