#5
　五年前、朝比奈愚(あさひなぐ)に接触したのは場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の中位存在泥諏(でぃす)クォヴァであった
　そして、五年後の今、再び彼女に接触したのは、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)の七罪塔(しちざいとう)が《嫉妬(エンヴィー)》レヴィアタン
　その目的とは！？
朝比奈おろ香「なっ、何をしに来たの！？」
レヴィアタン「そんなに怯えなくてもいいのに……」
　そうは言っても、レヴィアから漏れ出す邪悪な気配は彼女にとっては猛毒でしかない。
レヴィアタン「私はただ、貴方を助けに来たのよ」
おろ香「な、何を！？」
　今は別に何か困っていることはない。
※悪夢に魘(うな)されてはいるが、それは自業自得だから助けてほしいというのは烏滸(おこ)がましい。
レヴィアタン「五年前も、貴方は救いを求めた」
おろ香「そ、それはッ！」
　それは核心を突く一言であった。
　五年前も眩いばかりの輝きに包まれた闇……クォヴァに救いを求めてしまった。
　救いを求めた(ゆっくりしていった)結果がごらんの有様だよ。
レヴィアタン「そして、今もまた、貴方は救いを求めている」
おろ香「違うッ！私はッ」
　思わず後退り、顔を両手で覆ってガタガタと震えるおろ香
レヴィアタン「ふぅん」
　ニタリと悪い笑みを浮かべるレヴィア
レヴィアタン「まぁ、いいわ……無理強いはしない。けれど、時間は待ってくれないわ……」
おろ香「な、なにを？！」
　レヴィアの方を振り向くが、しかし、そこには何もいなかった。
　まるで、最初からそこには何もなかったかのように……
レヴィアタン「貴方はいずれ必ず私に救いを求めるわ……」
　レヴィアは既にいないが、彼女の声がした。
おろ香「私はッ……」
　絶対にそんなことはしない……などとは言い切れない弱さが彼女にはあった。

　東京郊外、エンフィールド高校
　そして、翌日……
　エン高での彼女の立ち位置は決定した。
おろ香「どうして……」
　これまではちょっとクラスで浮いている程度だったおろ香だが、今は違う。明らかに悪意の視線がおろ香に突き
刺さる。
　レヴィアは自分を頼らせるために、おろ香の立ち位置を貶めたのだ。
　ソレはマッチポンプとも言う。
※ちなみに、五年前にクォヴァも行った所業と同じだったりする。

#6
　いてもたってもいられなくなり、おろ香は屋上へ追い詰められた
おろ香「誰か、助けてッ！」
レヴィアタン「呼んだ？」
おろ香「ヒィッ！」
レヴィアタン「やっぱり、貴方は私に救いを求めたわね」
おろ香「ち、違うッ……」
　盛大に首を振って否定するが、その姿は弱弱しい。
おろ香「……」
　暫くその場に蹲っていたおろ香だったが、やがて覚悟を決めたのか、諦めたのか、レヴィアに救いを求める。
おろ香「お願い、私を助けて！」
レヴィアタン「ええ、いいわ。貴方の願いは私が聞き届けた」
　かくて、おろ香は闇に飲まれる。

上(かみ)総介「チッ、一足遅かったかッ」
　ようやくエン高に駆け付けたEighterら一行だったが、屋上から天を貫くように走る闇の柱を見て総介は手遅れ
だったことを悟る。
梓與鷹(よたか)「やはり場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)……七罪塔(しちざいとう)が絡んでいるってことか……」
山咲(やまざき)桜「そして、もう一つ壁があるようです」
與鷹(よたか)「ん？」
ドキエル「またお前らかよ……」
ウェステリア「あぁ、てめぇ、喧嘩売ってんのか？！」
　シレントワイザードの魔術師もまた、七罪塔(しちざいとう)を嗅ぎ付けてこの場にやってきたのだろう。
総介「そこをどけ！貴様らにかまっているヒマはないッ！」
ウェステリア「ンだとてめえ、やっぱ、喧嘩売ってんのかッ！」
與鷹(よたか)「いや、どちらかというと、喧嘩を売ってるのはそっち」
ウェステリア「五月蠅ぇッ！ミーコ、我が元に帰れ(ヴォレーゲン)！」
ミーコ「仰せの通りに……」
　與鷹(よたか)の冷静な突っ込みも無視し、ウェステリアが叫ぶ。
　近くにいたミーコは今回も何かしら諦めたかのような表情のままウェステリアを守る鎧と化す
ウェステリア「我らが祖が住みたもうし刃金の魔星、その御力、我が理となりてここに顕現せよ！ストロンティ」
　更に魔形刀(マナヒョンド)を手に召喚呪術でハルバードを作り出すと突き付けて威嚇する。
ドキエル「今回は俺もいいんですかね？」
ウェステリア「あぁ？いいにきまってんだろ！貴様も喧嘩売ってんのか！」
　いや、仲間にも喧嘩腰なのはどうかと……だが、ドキエルは蛙の面に水なのか意気揚々と戦線に参戦する
　こいつ、面の皮厚いな……いや、上司のせいでこうなったのかもしれないけど……
ドキエル「メイ、我が元に帰れ(ヴォレーゲン)！」
メイ「（こくこく）」
　かくて、ドキエルも臨戦態勢を整える。


続