Eighter -Scarlet Nocturne-
22nder 〜影の中に輝く太陽 D〜



#7
乾藤葦嵩(いぬいとう・あしたか)「フッ、接近すれば勝てると思ったか!だが、それは大いなる間違いよ!」
 ガシイッ
 背後から迫る拳を難なく受け止める葦嵩(あしたか)化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「野郎、止めやがった……」
梓與鷹(よたか)(クッ……魔術師だからと甘く見たか……いや、ヴァルカナリアクターだからか……)
葦嵩(あしたか)「さぁ来い!祟るの黒き拳(ブラック・カーズ・ナックル)の神髄を貴様に叩き込んでやる」
與鷹(よたか)「そうかい……だったら、こっちも双狼拳の神髄を見せてやるよ」
 與鷹(よたか)も気持ちを瞬時に切り替える。天狼甲ショロトルを装備し全力の構えだ。
※じゃあ今までは全力じゃなかったのか?という疑問が出てくるが……それは聞かないで……
葦嵩(あしたか)「孝・貫槍抜剣掌(かんそうばっけんしょう)!」
與鷹(よたか)神狼九断(しんろうくだん)来護重(らいごうえ)!」
 ゴガンッ
葦嵩(あしたか)「ぐあっ!?」
 錐の形をした拳打を叩き込んで貫きにかかる葦嵩(あしたか)に対して、そんなものを食らってやる義理もない與鷹(よたか)は九つの
拳打を一つに束ねて一点突破、真っ向から打ち砕いて見せる。
葦嵩(あしたか)「貴様……」
ラキ(あ、あたしってば当然ね!)
 いや、何が当然なのか……意味不明であった。
葦嵩(あしたか)(ってか、事前にわかってたんなら教えろ!)
ラキ(あたしってば……それはできない約束ね!)
 使えない魔導書娘であった……
 と、言うか、魔術師の癖に近接格闘もこなす。それ、本当に魔術師なのか?
 まぁ、世の中には魔法が使えないなら近接格闘で仕留めればいいじゃないって魔女もいることだし、近接格闘が
得意な魔術師がいてもおかしくはないのかもしれない。(いや、そもそも與鷹(よたか)は魔術が使える拳法家だよ)
葦嵩(あしたか)「よかろう……ならばこれはどうだ!」
 ずおおおおっ
 葦嵩(あしたか)の腕が一際禍々しい気を放つ。
葦嵩(あしたか)「信・蛇襲抜剣掌(だしゅうばっけんしょう)!」
 邪悪な気を孕んだ黒い衝撃波が與鷹(よたか)に襲い掛かる
與鷹(よたか)聖狼躱虚(しょうろうたうろ)!」
 ドッ
 流石にアレを受け止めるのはマズいと判断した與鷹(よたか)は回避と同時にカウンターを叩き込む。
葦嵩(あしたか)「なんだと!?」
 信・蛇襲抜剣掌(だしゅうばっけんしょう)……それは言うならば毒手。当たれば一撃必殺とはいなかくとも、同じ個所に二度当てれば、あ
るいは違う場所でもいいけど七回攻撃を受ければ絶命させられたはずだ
 それを瞬時に見切って、更にカウンターを繰り出してくるとは予想もしなかった葦嵩(あしたか)であった。
※いや、二撃決殺とか七撃決殺って……ブリ〇チと転〇ラかい!

#8
葦嵩(あしたか)「馬鹿な、天才の俺が、圧されている!?……ありえん」
與鷹(よたか)「お前は天才でもなんでもないってことだろうよ」
 そもそも嘘八百を並べてありもしない歴史を捏造する時点で天才とは程遠い。

 一方、そんな與鷹(よたか)葦嵩(あしたか)の死合を眺めているだけの他の面々はというと……
新田姜馬(きょうま)「気づいているか?」
古畑呂司(りょうじ)「あぁ……」
梶太郎(かぢだろう)「あぁ?何がだよ!?まさか、双狼拳が敗北するとか言い出すんじゃないだろうな」
 誰もそんなことは言ってない
出音(でおん)・グロウシュベル「ノース光輪結社と大神の降真靈(こうしんりょう)の姿が見えない」
梶太郎(かぢだろう)「はぁ?どういうことだよ!?」
 ワケが分からないと言った感じの梶太郎(かぢだろう)だった
旧透水(ジウ・トウシュイ)「おそらくハ撤退したノだろウ」
梶太郎(かぢだろう)「撤退ぃ!?」
 なんで?どうして?と疑問だらけの梶太郎(かぢだろう)
姜馬(きょうま)「奴らがここへ来た最大の目的はヴァルカナの確保だ!」
 しかし、既にこの地にあったヴァルカナは葦嵩(あしたか)の手に渡ってしまった。
梶太郎(かぢだろう)「しかし、だったら殺してでも奪い取るって方法があるんじゃねぇのか?」
呂司(りょうじ)「た、確かに……」
 ヴァルカナを奪い取れるのはヴァルカナリアクターのみ。そして、ヴァルカナリアクターがヴァルカナを失う事
は死を意味する。
 それに、そうではなくても、スカウトすれば済む話ではないのだろうか?
姜馬(きょうま)「奴らは愚かだったからな……」
透水(トウシュイ)「そウいウことカ……」
梶太郎(かぢだろう)「いや、どういうこと?」
 ノース光輪結社と大神の降真靈(こうしんりょう)……この二つの組織の中で手を取り合ってヴァルカナを集めようという意思はな
い。
 互いにいがみあい、潰しあっていたことからそれは明白。
 では、そうなると何が起こるか……お互いのヴァルカナリアクターが疲弊するということだ。
 言葉でスカウトできればそれに越したことはないが、おそらく葦嵩(あしたか)が首を縦に振ることはないだろう。
 そうなると、力尽くということになるが、疲弊した状態ではそれが敵わないのは道理。そうなるとあとは撤退す
るしかないということだ。

#9
葦嵩(あしたか)「貴様……名は!?」
與鷹(よたか)「なんだ?いきなり」
 暫く拳と拳で語り合っていた後、突如葦嵩(あしたか)がそんなことを言いだす。
與鷹(よたか)「……梓與鷹(よたか)……」
葦嵩(あしたか)「そうか、貴様の名、覚えたぞ!」
 そう叫ぶとジャンプして飛び退る葦嵩(あしたか)
葦嵩(あしたか)「最後に、もう一度だけ言っておく、俺は、天才だ!」
 カチッ
 叫ぶと同時に隠し持っていたスイッチを押す
與鷹(よたか)「お、おいおい、まさか……」
 言うまでもなく、それはこのでっち上げた遺跡を破壊するためのスイッチだろう
一同「に、逃げろッ!」
 ズドオオオンッ
葦嵩(あしたか)「フハハハハ!天才の俺に不可能はないッ!」
ラキ(あたしってば天災ね!)
 いや、それは天災じゃない、人災だ!

出音(でおん)「不利を悟ったら爆破かよ……トンでもない野郎だな……」
梶太郎(かぢだろう)「あの野郎、次あったら殺す!」
 こうして、唐突に葦嵩(あしたか)との因縁が始まった……
 ヴァルカナは確保できなかったが、ノース光輪結社にも大神の降真靈(こうしんりょう)にもわたることがなかったのは不幸中の幸
い……と、いうことにしておこう。


END

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