Eighter -Noble Gathering-
28ther 〜千の偽名を纏って C〜



#5
2年前に起こった殺人事件と現在起きているナゾの事件……この2つの事件は繋がっており……その犯人は
千の偽名を持つ女、後田厳香こうだ・げんかであった!?
かみ総介「……本名が分かったところで指名手配書を出しても……無駄だ!」
梓與鷹よたか「……無駄って……どういうことだ!?総……」
そこまで分かれば早速指名手配を行えば事件は簡単に終わるのでは……と思ったのだが、しかし、総介はそれ
を否定する。
……そして、どうにもわからない與鷹よたかにかんなが解説を行う……
白拍子かんな「……この名前と顔で指名手配書を出したとしても、千の偽名を持つ彼女……いえ、千の偽名
 を持つが故に自分の本来の名前を忘れた彼女に対して有効性は低い……と、言うことです」
一同「……」
※どんな人間だ!……ってかこの人、雄牛のしゃれこうべをかぶっていたりする魔導師じゃないよね!?
 (ちょっと、マテ)
與鷹よたか「それは……何と言うか……」
総介「……だが、こんな事件は早々に片をつけなくてはな……」

とりあえず、一向は事件を終結させるため、東京都へと向かった……
東京都、池袋おるくべき
総介「さて、では、コレより2年前の殺人事件の犯人を探し出そうと思う」
警官「かみ警部……あの、いきなりやってきて……何を!?」
無能警官の輪に入り込み、突然そんなことを言い出す総介に、無能警官一行も驚きを隠せない。
山咲やまざき桜「まずは、これをお取りください」
厳香げんかさんのモンタージュ写真を配る桜
総介「いいか、彼女を見かけたらすぐさま俺に居場所を連絡しろ!逃げたら逃げたで追え!!」
警官「かみ警部……あの……容疑者の名前は?」
総介「無いと思え……」
警官一同「はい!?」
一同唖然……
かんな「……彼女は千の偽名を使う女……そして、千の偽名を使うが故に自分の本名を忘れてしまった女性……
 よって、本名など無意味ということです」
警官一同「……はい!?」
一同呆然……それも無理なからぬ話である。
総介「分かったらとっと行け!!」
警官「いえ……っさ……の前に……かみ警部……なぜ、ここなのですか!?……容疑者がここにいるという確証は
 ……」
桜「最近ここ近辺でおきているイタズラ事件……覚えていますか?」
警官「……名前を書く場所にやたらめったら名前を……ってまさか……」
流石の無能警官も気付いた……
総介「分かったら行け!!」
警官一同「りょ、了解です!!」
ドタバタッ
かくて、蜘蛛の子を散らす勢いで無能警官は捜査に乗り出したのであった。

#6
捜査開始から10分後
中川邦武ほうむかみ警部……」
中川警部が有力な手掛かりを手にのろのろと歩いてやってくる
総介「おい、貴様、事件を解決する気があるのなら走ってでも来い!」
邦武ほうむ「ひっ……イエッサ!!」

ここで、話は少し前に戻る……
東京都、池袋おるくべき、某レストラン
店員「……た、確かに、この女性を見かけたことがありました……」
桜から渡されたモンタージュの女性を見て、店員が呟く
警官「……彼女は千の偽名をつかい、2年前から逃亡している殺人犯なんで……見かけたらすぐ通報を」
※ズバっと言うなよ……そういうことは……
ドタバタッ
と、そこへ慌ただしく駆けつける警官が1人
警官「中川警部……彼女らしき人物を見かけました……」
邦武ほうむ「おし、俺はかみ警部に連絡に行く、お前らは彼女を包囲しろ!」
警官「は……はい!!」
ちなみに、優雅な足取りで総介に連絡にいった彼が、怒鳴られたのは言うまでもない。

かくて、無能ではあるが、馬鹿ではない警官の迅速な対応により、彼女は包囲された……
後田厳香こうだ・げんか「な……何!?あなたたちは……?」
突然の包囲にビックリする彼女……と、そこへ、総介らも参上する。
総介「さて、2年前、金令木友幸きんれい・きゆさを殺した疑いで逮捕する……仮称後田厳香こうだ・げんか……」
厳香げんか「違うわ!私の名前は良子……」
総介「フン、どれだけ偽名を使おうとも、犯人がお前であることに変わりは無い……仮称良子」
律儀に彼女の偽名を使ってあげる総介。
厳香げんか「誰が良子よ!私は……」
かんな「光江……」
厳香げんか「!!!?」
彼女が次の偽名を叫ぼうとした矢先、かんなが先に続ける
かんな「定美」
厳香げんか「うっ……」
かんな「美穂子、恵美、真知子、君江、裕子……」
厳香げんか「くっ……なんで言おうとした名前を先に言うのよ!アンタ!何者!?」
更にその後も、矢継ぎ早に思いついた偽名を封じられ、後退りする彼女……
かんな「……白拍子かんな……運の女神ですが……」
厳香げんか「……」
運の女神なら……と納得して呆けている間に手錠をかけられる彼女
厳香げんか「へ!?」
総介「さて、話は署で聞かせて貰おう……」
厳香げんか「ちょ、私は殺人なんかしてもいないわ!」
総介「フン、いかに名前を変えようとも、指紋は変えようが無い……行くぞ!山咲やまざき厳香げんか「……」
桜「はい、警部」
……そして、この自分の名前すら忘れた殺人犯の起こした事件は……幕を閉じた……


END

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