Eighter -Scarlet Nocturne-
2nder 〜盗まれし錻力(ブリキ)野郎 D〜



#7
辜木覇図流(つみき・ぱずる)「……で、何か御用ですかな?」
 とりあえず、立ち話もなんなので、店の奥へと通される一行。
白拍子かんな「盗まれたゲキ・ガンガー人形の在処が判明したので報告に来ました」
覇図流(ぱずる)「なっ、本当か?」
 まさかこんなに早く見つかるとは思ってもみなかったため、驚きと嬉しさで舞い上がりそうになる覇図流(ぱずる)。
梓與鷹(よたか)「どうも、盗んだ奴は中々の度胸の持ち主らしくてな……」
覇図流(ぱずる)「まぁ、ウチの店から盗み出すくらいですからなぁ……」
 中華マフィアに喧嘩を売るとはいい度胸だと言わんばかりの覇図流(ぱずる)。
 表向きは中華マフィアと繋がっていることを隠しているんだよね?と内心突っ込む與鷹(よたか)であった。
かんな「この店のはす向かいにも弧堵茶庵(こどちゃあん)というアンティークショップがあるかと思いますが…
…」
覇図流(ぱずる)「ああ、そう言えば、あったな……はっ、まさか……」
與鷹(よたか)「ああ、そのまさかだ……奴はそこで盗んだ玩具を売っていたんだ」
 一体六万四千円で……
 その事実にガックリと項垂れる覇図流(ぱずる)
 まさか、こんな近くにあったとはという盲点じみたこともさながら、三体で総額百万円もするゲキ・ガンガー人
形が事もあろうに1/5の値段で売りさばかれているとは……と
 と、言うわけで早速店長はかんならと共にはす向かいのアンティークショップへと足を運ぶ

 弧堵茶庵(こどちゃあん)
*「……おや、貴方は確か……大人(ターレン)玩具堂を経営している……」
 一行を出迎えるは弧堵茶庵(こどちゃあん)を経営する店長、偉木苔士(えれき・こけし)である
覇図流(ぱずる)「ンなこたぁ、どうでもいいんだ……この店にブリキで出来たゲキ・ガンガー人形があるはずだ」
 とっととそれを出せ!とがなり立てる覇図流(ぱずる)
偉木苔士(えれき・こけし)「はぁ、確かに、数日前にゲキ・ガンガー人形を売ってきた人がいましたが、それが何か?」
覇図流(ぱずる)「貴様、ニュースとか見てないのか!そいつが俺ンとこから盗まれたゲキ・ガンガー人形なんだよ!馬鹿野
郎ッ」
苔士(こけし)「な、何と!」
 それはビックリ!とどう見ても驚いていない感じの苔士(こけし)であった
覇図流(ぱずる)「いいから、そいつをとっとと持ってこい!」
苔士(こけし)「一体四十五万円ですが?」
覇図流(ぱずる)「はぁ?」

#8
 一体四十五万円ってことは三体で百三十五万円である。もともと大人(ターレン)玩具堂では三体で百万円相当だったことを
考えると、一体分増えた値段ということになる。
覇図流(ぱずる)「おい、コラ、ふざけんじゃねぇぞてめぇ」
 思わずヤクザじみた感じで苔士(こけし)の胸倉を掴んで持ち上げる覇図流(ぱずる)
苔士(こけし)「ま、まぁ、落ちついて……」
 だが、脅されても蛙の面に水な感じで冷静な苔士(こけし)、この人もタダモノではないのだろうか?
覇図流(ぱずる)「おい、貴様……あのゲキ・ガンガー人形を一体六万四千円で買ったそうじゃねぇか……ああ?それを……
何だぁ?今度は一体四十五万円で売るだぁ?」
苔士(こけし)「フッ、安く買いたたいて高く売りさばく……商売の基本ですよ」
覇図流(ぱずる)「……」
 ぐうの音も出ない覇図流(ぱずる)であった。
 と、言うか何故買いたたいた値段を知ってるの?と疑問が浮かぶ苔士(こけし)であったが、彼の後ろには運の女神として
あまりにも有名なかんなが居たことでその疑問はたちどころに氷解する。
覇図流(ぱずる)「ともかく、とっととそれを返せ!」
 あれはウチの大事な商品なんでな!と覇図流(ぱずる)
苔士(こけし)「では、三体で総額百三十五万円になります」
覇図流(ぱずる)巫山戯(ふざけ)んなてめぇ!」
 一触即発……と、そんな時、その場に現れたるは……上総介
(かみ)総介「いや、貴様は無償でソレを返さないとならん」
苔士(こけし)「誰だ?アンタ?」
與鷹(よたか)「総?」
総介「上総介……警察だ!」
覇図流(ぱずる)「ゲェッ(かみ)総介ッ?」
 思わず胸倉を掴んでいた手を放して何事もなかったかのようにふるまう覇図流(ぱずる)
 と、いうか、明後日の方向を向いて吹けもしない口笛をすひゅ〜〜とか吹いている時点で怪しさ無限大である。
苔士(こけし)「ど、どういう……」
山咲(やまざき)桜「盗まれたモノが盗まれてから二年以内ならば、本来の持ち主に対して無償で返さなくてはならない……こ
れは法律で定められていることです」
苔士(こけし)「なっ、そんなことが……いやでも、『買い取った品物が盗品だということを知らなかった場合は罪にならな
い』って聞いたんだが……」
一同「……」
 お前、盗まれたモノだって知ってないか、それ?
 なお、苔士(こけし)がどこでそれを知ったのかと言うと、とある戦国時代モノのマンガからだそうだ
 ってか、それって織田信長の楽市楽座のアレでしょうが!間違っちゃいないけど、間違ってるよ……
覇図流(ぱずる)「さぁ!とっととソレをこちらへ渡して貰おうか!」
苔士(こけし)「……」
 もはや返すしか手はなかった。

#9
 と、言うわけで盗まれたゲキ・ガンガー人形は無事帰ってきて、事件は一件落着……にはならないのがこの世界
の凄いところである。
※別にほめてないけど……
 依頼も完了したということで、Eighter一行は天四斗へと戻る……フリをして隠れて大人(ターレン)玩具堂の動向を見守っ
ていた。
 そんなことは梅雨知らず、大人(ターレン)玩具堂にはゲキ・ガンガー人形奪還の知らせを聞いた有嗎幇(ユーマハン)が足早に駆けつけて
いた。
覇図流(ぱずる)「お待ちしておりました」
猫耳萌(マオ・アルメン)「うム……」
覇図流(ぱずる)「こちらが奪還したブツになります」
耳萌(アルメン)「確カに、これハ盗まれたブツに違いナい……ヤれ!」
美朶上(メイ・ドウシャン)代昴呉(ダイ・マオウー)「ハッ!」
 グキャッ
 二人はゲキ・ガンガー人形を乱暴に掴むとゴキリっと胴を捩じり切る。
 真っ二つになった人形を逆さにして振ってみるのだが……しかし、何も出てこない。
耳萌(アルメン)「どウいウことだ、こレはッ」
 ダムっと机に拳を叩きつけて猫が叫ぶ
覇図流(ぱずる)「ど、どういうこととは、一体!?」
朶上(ドウシャン)昴呉(マオウー)「中身ガ抜き取られてイる!」
 その中身とは一体……


END

前の話へ  戻る  次の話へ