Eighter -Noble Gathering-
41ster 〜乖した剣鬼をすなどれ C〜



#5
孤高の剣鬼、冥時みょうじ萌 VS 東斗陽拳伝承者、庵刷いおずりケン……両者の死合は白熱し……そして、最終局面を迎える……
果たして、勝つのは……どちらだ!?
河上沢斗たくと「……む?」
そして、爆煙が晴れると……
冥時みょうじ萌、庵刷いおずりケン「……」
ケンの右の拳が萌の腹部を貫き……そして、ケンの両肩に食い込む萌の四天刃
元石美鈴ウォンソ・メイリン「互角カ!?」
ドドウッ
しかし、倒れるのはケンであった……
よく見ればケンは萌を貫いてはいなかった……彼女の羽織る黒と橙の段だら羽織は無残にもケンの抜き手により
貫通していたが……萌は無傷だった……
ケン「……これが……孤高の剣鬼……か……」
萌「……」
そして、萌もまた、四天刃を地面に突き刺し、杖の代わりに何とか体勢を維持する……
それは……萌の辛勝であった……
天然蛍あましか・けい「ね?夢で見たとおりでしょ?」
突込魁とつこみ・かい「アンタの夢のことなんか知るかッ!」
そんな中、能天気に口を開くけいに、かいがすかさず突っ込みを入れる。

……ともかく、ケン VS 萌……この死合は萌に軍配が上がった……
そして……

東京都、タワーYATO
*「……え〜、孤高の剣鬼と東斗陽拳との死合ですが……」
魔刃翁「分かっている……孤高の剣鬼が勝ったのだろう」
*「は……そうです」
報告を終える前に、先に魔刃翁に結論を言われてしまい、若干困惑する漢……
魔刃翁も魔刃翁で、この死合、萌が勝つだろうと予測していたのだろう……
*「魔刃翁様……どうなさいます?」
魔刃翁「どう?……これはまた異なことを言う……」
ギロリと漢を睨みつける魔刃翁
*「ヒッ……」
魔刃翁「孤高の剣鬼……あれは最早、放置に限る」
*「……は……しかし、魔刃翁様……」
儂の決定に不満でもあるのか?と凄みを利かせると、漢は最早黙るしかない……
*「……魔刃翁様の決定であれば……」
しかし、それでも、まだ萌を許せない……と思う輩も少なくはないでしょう……それはどうするのです?と漢
魔刃翁「フン……これを見ろ……」
そして、魔刃翁は懐より1通の書類を取り出す
*「これは……?」
それは、冥時志明みょうじ・しめいからの書簡……
そこには、『孤高の剣鬼のことは手出し無用』……と一言書かれているだけであった……
魔刃翁「冥時みょうじ本家からの正式な解答だ……よって、これ以降、裏の世界の住人が孤高の剣鬼に関わることを禁ずる
 ……」
*「は……ははぁ……」
かくて、漢はその意思を裏の世界の住人へと伝える……
またたく間に、冥時みょうじ志明の意思は裏の世界へと伝わり……そして、それが鶴の一声となりて、孤高の剣鬼を粛清
しようとする動きは止まった……

#6
天四斗あまよと、某所
百井銀牙「クソッ」
銀牙は荒れていた……
それもそのはずである……冥時みょうじ本家より、孤高の剣鬼にこれ以上関わることを禁ずるとの正式な解答が配され
萌を粛清することが出来なくなったからである
刃金鐵郎てつろう「随分と荒れてるな……エネミーゼロ」
銀牙「これが荒れずにいられるか!裏の世界の住人はもはや孤高の剣鬼に手出しを禁ずるなどと……ふざけている
 にも程がある……」
陸堕威蔵おかだ・いぞう「東斗陽拳も、豪語した割には大したことなかったしな……」
ケン「……ぬかった……孤高の剣鬼……あれはもはや、鬼ではなく、鬼神……それさえ分かれば次こそは勝てる
 ……しかし……」
一同「!!!!」
噂をすれば影が差す……突如、気配もなく、背後にケンが出現し、一行は驚きを隠せない。
威蔵いぞう(コイツも無音の間合い入りは病的に突出しているんだから、それを活かせば孤高の剣鬼も斃せると思う
 んだがなぁ……)
しみじみとそんなことを思う威蔵いぞうであった。
銀牙「俺は認めねえぞ……このまま孤高の剣鬼を放置するなどと……」
威蔵いぞう「しかし、裏の世界の決定事項だ……それに背き孤高の剣鬼を駆逐しようとなると、今度はそれが背信行為
 になるぜ……」
銀牙「構うものか……奴は俺の無敵の記録に泥を塗った張本人……俺が再び無敵として返り咲くためには……
 どんなことがあっても、斃す!」
威蔵いぞう「……ま、好きにすればいい……」
そして、威蔵いぞうはその場を後にする……

威蔵いぞう「……孤高の剣鬼は捨て置け……か……ふぅ、どうやら冥時みょうじは本気で孤高の剣鬼を斬り捨てて、非情の剣鬼
 を一族の名跡にするつもりか……」
魔刃翁「フ……それは違うぞ……」
威蔵いぞう「!!!!」
そんなことをぽつりと呟いていると、背後より魔刃翁の声が……
威蔵いぞう「これは、魔刃翁様……」
一礼して畏まる威蔵いぞう……そして、問いかける……違うとは何か?と……
魔刃翁「冥時志明みょうじ・しめいはな……孤高の剣鬼を一族の名跡として決定した……非情の剣鬼は孤高の剣鬼の代行に過ぎん」
威蔵いぞう「……」
魔刃翁「……あれも裏の世界を思ってのことよ……確かに、未だ、孤高の剣鬼を裏の世界から勝手に抜けだした
 裏切り者と揶揄する者も多い……だがな……今、裏の世界に孤高の剣鬼を斃せる猛者はおらんのだ……」
威蔵いぞう「……なるほど……裏の世界の住人をいたずらに殺さないために……孤高の剣鬼の粛清を禁じた……と?」
魔刃翁「フ……そういうことだ……」
そして、魔刃翁はその場を後にする

#7
……冥時みょうじ志明が孤高の剣鬼の粛清を禁じようが、禁じまいが……しかして、最早、萌は徒に人を殺さない……

天四斗あまよと、修羅の門
萌「……」
そして、萌は今日も修羅の門で何をするでもなく、夕陽を眺める……


END

前の話へ 戻る 次の話へ