Eighter -Verdant Nightmare-
5ther 〜月面(つき)に兎が舞った C〜



#5
レース・アルカーナ「それが(とばり)の星珠、最後の一つ。ムーンラリマーだ」
 それは青い月のように光り輝くブルーペクトライト。ムーンパールが薄紅色をしているのと対照的な色合いが特
徴的だ。
※ちなみに余談だが、ラリマーとはプルーペクトライトのことを指す。いや、ペクトライトのうち、空色ものを特
 にラリマーと言う。と言った方が正しい。與鷹(よたか)「総、何をするつもりッ!?」
 突如総介は蒼王の刃(ブルーロード)を抜き放つとムーンラリマーに突き付ける。
 人質ならぬ物質(ものじち)※いや、それ『ものじち』じゃなく『ぶっしつ』って読むから……
(かみ)総介「さて、では取引といこう」
白拍子かれん「取引……誰と!?」
 そんなもの、決まっている。どこかで隠れてみている褐色の怪しいメイドさん相手だ。
総介「貴様が奪ったアースベリル、ムーンパール、そして、貴様が持っているサンシトリンをこちらに渡してもら
おう……もし断ればこのムーンラリマーを破壊する」
メイド(なっ!?)
 封印を解除するためには四つの宝珠が必要不可欠。
 総介が破壊するのと、褐色の怪しいメイドさんが今から総介から奪い返すのとでは明らかに前者の方が早い。
メイド(だが、仮に渡したとしても結果は同じ……ならば……)
 『旻天(びんてん)』の破壊神の復活は諦めるしかないのか……
かれん「……ってか、何も起こらないんですけど……」
 本当に何者かがどこかから見ているの?ってかれんが首を傾げだす。
 最も、かれんは褐色の怪しいメイドさんどころかレース・アルカーナもどこにいるのか察知できないのですが…
…
 両者一歩も動かずただ、時間だけが流れていく。
総介「フッ……」
 やがて、総介が動く。(とばり)の星珠を安置する台座の一つの前まで歩み寄るとそこにムーンラリマーを配置した上で
蒼王の刃(ブルーロード)を突き付ける。
白拍子かなり(かんな、すぐ動けるように……と、まぁ、忠告しなくとも大丈夫ね)
 無言でこくりと頷くかんな。寧ろ注意すべきは何も知らないかれんの方だ。(まぁ、奠夷瑪(ディーヴァ)がいるので特に心配
はしてないが……)
 またしても何も知らないかれんであった。
※お前はどこの大○洋だ!
レース・アルカーナ(やはり、『旻天(びんてん)』の復活は止められないか……)
 レース・アルカーナも確信めいた予感を察知し封界(ほうかい)(やじり)を準備する。

#6
メイド(このままでは埒が明かないか……)
 そして、あまり時間は残されていない。
メイド「……いいでしょう。ではお望み通りにあなたに差し上げましょう」
かれん「うわっ、どこからか声が!?」
 コトコトコトンッ
 ただし、ただ渡すだけでは面白くない。だから、褐色の怪しいメイドさんは台座に直接(とばり)の星珠を転移させる。
総介「しまっ!?」
 ここにきて初めて動揺を見せる総介。
メイド「もう遅いッ!」
 カカッ
 台座に四つの(とばり)の星珠が配置されるということは、『旻天(びんてん)』の封印が解かれるということを意味する。
*「フッ、フハハッ、フハハハハッ!」
 萬聖院(ばんしょういん)家地下の魔法陣から泱硫堕(オルクス)が這い出てきたときと同じように空間の歪みから指が飛び出てくるとバリバリ
と左右に開かれる。
*「長かった……実に長かった……」
かなり「出てきたわね!『旻天(びんてん)』!」
 真殺影刃(鉄扇モード)を突き付けてかなりが叫ぶ。
 『旻天(びんてん)』の破壊神……それは『蒼天』の破壊神、泱硫堕(オルクス)と同様微朱主(ヴィシュヌ)配下、滅壊四魔貴族の一柱である。
 その名は零道漓(プルウィウス)浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界においては秋を破壊して冬を呼ぶもの。
総介「出てきて早速で悪いが、ここで退場してもらう」
零道漓(プルウィウス)「ハハハハハ!面白い冗談だな……」
 シュカッ
 だが、こちらの戦力を見下している今が最大のチャンス。それを逃すようなレース・アルカーナではなく、すぐ
さま封界(ほうかい)(やじり)を突き刺す
零道漓(プルウィウス)「なっ、これはッ!?」
メイド(またしても封界(ほうかい)(やじり)ッ!)
 封界(ほうかい)(やじり)を作り出すことができるのは浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神が一柱、『焔』の破壊神、炳佩鍍嵩(ヘパイトス)だが、その気配
は一切感じられない。
 そして、炳佩鍍嵩(ヘパイトス)は気配を隠すのが得意な存在ではない。なれば、Eighterの背後に隠れているのはソレではな
い。勿論炳佩鍍嵩(ヘパイトス)の加護を受けた存在でもない。
 ただの人間が封界(ほうかい)(やじり)を持てるわけがない。しかし、何事にも例外はある。それは炳佩鍍嵩(ヘパイトス)を信仰する巫女であ
る。
メイド(読めたぞ、奴らの背後にいるのは炳佩鍍嵩(ヘパイトス)の巫女!)
 これまでのことから褐色の怪しいメイドさんはレース・アルカーナの正体を炳佩鍍嵩(ヘパイトス)の巫女であると断定した。

#7
メイド「だがッ」
 バキンッ
 例え炳佩鍍嵩(ヘパイトス)に使える巫女であっても、所詮は人間。神(の化身)たる褐色の怪しいメイドさんに叶うはずがな
いのだ。『蒼天』の時と同様に、封界(ほうかい)(やじり)は砕かれる。
レース・アルカーナ(チッ、やはり、ダメか……)

メイド(……さて、奴らの背後にいる存在の正体も掴めた。『旻天(びんてん)』の封印を解くこともできた)
 既にここでやるべきことは全て終わった。
 そう考えると、褐色の怪しいメイドさんは踵を返そうとするが、すぐさまその歩みを止める。
メイド「いや、まだひとつだけやることが残っているか……」
 それは、(とばり)の星珠の破壊。奴らが零道漓(プルウィウス)を倒せるとは思えないが、万が一と言う可能性もある。そうなれば再封
印もありえる。
 そして、その万が一を破壊するのが、浚澄羽帝(サラスヴァティー)世界の破壊神である。
※いや、破壊神だからって何でもかんでも破壊するのはどうなのか……
メイド「……チッ、面倒な……」
 しかし、(とばり)の星珠を破壊することはできなかった。
 なぜならば、トバリの亡霊とでもいうべき存在が(とばり)の星珠を守っているからだ。


END

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