Eighter -Midnight Howling-
41ster 〜燭台切は伊達違う(ダテじゃない!) A〜



#0
 これは伊達家と徳川家にまつわる物語。
 そして、両家を結ぶ絆の物語……なのかもしれない
※どっちだよ!
 ともかく、ひとつだけ言えることは『両家のキズナはダテじゃない!』
※アンタ、それが言いたいだけだろ!

#1
 宮城県、仙台某所、伊達宗家の屋敷
伊達宗美(むねみ)「ったく、あいつはどこに行ってんだよ……」
 伊達の本家……その庭にて、宗美(むねみ)は一人ボやいていた。
 一体何事なのか……と思われる方もいるであろう。そのために説明をすると……
*「伊達家は代々ある時期になると徳川家に対して一本の刀を献上する習わしがあるのです」
 ……説明を奪われたが、つまりはそういうことである。
*「なお、献上すると言っても毎年新しい刀を献上するというわけではなく、一旦徳川家に献上したある刀を毎回
伊達家に戻したのち、当時の伊達家当主がそれを再び献上しなおすという形で行われており……」
 ちなみに、こんな解説を行っている奴は片倉十夜……かの片倉小十郎景綱(かげつな)の子孫であり、宗美(むねみ)の近習である。
 主な任務は宗美(むねみ)の護衛であるが、宗美(むねみ)が護衛を必要としない強さでもあるため、もっぱら茶飲み友達的な間柄に
なっている。
 さて、話を戻そう……
 伊達宗美(むねみ)……彼女は伊達政宗の子孫であり、赫眼(かくがん)同盟に……
※そこまで戻すんじゃねぇよ!
 なお、その献上する(しなおす)刀というのは燭台切光忠と言う。燭台ごと人を斬り伏せたという逸話を持つア
ノ日本刀である。
 ズオオンンッ
宗美(むねみ)「な、何だ!?」
 その時、突如轟音と共に炎が上がる
片倉十夜「あっちは蔵の……ま、まさか!?」
宗美(むねみ)「な、なんだってぇ〜〜!?」
 その蔵に収められているモノこそ燭台切光忠である。宗美(むねみ)はすぐさま蔵の方へ走り出す
十夜「お、お待ちください宗美(むねみ)様……」
 すかさず十夜もあとを追う。

 ……蔵の前にはフードを目深に被った謎の人物が二人……一人は燭台切光忠を手に持っており、この二人が襲撃
者であることは火を見るよりも明らかだ
宗美(むねみ)「お前ら……」
*「……キャンドルスティックスラッシャー」
宗美(むねみ)「何?」
*「……燭台切は頂戴する」
宗美(むねみ)「はいそうですか……って渡すわけないだろっ!」
 一足飛びにかかると同時に愛刀の村正・梵天丸で抜き打ちを放つ
 ガキンッ
宗美(むねみ)「なっ!?」
 だが、その兇刃は阻まれる……
 もう一人のフードを目深に被った謎の人物が燭台切光忠を盗んだ人物と入れ替わるように宗美(むねみ)の前に飛び出し、
彼女の刀を受けたのだ
宗美(むねみ)(こいつ……だがっ)
 膂力は宗美(むねみ)の方が上。力任せに振り切ると……
宗美(むねみ)「は!?」
 そこで宗美(むねみ)は虚を突かれてしまう。
 太刀風でフードがめくれ、露わになったその素顔に……いや、そいつは何故かアイマスクをしていたのだ……
 しかも『ダテじゃない!』なんて書かれており、意味が分からない。

#2
*「退くぞ」
*「……」
 そんな隙を敵が見逃すわけもなく、襲撃者はまんまと燭台切光忠を強奪して去っていったのであった。
十夜「大丈夫でしたか?宗美(むねみ)様……」
 と、そこへ遅れて十夜がかけつける。
宗美(むねみ)「くそっ、あいつら一体何者なんだ……」
 キャンドルスティックスラッシャーなどと名乗っていたようだが……
十夜「キャンドルスティック……スラッシャー?」
宗美(むねみ)「何だ?知っているのか?」
十夜「あ、いえ、全く知りません、……が……」
 が、どうにも巫山戯(ふざけ)たネーミングだ……と十夜は言う。
 それもそうだ。Candle Stickとは英語で燭台、Slasherは英語で斬る……つまり、奴らは『燭台切』を名乗り、
同名の刀を奪っていったということになるのだ。まったく巫山戯(ふざけ)ているとしか思えない……
宗美(むねみ)「……そういえばあいつは行方不明になっているんだよな?」
十夜「え?……あ、はい……そうです……が!?」
 そこでハッとする十夜。その行方不明のアイツが今回の襲撃者だとでもいうのか?……いや、そんな、まさか…
…
 第一何故そんなことをしでかすのか。
十夜「宗美(むねみ)様……?」
宗美(むねみ)「あの太刀筋は同門の剣だった……それに……」
十夜「それに?」
宗美(むねみ)(あの……ファンシーな兎をかたどった巫山戯(ふざけ)た鍔の刀は間違いなく宇佐美長光なんだよなぁ……)
宗美(むねみ)「まぁ、ともかく、まだ徳川家に献上するまで日はある。要はそのときまでに秘密裏に奪還できればいいって
ことよ」
十夜「宗美(むねみ)様……言っときますが、それ、ダメな考えですからね」
宗美(むねみ)「何の、旅は道連れ、余は情け容赦ないって言うだろ」
十夜「言いません!」
 しいて言うならば、情け容赦ないのはあっているのかも……

 さて、ところ変わって愛知県、某所
 ここは徳川本家……宗美(むねみ)が燭台切光忠を献上する先でもある。
 そして、そんな徳川宗家……屋敷の奥にて、当主と先代が相まみえていた。
*「面を上げなさい、りりか」
徳川りりか「はい、母様……」
 この徳川りりか、つい先日先代……つまり、母親の徳川葵子から当主の座を継いだばかりの新米当主である。
徳川葵子「お前に当主最初の仕事を申し付けます」
りりか「は、はい」
葵子「貴方が自分で考え、そして、自分の思う儘に進みなさい……」
 その任務とは……一体!?


続

前の話へ 戻る 次の話へ