Eighter -Noble Gathering-
33rder 〜とぶらう紅き鳳凰の章 C〜



#5
元人交喙いすかの父親、鷦鷯しょうりょうの十三回忌を記念して(記念って場違いな言葉だな……)交喙いすかにせがまれて與鷹よたからは
元人家の蔵の整理を行っていたのだが……蔵の中には何やらしょ〜もない品物ばかり……
あらかた不要なものを捨て去ると、隠し扉の様なものを発見することとなる……
元人交喙いすか「開けるぞ」
梓與鷹よたか「……ああ、いつでもいいぞ」
意を決して隠し扉を開ける交喙いすか……だが、しかし、長年閉められていたせいかなかなか持ち上がらない
交喙いすか與鷹よたか、手伝え」
與鷹よたか「はいはい……」
與鷹よたかも拳法家の端くれとして余力を惜しまない。
やがて、ギギギギギという音を立てて隠し扉は持ち上がる
與鷹よたか「か〜〜、重ッ……何だこれ……コンクリでもないし……」
白拍子かんな「これは、イリジウムとオスミウム……?」
梔曹くちなし・つかさ「何だそれ?」
與鷹よたか「おいおい、勘弁してくれよ……よりにもよって最も比重の高いツートップかよ……」
交喙いすか「まぁ、いいや……とりあえず、中に入ってみようぜ」
*「待て!」
と、その時、制止する声が蔵に響く
與鷹よたか「総……」
その声の主は総介……そして、やはりと言うべきか、当然ながら、桜も居合わせていた。
交喙いすか「何だよ、お前も手伝いに来た……ってわけじゃなさそうだな……」
と、言うか、なんでここにいるんだよ?と疑問を浮かべる交喙いすか
かみ総介「……やはり、遅かったか……」
開けられた隠し扉を見て、そう呟く総介
與鷹よたか「遅かったって何がだよ?」
総介「よく考えろ……なぜそんな比重の高いもので隠し扉を造り必要があったか……」
與鷹よたか「……」
白拍子かんな「……開けさせないため……」
総介「……そう考えるのが妥当だろうな……」
交喙いすか「開けさせないためってどういう意味だよ……」
納得のいかない交喙いすかが食いつく
山咲やまざき桜「つまり、封印するためと言うことです」
交喙いすか「封印?……」
総介「……交喙いすか、お前の父親がトレジャーハンターとして世界の遺跡を荒らし……そして、その遺跡の一つで
 暴いてしまった災厄を封じ込めるため……」
つかさ「……なるほど、つまり、この蔵はパンドラの蔵だったと……」
そして、総介は真理の断片が見せる未来により、それを悟って急いで駆け付けたのだ。
※あれ?じゃあ、なんでかんなは止めに走らなかったのか……超運で良からぬことを先に知らせることが出来た
 ように思えるんだが……
與鷹よたか「総……その災厄ってのは?」
総介「さぁな……そこまでは知らん……真理の断片は災厄を封じ込め……そして、その封印が暴かれるという
 ことまでしか知らせてくれなかった……」

#6
交喙いすか「要はアレだろ、もう一度蓋をすればいいんだろ?」
かんな「……いえ、一度封印を解いてしまった以上、蓋をしても解決には至りません」
かんなが哀しげに呟く。
交喙いすか「じゃあ、どうするんだよ」
與鷹よたか「……方法は一つしかないだろう」
封印出来ないのならば、災厄を駆逐するしかない……
総介「そう言うことだ……」
そうして、総介はかんなを睨みつける。
與鷹よたか(何だ?)
なぜ俺や交喙いすかではなく、かんなを睨みつける必要があるのか……
しかし、與鷹よたかは思い当たる節があった……
かんなの超運をもってすれば、この扉を開ければ災厄が放たれることが分かったはずだ……ならば、事前に
止めることもできたはず……
しかし、かんなはそれをしなかった……だからこそ、総介は監督不行き届きとしてかんなを睨みつけている
のだ。
*「……せ……」
交喙いすか「何か言ったか?」
與鷹よたか「え?いや、何も……」
*「……返せ……我が神器……」
交喙いすか「この中から?」
そのおどろおどろしい声は、封印された蔵の地下から聞こえてくる。
交喙いすか「神器を返せって……」
と、次の瞬間、交喙いすかが背負っていた黎t劫棍れいきょうごうこんがビカっと光を放つ
つかさ「くっ……」
総介「どうやら、お前の持つ神器の本来の持ち主が封印されてるようだな……」
交喙いすか「本来の持ち主だぁ?……ふざけるな!この黎t劫棍れいきょうごうこんは俺が親父から受け継いだ遺産だ!」
最も、譲り受けたわけではなく、鷦鷯しょうりょうの死後、蔵の中に足を踏み入れた際に見つけて、それ以降勝手に使って
いるだけなのだが……
更に言うならば、交喙いすかは偶然、黎t劫棍れいきょうごうこんを発見したのではない……
蔵から何やら声が聞こえるような気がして……そして、その結果、黎t劫棍れいきょうごうこんを発見したのだ……
交喙いすか「まぁ、いい、ともかく、パパっといってサクっと斃せばいいんだろ……」
そう言って交喙いすかは蔵の地下へと飛び降りる
與鷹よたか「あ、待て、独断専行は……」
後を追う與鷹よたかだったが、しかし、見えざる壁に阻まれる。
與鷹よたか「……何だ?」
総介「どうやら結界の様だな……」
桜「ええ……相手の狙いは交喙いすかのみのようです。」
與鷹よたか「クッ、交喙いすか……無茶するなよ……」

……その頃、封印の先に飛び込んだ交喙いすかは……

交喙いすか「……なんだか真っ暗で何も見えないな……」
*「貴様が……我が神器を奪った者か……」
そして、そこへ先ほどのおどろおどろしい声が響く
交喙いすか「誰だよ!とっとと姿を見せやがれ!」
そのまま黎t劫棍れいきょうごうこんを構えつつ啖呵を切る交喙いすか……
果たして、闇の中にいる災厄の正体とは……
そして、與鷹よたからは手をこまねいてみているだけしかできないのだろうか……


END

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