Eighter -Blindness Wizard-
5ther 〜彼女は黄泉へ赴く D〜



#7
 七罪塔(しちざいとう)に新たなる動き。一早くそれを察知したのはシレントワイザードだった。
 遅れながらEighterも動き出したのだが、早速一行の前にシレントワイザードの魔術師が立ちふさがる
白拍子かなり「さ、ここは愚妹に任せて私たちは先へ進むわよ!」
白拍子かれん「ちょっと!」
フキエル「通さんと言ったはずだ!」
 かなりに文句を垂れるかれん。
 そして、誰一人として通すまいとフキエルが水の剣を構えて襲い掛かるが、かれんが予兆共鳴者(オーメンレゾナンス)でそれを止める
かれん「あ〜〜もう、先に行ってなさいよ!」
 かなりに逆らうと後が怖いので仕方がない。かれんは半ば諦めて死合に挑む。

 ともかく、フキエルをかれんに任せて残りのメンバーは学校の中へ足を運ぶ。
梓與鷹(よたか)「なぁ、総……」
(かみ)総介「何だよ?」
與鷹(よたか)「普通、部外者である俺達やあいつらが学校という場所に勝手に入り込んだら問題になるよな?」
総介「フッ、何を当然なことを言っている?」
 まぁ、総介は警察なので、警察手帳という切り札がありますが……
 いや、そんなことはどうでもいい。與鷹(よたか)が言いたいのは『問題になる』はずなのに『静かすぎる』ということな
のだ。
山咲(やまざき)桜「それはこの中を見ればわかるのではないでしょうか?」
與鷹(よたか)「んん?」
 桜が何気なく1-Cってプレートのついた教室を指差す。
 與鷹(よたか)がドアにはめ込まれた硝子から教室の中を覗くと、そこには……机の上に突っ伏す生徒全員の姿があった。
 それだけではない、教師もまた教壇でぶっ倒れている。
與鷹(よたか)「これは!?」
白拍子かんな「……だめです……」
 悲痛な顔でふるふると首を振るかんな
かなり「もう全員死んでいるわね」
與鷹(よたか)「何だって!?」
総介「警備員や教師がやってきて騒ぎにならないのは全てこのせいだ」
與鷹(よたか)「まさか学校全体が!?」
桜「そう考えるのが妥当でしょうね……」
 そして、全ては七罪塔(しちざいとう)の仕業である。
かなり「と、言うわけで屋上へ急ぐわよ!」
與鷹(よたか)「何で……って、まさか?!」
 もはや生きている人間は屋上にしかいない……そういう意味だ!
 一行が急いで屋上へ駆けつけると、そこには既に少女を傍に携えた魔術師が一人と、結彷徨(おちなし)中学の制服を着る女
子生徒が一人。
桜「あの子は、弑野阿朱子(しいの・あしゅこ)……いえ、違いますね……」
エランドラ「ほほぉう、ここまでやってくるとはアンタらも酔狂だなぁ!」
 彼女と対峙しているエランドラが見向きもせずに叫ぶ
総介「それが俺たちの仕事なんでな……」
與鷹(よたか)「目の前の彼女がイジメにあっていた弑野阿朱子(しいの・あしゅこ)じゃないってのなら……」
 一体何なのか?
※いや、答えは一つしかない

#8
エランドラ「我らがシレントワイザードの大願のためだ、邪魔しないでもらおうか」
総介「そういうわけにもいかん」
 貴様ら如きに場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)が、域外神(アウターゴッド)が利用できるわけがない!
弑野阿朱子(しいの・あしゅこ)「少し遅い到着だね……《キツネザルの使徒》……」
 総介とエランドラが一触即発の中、口を開くのは阿朱子(あしゅこ)與鷹(よたか)「やはり、お前は七罪塔(しちざいとう)……」
阿朱子(あしゅこ)「そうだよ。僕は七罪塔(しちざいとう)のゴールだ。今はこの人間(パーツ)を使っているところさ……」
 今回の件、アスモが適任だったのに……いないんじゃあしょうがないよね……とため息を一つ。
かんな「どうして、こんなことを……」
 こんなこととは全校生徒皆殺しのことだ。
阿朱子(あしゅこ)「どうして……か……彼女がそう願ったからかな……」
総介「巫山戯(ふざけ)るな!」
 彼女は自分をいじめていた奴らと、それを傍観してくすくす笑っていた連中全員に死の鉄槌を望んだ……だから
僕はそうしてあげたんだ……と悪びれずにゴールは言う。
かなり「オ〜〜〜ッホッホッホッホッホ、そんな嘘に騙されるほど私たちは馬鹿じゃないわよ」
阿朱子(あしゅこ)「何?」
かなり「復讐大いに結構……でもね、全校生徒皆殺しなんて彼女が望んだことではないわ」
阿朱子(あしゅこ)「なぜそんなことが言える?」
かなり「私の勘よ!」
 そんな無茶苦茶な……
 だが、しかし、かなりはかんな以上の超運の持ち主ならば、それは間違いではないのだろう。
かなり「半分くらいはアナタが私腹を肥やすため……」
 文字通りの意味で私腹を肥やす……
阿朱子(あしゅこ)「チッ、やはり、《キツネザルの使徒》は厄介な連中ばかりだ……」
 ここいらで潰すか……などとゴールが考えていると、突如エランドラが怒りだす
エランドラ「おい、てめぇら、俺を無視して勝手に話を進めていやがる!」
総介「貴様も、とっとと去れ!」
エランドラ「何だと!?」
 だが、総介は今、この場に置いて言えば足手まといでしかない。
 以前、ネサリウスがラキエルと共にやって来た際、総介は無力化されてしまった様に今回もまたそれは同じと言
える。
かなり「はい、かんなはあっち!」
 ぎゅるるんと真殺影刃(しんさつえいじん)を大鎌の形にして臨戦態勢を取ったかなりはかんなにゴールとの死合を指示する。
かんな「……」
 言われずとも、かんなはゴールと死合うつもりだった。無言で神滅超越者(ラグナロクエクセル)を構えるかんな
エランドラ「させるか!あいつは俺の獲物だ!」
かなり「いいえ、アンタの相手はこの私よ!」
 エランドラの前に立ちふさがるかなり。
エランドラ「チッ……」
 ならば、推し通るまでだ!

#9
阿朱子(あしゅこ)「……盲いた蘭学(ブラインド・ダッチ)!」
 ゴールも自分専用の武器を手に取るとかんなを睨み付ける。
阿朱子(あしゅこ)「来なよ、《キツネザルの使徒》……」
 くいくいと手招きするゴール。
 明らかに挑発だ。
 通常ならば、挑発に乗らないのが得策だが、かんなはあえて乗ってみる。
かんな「はあ!」
 一気に間合いを侵食すると、上段から神滅超越者(ラグナロクエクセル)を一気に振り下ろす
 ふおんっ
一同「なっ、消えた!?」
 一刀両断!真っ向唐竹割り!勝負は一瞬でつく……わけもない。
 脳天から一直線に両断された……かに思えたが、しかし、それは残像だった。
阿朱子(あしゅこ)「遅いよ……」
かんな「……速い……」
阿朱子(あしゅこ)「スピードには自信があるんでね」
 ニヤリと悪い笑みを浮かべるゴール
與鷹(よたか)「な、なんてスピードだ……」
 唖然とする與鷹(よたか)
與鷹(よたか)「なんというか、《怠惰(スロウス)》なんで遅いのかと思ってしまった……」
桜「スロウス(sloth)とは別にスロウ(slow)の複数形ではありませんが……」
與鷹(よたか)「……」
 いや、それは分かってるけんだけど……
 こう、思い込みというものがありましてですね……


END

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