Eighter -Scarlet Nocturne-
14ther 〜埃及(エジプト)からの影厨師 D〜



#7
 裏の人格が表に浮かび上がり、手が付けられなくなったチランを目の当たりにして一同唖然。
ノイエDA「弥如(びぎん)様を守れ!」
 一人の叫びにハっと我に返ったノイエDA一行はすぐさま弥如(びぎん)を守るべく駆けつける
チラン・ギャンブリエル「邪魔をするな!」
 ザシャアッ
 バシュアッ
 しかし、キれたチランは容赦がない。手にした中華包丁を縦横無尽に走らせノイエDAの連中を吹き飛ばしていく
*「くっ……ごふぅ!?」
*「げほあっ!?」
*「な、なん……ごぱぁっ!?」
 吹き飛ばされた一行は外見からするとノーダメージのように見えるが、それぞれ吐血してその場に(くずお)れる
灰漸(はいぜん)「な、なんだ!?」
栖嶺(すれい)「貴様、一体何をした?!」
チラン「俺が料理修行の果てに手に入れた奥義!食材を究極に活かす技法……」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「食材を究極にイカす技法!?」
 なんなニュアンスが違いますが、まぁ、放置しましょう
チラン「例えば生魚……鮮度が命……それを究極に保つにはどうすればいいか……」
梓與鷹(よたか)「なっ……まさか……料理されたことを相手……ってか食材に悟られないようにするとでも!?」
一同「そんな馬鹿な……」
 與鷹(よたか)がぽつりと呟いた一言に騒然とする一行。
チラン「御名答……外皮を傷つけずに内側を調理することこそ、鮮魚を活かす究極の調理法!」
栖嶺(すれい)「馬鹿なっ……ならば、こいつらは……」
 一見ノーダメージに見えるがそれは外見だけに過ぎない。内臓はズタボロに引き裂かれ、もはや死を待つのみ
灰漸(はいぜん)「くっ……なんて恐ろしい幽闘術なんだ……」
與鷹(よたか)(ってか、この人、もしかして未地葉呂(みちばろ)斬人流でも習得してんじゃねぇの?)
 そんなことをつい思ってしまう與鷹(よたか)であった。
 ちなみに、問題の未地葉呂(みちばろ)斬人流とは殺人料理人として名高い未地葉呂(みちばろ)九三郎が興した流派(?)で調理技術を
人類に対して行うという滅茶苦茶な殺し方である。
 例えば鱗()り……これは相手の皮膚に包丁をたてて擦って削り取っていくという残酷な技だ。
 例えば手開き……これは相手の首を落として腹を掻っ捌いて内蔵を取り出すというグロテスク極まりない技だ。
※まぁ、今は未地葉呂(みちばろ)斬人流について講釈する場ではないのでここらへんで終わっておこう。

#8
出音(でおん)・グロウシュベル(俺たちが食事を粗末にしなくてよかったぁ……)
 ほっと一安心する出音(でおん)なのであった。
灰漸(はいぜん)(これでは招聘(しょうへい)どころの話ではない……)
栖嶺(すれい)(ど、どうします!?)
 ど、どうすると言っても……とノイエDA第五分隊のリーダー格は更に上司である惹閃(じゃくせん)に助けを求めようと彼の方
を見た。
惹閃(じゃくせん)「……あうあう……」
 しかし、惹閃(じゃくせん)はおろおろあたふたするのみでとてもじゃないが頼りになりそうにない。
灰漸(はいぜん)栖嶺(すれい)「駄目だこりゃ……」
 と、その時、ノイエDAの連中がハイゼンスレイラーUコンビに歩み寄りそう告げる。
*「我々にできることはまだあります……」
栖嶺(すれい)「ま、まさか、お前ら……」
 それはノイエDAの連中が壮絶な覚悟を決めた瞬間だった
*「我々雑兵の生命は安いものです……ですが、あなた方は違う」
灰漸(はいぜん)栖嶺(すれい)「正気か!?」
 あなた方は大神の降真靈(こうしんりょう)にとって必要な生命。
ノイエDA一同「我らが文字通り血路を切り開きます!」

チラン「食事を粗末にする奴は大ッ嫌いだ!」
 いや、お前はどこのゲ〇戦記だよ。
 そして、もはや與鷹(よたか)らは置いてけぼりである
*「てめぇの相手はこの俺だ!」
*「貴様に教えてやる!仏門獄曼掌(ぶつもんごくまんしょう)は無敵だということを!」
ノイエDA一同「ここが我らの生命の使い時ッ!行くぞ!奇命無靈咒如来(きみょうむりょうじゅにょらい)!」
 自分の内に秘められし獣性や破壊衝動などもろもろの凶暴性を開放してチランに襲い掛かるノイエDA
チラン「食事を粗末にする輩には、死あるのみ!」
 ズドンッ
 バカンッ
 ここから先はずっとチランのターンだ。

エランドラ「馬鹿らしい……お前もとっとと行けよ」
惹閃(じゃくせん)「い、いいのか?……こ、ここで逃がしたこと……お、お前はいずれ後悔する……」
エランドラ「ハッ!面白ぇ……俺は生まれてから後悔をしたことがねぇんだ!」
 それはアンタの性格のせいじゃね?と心の中でフキエルは突っ込むのだった。
 さておき、ハイゼンスレイラーUコンビと惹閃(じゃくせん)弥如(びぎん)の下へ……
弥如(びぎん)「はっ!?」
 気が付けば、死屍累々……百万の生命の上にチランは立っていた
※いや、ノイエDA百万もいねぇから!

#9
灰漸(はいぜん)栖嶺(すれい)「撤退のご命令を……」
弥如(びぎん)「……味方の被害が多すぎる上に、招聘(しょうへい)も不可能とあれば、仕方ありませんね……」
 かくて、一つの危機は去った……

チラン「はっ!?私は一体何を!?」
 そして、正気に戻るというか、表の人格に戻るチラン
出音(でおん)「ええと……どうしようか……」
與鷹(よたか)「本来の目的はヴァルカナリアクターが悪用されないように保護することだったんだが……」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「どこからどう見ても奴に保護は不要だよなぁ?」
エランドラ「なんだかよく分からんが、協力するのは(やぶさ)かではないぞ」
フキエル「エランドラ様!?」
エランドラ「毒を食らわば皿までってな……」
フキエル「なんかこう、的確な感じですね……」
與鷹(よたか)「……ええと、とりあえず帰るか」
出音(でおん)「そ、そうだな……」
梶太郎(かぢだろう)「待てよ!まだ皿うどん食ってねぇぞ!」
一同「今回の目的はそれじゃねぇッ!」
 一同の突っ込みが炸裂した瞬間であった。
 ともかく、ヴァルカナリアクターが悪用されなかっただけ、よしとすればいいのだろうか?
※ちなみに死屍累々なノイエDAはエランドラ(スタッフ)がオイしく火葬し(いただき)ました。


END

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