Eighter -Blindness Wizard-
35ther 〜漏斗(ロウト)と旧人類の手 C〜



#5
福井冬利(ふゆとし)「やはり、既にアントノワールは米軍の手に渡ってしまったのか……」
 しかし、それは誰にも分からない……
*「ま、待ってくださいッ!」
 その時、陸自隊員の一人が声を変えてくる。
*「そこより先は韓国陸軍のエリアだ。あまり近づかない方がいい」
冬利(ふゆとし)「そうか、韓国陸軍もいるのか……」
 韓国と言えば今は絶賛反日ブームの真っ最中である。だから、韓国陸軍のエリアに入り込むこともマズイのだ。
 ズドンッ
一同「な、なんだ!?」
 その時、突如轟音と爆煙が立ち上る。
*「か、韓国陸軍だ!韓国陸軍が攻めてきたぞ!」
冬利(ふゆとし)「何だって!?」
 南スーダンの紛争を治めるために韓国陸軍がここにいる。そして、日本はその支援のためにここに来たはずだっ
た。
 それなのにどうして韓国陸軍が攻めてくるのか!?
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「な、なんだありゃあ!?」
 興味本位で韓国陸軍を見てみた梶太郎(かぢだろう)は、思わず素っ頓狂な声を上げる。
 なぜならば、先頭にいるのはプロテクタースーツで身を固めてゴーグルを装備した、車椅子のようなモノに乗っ
て動く兵士だった。
冬利(ふゆとし)「あ、あれは……そんな、馬鹿なッ!?」
 そんな相手の姿を見て愕然とするのは冬利(ふゆとし)である。
 ふおんっ
 そして、理科の実験で使う漏斗(ロウト)を模したようなドローンみたいなモノが無数に宙を舞う。
梓與鷹(よたか)「おい、まさか、アレがお前の言う新兵器ってやつか!?」
冬利(ふゆとし)「ま、まさか……実験段階だったアントノワールを、韓国は実用段階まで引き上げたっていうのか!?」
 ニヤリと笑みを浮かべる韓国陸軍の漢。彼の名はパク・ルンヤデ。韓国陸軍きってのサイキッカーだ。
※パク・ルンヤデって……盗み癖でもあるんか!?
(かみ)総介「来るぞ!」
 ズドドドドッ
一同「うおおっ!?」
 総介が叫ぶや否や、パクの周りを浮遊していたアントノワールが一行目掛けて襲い掛かってくる。
梶太郎(かぢだろう)「おらぁっ!蒼虎薙(そうこてい)!」
 スカアアッ
梶太郎(かぢだろう)「何ぃ!?」
 薙ぎ払うような拳打を放って迫るアントノワールを弾き飛ばそうとした梶太郎(かぢだろう)だが、まるで意思を持ったかのよ
うな動きで梶太郎(かぢだろう)の拳を回避するアントノワール。
梶太郎(かぢだろう)「おい、どうなってんだ!」
総介「それがサイコミュ兵器だ!」

#6
梶太郎(かぢだろう)「なるほど、これがサイコミュ兵器ってわけか」
與鷹(よたか)(いや、そんなこと言われて納得できるか、普通?!)
*「なるほどなぁ、そこにあったわけか!」
 更にその場に米軍特務部隊も参戦。事態はさらに混迷する。
ユース・N・パワープラント「撃てぇ!」
 ズダダダダダダッ
 ガギギギギギギッ
 ユースの号令で一斉射撃を行う米軍特務部隊。しかし、それをあざ笑うかのようにパクはアントノワールを自在
に操作して銃弾を防ぐ。
ユース「あれがサイコミュ兵器の実力か……面白い」
 これは是が非でも手に入れなければならぬ!アメリカの軍事力は世界一ィイイイイ!!であり続けるために!
※どこのドイツの科学力だよ!
ユース「撃てぇ!」
 ズダダダダダダダダダッ
 ガギギギギギギギギッ
 再び銃撃を行う米軍特務部隊。しかし、先ほどと同じようにアントノワールで弾かれる。
 だが、これは想定通り。狙いは別にあるのだ。そう、銃弾をアントノワールに集中させている隙に別動隊が本人
を攻撃する。
 チュイ〜〜〜ンッ
一同「ン、何ぃ!?」
 しかし、その目論見も脆くも崩れ去った。
 パクが乗った車椅子が突如高速で水平に移動して銃弾を回避したのだ。こんな動きは車椅子には不可能である。
総介「チッ、思った以上に事態は悪い方向に進んでいるみたいだな……」
與鷹(よたか)「それは、どういう?!」
総介「奴がサイコミュ能力で動かせるのはアントノワールだけではないということだ」
冬利(ふゆとし)「そんな馬鹿なッ!」
 だが、しかし、そこまでのサイコミュ能力を持っているのであれば、実験段階だったアントノワールを実用段階
で使用することも可能なのかもしれない。
 などと冬利(ふゆとし)は考えていたが、総介は違う。
総介(おそらく奴には最初からサイコミュ能力があったのだろう)
 しかし、それはサイキックウェポンとして使い物になるものではなかった。だが、奴は今、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の
力を借りてサイコミュ能力を極限まで高めているのだろう。
山咲(やまざき)桜(そして、その代償は自分の肉体……)
総介(だろうな……)

#7
 そもそも車椅子に乗って活動をしなくちゃいけないような人間がいつまでも軍人を続けられるわけもなかろう。
 そして、それは正しい。パク・ルンヤデはつい最近まで普通の軍人だった。しかし、今は車椅子生活を余儀なく
されている。
 それもこれも全ては場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)に関わってしまったからだ。

 そして、そんな一部始終は当然と言うべきか、歴史の墓場から、七罪塔(しちざいとう)は観察しているのだ。
シャイターン「……釣れたのは《キツネザルの使途》だけか……」
ルシュファー「魔術師は釣れず……か……」
 奴らは日本から出てこないつもりなのか……それとも……日本国内でしか七罪塔(しちざいとう)を察知できないのか……
 それとも、別の理由があるのか……だが、、考えたところで答えは出ずだ。
 ちなみに、余談となるが、今回パク・ルンヤデが使っている……いや、正確に言うならば使わされているなのか
……
 ともかく、今回の事件の元凶は電信なる活殺拳(テレフォン・パンチャー)。
 サイキック能力を極限まで高めることが可能だが、その代わりに手足が動かせなくなるという代物だ。
 総介が予測した通りである。


END

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