Eighter -Scarlet Nocturne-
25ther 〜この世全ての姉様(アンリ・シス) B〜



#3
セイ・ニングライト「生命は投げ出すものではない」
出音(でおん)・グロウシュベル「ハアアッ」
 ズドンンッ
セイ「なっ、にっ!?」
 しかし、その時、セイの予想だにしない出来事が起こった。
 気力、体力が限界を超え、もはや立っているだけでもつらいはずの出音(でおん)が繰り出した斬撃はセイの思わくを凌駕
した。それは、セイにも匹敵するほどの威力の斬撃。
 マトモに食らえばタダでは済まないと直感で悟ったセイは思わず流揣轉(るしてん)を繰り出す
 ギギンッ
セイ「馬鹿なッ!?」
 出音(でおん)の斬撃を回避して、カウンターを叩き込む。しかし、出音(でおん)は更にカウンターを仕掛けてくる。
出音(でおん)「行ける!俺はまだ、行ける!」
セイ「貴様ッ……何をした!?」
 執念ともいえる気迫に気圧され、セイが後退っていく
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おいおい、どうなってんだ、こりゃあ!?」
梓與鷹(よたか)「俺が知るかよ……」
 誰かこの状況を説明できる奴がいたら説明してほしい。
 與鷹(よたか)がそんなことを思っていると、突如背後から声が聞こえる。
アドラメレク「これはまた、随分と面白いことになっているみたいだねぇ……」
與鷹(よたか)「うおおっ!?びっくりしたぁ……」
 それは、場違いな影の遺物(シルエット・オーパーツ)、《弑逆(リベリウス)》のアドラ。音もなく、気配もなく、静かに舞い降りる。
梶太郎(かぢだろう)「おい、こいつは……」
與鷹(よたか)「一体何が起こっているのか、お前は分かるというのか?」
 梶太郎(かぢだろう)の突っ込みは無視してアドラに問いかける。
アドラメレク「この土壇場で発現したんだよ」
與鷹(よたか)「何が?」
アドラメレク「幽闘術だよ?」
梶太郎(かぢだろう)「おいおい、幽闘術ってのはヴァルカナリアクターしか使えないんだろ?」
與鷹(よたか)「はっ、まさか、あいつ、《運命の輪(ホイル・オブ・フォーチュン)》を使ってしまったのか!?」
アドラメレク「その認識はちょっと違うな……幽闘術の本質とはこの世ならざる力を行使して戦う術……」
與鷹(よたか)「そうか……ヴァルカナリアクターだからこそ使えるというわけではない……」
 確かに、ヴァルカナとはこの世界に存在しないはずのアーティファクト。だから、ヴァルカナリアクターはみな
等しく幽闘術を使えるが、ヴァルカナリアクターだけが幽闘術を使えるというわけではないのだ。
アドラメレク「この世全ての姉様(アンリ・シス)……と、言ったところかな……」
※そういえば、幽闘術って誰が命名してるんでしょうかね?私、気になります。

#4
與鷹(よたか)出音(でおん)の姉は既にこの世界に存在しない存在……故に幽闘術たりえるということなのだろうか……)
アドラメレク「彼が使っているこの世全ての姉様とは、姉との思い出を消費して攻撃を繰り出すという代物」
 なに、そのヴァ〇ヴレイヴ?!
※あるいはシン〇ォギアに出てきたオート〇コアラー
與鷹(よたか)「って、ちょっと待てよ……思い出を消費して攻撃を繰り出すってことは、消費可能な思い出がなくなったら
奴は死ぬんじゃ……?」
 出音(でおん)の幽闘術の致命的欠陥に気づく與鷹(よたか)。
アドラメレク「そこが彼のユニークなところでね……どうやら姉との思い出は実際にあった出来事じゃなくてもい
いみたいだね……」
一同「はい!?」
 つまり、姉との思い出は妄想でも可能。それは消費した傍から全く同じ思い出を妄想することで代用することが
可能という無茶苦茶なエクストラスキルであった。
 すなわち、姉力インフィニティ!……パ(ねぇ)梶太郎(かぢだろう)「無敵じゃねぇか……」
アドラメレク「そうでもないさ……流石に『俺には姉がいた』なんて思い出を消費してしまえばそれが彼の終局だ
よ……」
 最も、そこまでする必要がある相手が敵ということは、そもそも勝てないということに等しいけどね……と続け
るアドラ。
 まぁ、いずれにせよ、今は出音(でおん)とセイの死合を見届けることしかできない。
梶太郎(かぢだろう)「……でも、よく考えてみると、セイの野郎の幽闘術はあらゆる幽闘術をコピーできるんじゃ……」
與鷹(よたか)「……」
 そんなとき、ぽつりと呟く梶太郎(かぢだろう)の言葉に與鷹(よたか)は言葉を失う。
 確かに、セイの幽闘術、野生の道化(ワイルド・ジョーカー)は今まで見聞きした幽闘術を真似て繰り出すことができるというチート級の
エクストラスキル。
出音(でおん)「おおお!」
セイ「はああ!」
 ガギンッギギンッ
 なおも激しいつばぜり合いは続く。
 そんな中、セイは出音(でおん)の幽闘術をコピーすることができない。野生の道化(ワイルド・ジョーカー)にコピーできない幽闘術はいくつかあ
るが、出音(でおん)のこの世全ての姉様もまたその一つだからだ。
※つまり、セイは姉派ではない。(いや、その情報どうでもいいわ!)

#5
出音(でおん)「これで終わりだッ!陰精瞬天破(いんせいしゅんてんは)!」
セイ「流揣轉(るしてん)」
 ガッギイインンッ
 一足飛びにかかると同時にセイ目掛けて斬り下ろしを繰り出す出音(でおん)だったが、セイはそれを軽く回避。
 しかし、出音(でおん)の斬撃はそれで終わりではない。すぐさま返す刀で斬り上げ。もともとV字に斬るのが弐の秘剣な
のだ。
 そして、出音(でおん)のターンが終われば、今度はセイのターン。隙だらけの腹目掛けて痛烈なカウンターを叩き込む。
セイ「何!?」
 本来ならば、この一撃で決着がつくはずだった……しかし、今の出音(でおん)は物理法則を超えた域にある。
 セイのカウンターに合わせてガルシテラヴを叩き込む。
セイ「……認めてやろう……さっきの言葉は撤回してやろう」
出音(でおん)「え?何?」
セイ「貴様の姉に対する想いは本物だ」
出音(でおん)「やったぜ!」
 いやいや、そこで喜ぶのもどうなのか……これが訓練されたシスコンの性なのか……

 かくて、セイと出音(でおん)の死合は終了した。
※え?!こんなんで終了!?
 こうして、今度こそパク・リチャウが巻き起こした騒動は幕を閉じることとなった。


END

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