Eighter -Midnight Howling-
1ster 〜その名は黒き遺物 B〜



#3
 最近天四斗あまよとを騒がせる連続殺人鬼……豪谷静寂しじま……彼は場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツに支配された哀れな傀儡であった……
豪谷静寂しじま「キィエアアアア〜〜!」
白拍子かんな「無駄です……」
 奇声と共に右手の狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングを繰る静寂しじま……しかし、所詮道具に操られている傀儡でしかない静寂しじまにかんな
を斃すことなど出来やしないのだ……
かみ総介「……かんな、情けをかけるな……」
かんな「……それは……分かっています……」
総介「だったら、とっとと静寂しじまにトドメをさせ!」
梓與鷹よたか「ちょ、総……」
 いきなり何を言い出すんだ!?と與鷹よたかが総介の方を見る
山咲やまざき桜「……分かっているのでしょう……場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツは人を道具パーツのように扱う……つまり、それは人なんて
使い捨ての駒として見ていることと同じです」
與鷹よたか「……それは……」
 場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツに使われてしまえば、最早、救う手立て無し……
 それは、消滅していないあらゆる存在情報の復元なニライカナイの力を持ってしてもだ……
 いや、場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツが使い手の存在情報を消滅させる……と言った方が正しいのだが……
静寂しじま「キシャアアアア〜〜〜!」
かんな「くっ……」
 均衡を保っていた死合……だが、徐々にかんなが圧されつつあった……
総介「……長引けば、お前が死ぬぞ……」
與鷹よたか「総……」
 だが、與鷹よたかもまた、それを望んでいなかった……静寂しじまを止めるためだとはいえ、殺すことでしか終わらせること
が出来ないなどと……
静寂しじま「キェア!」
 左手で神滅超越者ラグナロクエクセルを握り締め、狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングで引き裂きにかかる静寂しじま
 逃げようとしても、しっかりと神滅超越者ラグナロクエクセルを握り締めているため、引くこと叶わぬかんな……
 そして、オーラソード故に、峰がない神滅超越者ラグナロクエクセルを握り締めれば……たちどころに手に裂傷が出来る
総介(……既に痛みは感じていない……いや、感じていても狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングがそれを遮断している……か)
かんな「くっ……」
 苦渋の選択……かんなは静寂しじまの左手を斬り裂き、距離を置く
茜瑙哭セドナ『迷うなよ……こんなところで折れることなど、我が許さん……』
 茜瑙哭セドナ……浚澄羽帝サラスヴァティー世界が破壊神の一柱……『位』の破壊神……その心、何人たりとも折ること叶わず……
 茜瑙哭セドナはかんなの折れること無きゆるぎなき心に魅かれて力を貸しているのだ……
 だから、今、ここでかんなの心が折れるようなことがあれば、茜瑙哭セドナはかんなを見限る……
静寂しじま「キシャアアアア〜〜!」
 そして、休む暇も無く、静寂しじまが襲いかかる

#4
かんな「……すみません……」
 覚悟を決めたかんな……襲い来る静寂しじま狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングを右腕ごと斬り飛ばす
静寂しじま「ギャッ!?」
 宙を舞う静寂しじまの右腕……そして、切り裂かれた狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングは塵と化し消えゆき……
静寂しじま「あ……あああ……アアアアアア!!」
 正気を取り戻した静寂しじまは両腕の激痛に我を忘れ……そして、そのまま散る……
 落ちる……ではなく、散る……そう、静寂しじま場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツから解放されはしたが、しかし、既に手遅れだっ
たのだ……
 場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツに使われたものはもはや救う手立て無し……先ほど総介が言った通りだ……
総介「……行くぞ、山咲やまざき」
桜「はい……警部……」
 事を見届けた総介は、そのまま桜と共にその場を去る
與鷹よたか「総……」
 冷酷に思われた総介だったが、しかし、その顔は怒りに満ち満ちていた……総介もまた、出来ることならばこん
なことはさせたくなかったのだ……
かんな「……リーダー……帰りましょう……」
與鷹よたか「あ……ああ……」
 かんなの哀しげな眼が……忘れられない……
與鷹よたか(……場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツか……今までなりを潜めていたのが……動き出したってことなのか!?……ならば…
…)
 これからも、このように相手にとどめを刺すことで終わらせることしかできない闘いが続くとでもいうのか……
 やるせない気持ちになる與鷹よたかであった……

 その頃……

*「あ〜〜あ、壊されちゃった……」
 静寂しじまの破壊衝動……そしてその末路……それを見届けるものがいた……
 かんな達の死合を間近で見ていたわけでは無く……遠く離れたカフェテリアの一角にて、狂瓜に破爪無しゴード・ノー・ファングが破壊
されたことを察知し、ぽつりと呟く謎の少女……そして、そんな彼女の後ろの座席にも、謎の少年が座していた
*「遊んでいるからだ……」
 互いに背を向けたまま、話は続く……
*「……そう?……でも、それだけじゃないわよ……」
*「それは……奴らが《キツネザルの使徒》だから……か?」
 謎の少年の言葉に、謎の少女はピクリとする
 キツネザル……それは英語でレムール(Lemur)……そして、それは大陸移動説により、その存在を否定された
レムリア大陸の語源……だが、彼女らが言うレムリアとはレムリア大陸のことではなく、究極のオーパーツCPの事
である。
 ……つまるところ、《キツネザルの使徒》とは究極のオーパーツCP、レムリアを使う人間とその仲間……という
意味である。

#5
*「まぁ、何にせよ……こっちもこっちでやらせてもらうよ……」
*「うん、邪魔はしないでね……」
*「そっちこそ……」
 そして、そのまま謎の少女と謎の少年は立ち上がり、カフェテリアを後にする……
 場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツを知る、この二人……一体何者なのか……


END

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