Eighter -Scarlet Nocturne-
31ster 〜二人の影法師撤退 A〜



#0
 韓国釜山(プサン)某所……そこに出現したのはいずれかの二つ目のヴァルカナ。
 そして、それを巡りノース光輪結社、大神の降真靈(こうしんりょう)、Eighter・有嗎幇(ユーマハン)同盟軍、それにU(セカンド)シレントワイザードが
交錯する。
 果たして、この地に眠るヴァルカナとは……そして、それを手にするのは誰なのか!?

#1
コージル・S・アーサッキ「もはや、勝敗は見えた……だが、それでもまだ続けるか?」
 ビシっと長巻をバーベラエに突き付けてコージルが宣言する。
バーベラエ「おのれ……」
弥如(びぎん)「私のことは放っておいてくれませんかねぇ……咲魔(サイタマ)虎骨(フーグイ)・ユピテルメアは死んだ……それでいいではあり
ませんか……」
星露(シンルー)・ユピテルメア「巫山戯(ふざけ)るなクソ兄貴!私は咲魔(サイタマ)一族の命運を背負ってここに立っているのだ!貴様を殺して
師匠に首を捧げることが私の生き甲斐!」
 いや、無茶苦茶過ぎる……
弥如(びぎん)「やれやれ……師匠も弟子の教育を間違えたようですね……」
 なお、念のためにここで言っておくが、弥如(びぎん)が言う師匠と星露(シンルー)が言う師匠は別人である。
 弥如(びぎん)の言う師匠とは咲魔(サイタマ)の里でユピテルメア兄妹を鍛え上げた忍術の師匠のことを指し、星露(シンルー)が言う師匠とは彼
女が勝手に師匠と呼び慕っているヴィルヘル・奈美のことを指しているのである。
※無茶苦茶なすれ違い……
弥如(びぎん)「ここから先は本当に、殺し合いですよ?」
星露(シンルー)「クッ、殺せ……」
 いやいや、アンタまだ捕まってないでしょ……
乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)「くそっ、どうする……」
 バーベラエも星露(シンルー)もこれ以上死合うのは無理……天音(あまね)シアに至っては最初からやる気がない……
 唯一葦嵩(あしたか)だけが互角かそれ以上の死合を繰り広げているが、それもいつまで持つか……
 しかし、その時、葦嵩(あしたか)に電撃走る
葦嵩(あしたか)「ハッ!?……フフフ……フハハハッ!」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「な、なんだぁ!?とうとうおかしくなったのか!?」
葦嵩(あしたか)「俺たちの目的は貴様らに勝つことではない……いや、勝てばそれに越したことではないがな……」
出音(でおん)・グロウシュベル「何を言っているんだ?こいつ!?」
新田姜馬(きょうま)「……はっ、そうか、奴らの目的は邪魔をすること……つまり、必ずしも勝つ必要はない」

#2
梓與鷹(よたか)「はっ、そうか……」
 姜馬(きょうま)の言葉を受け、與鷹(よたか)も悟る。
 確かにノース光輪結社も大神の降真靈(こうしんりょう)も負けてはいない。だが、少なからず消耗はしている。
 それはEighter・有嗎幇(ユーマハン)同盟軍も同じではあるが……しかし、この状態でヴァルカナ争奪のためにもう一閃交え
るということは、ノース光輪結社と大神の降真靈(こうしんりょう)にとっては少し厳しい。
 一方、Eighter・有嗎幇(ユーマハン)同盟軍は少なからず戦力を温存しているためもう一戦交えるのも(やぶさ)かではない。
コージル「邪魔をする……か……つくづく目障りな存在ですね……」
バーベラエ「ふふん、誉め言葉として受け取っておくわ」
 ちょっとだけ上機嫌のバーベラエであった。
弥如(びぎん)「やれやれ、時間をかけ過ぎましたか……やはり、愚妹が相手では心のどこかで手加減をしてしまったのかも
しれませんねぇ……」
 両手を広げてやれやれって言った感じのジェスチャーをしだす弥如(びぎん)。その仕草は妙にムカつく。
星露(シンルー)「何言ってんだクソ兄貴!」

梶太郎(かぢだろう)「へっへっへ、ここから先は混戦かぁ……いいぜぇ、そういうの。双虎拳の伝承者たるもの、たまには雑魚
を蹴散らしておかないと手足が震え、気が狂っちゃうかもしれないからなぁ」
出音(でおん)「いや、それもはや禁断症状のレベルじゃねぇか!」
 双虎拳伝承者、なんて恐ろしい子ッ!
コージル(ヴァルカナが目の前にあるかもしれないというのに、撤退するしかないというのか……)
弥如(びぎん)(さて、どうしたものでしょうか……ヴァルカナは唯一無二の存在ではないと分かった今、ここにあるヴァル
カナに固執する理由もない……というものですが……)
姜馬(きょうま)(奴らはどう動く?……場合によっては混戦となるが……)
 三者三葉、シンキングタイムにつき、動けない。
 そして、それぞれがどう動くかを決定し、発言しようとした次の瞬間、突如、何かが舞い降りる。
 ズドオンッ
一同「な、なな、なんだ!」
※舞い降りるというか、墜落じゃねぇか……
與鷹(よたか)「あいつは……ジョスィフ!?」
 突如現れたその漢はノース光輪結社のジョスィフ……
與鷹(よたか)(なんだ、右腕が……ない!?)
 どうして右腕がないのか……それをノース光輪結社以外は知らない。
 それはさておいて、何故、彼はここへやってきたのか……


続

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