Eighter -Bizarre Investigate-
51ster 〜鮮闘(せんとう)・築地VS豊洲 A〜



#0
 築地……それはかつて日本の海鮮産業を支えた台所のような場所であった。しかし、老朽化などが進み新たなる
拠点として豊洲がその名を挙げた。
 今は築地と豊洲は有効な関係(と、言うか不可侵条約)を結んでいるが、当初は荒れに荒れた。
 これはそんな当時の、築地と豊洲の海鮮市場の覇権をかけた争いに関する事件簿である

#1
 コトの起こりは築地市場を豊洲へ移転する計画が本格的に始動し始めた直後に起こった。
 築地市場にあった老舗のラーメン屋、蝕道(しょくどう)をはじめとする店舗7棟、935平方メートルが焼けた。
 東京消防庁の消防車など63台が消火活動にあたり、約8時間後にほぼ消し止められた。
 だが、しかし、この火災、出火の原因が(よう)として不明のままだったのだ。
 東京、某所、関東厨師連合本部
 いわゆる関厨連と言われる関東の市場を支える大御所に、警察と一緒に数人の漢が殴り込んできた
※いや『関厨連』って中華一番かよ……
*「これは明らかに奴らの陰謀だ!」
 ダンと机に拳を叩きつけて叫ぶ男性は、築地市場の若きエース、浜離宮蔵摩(ぞうま)だ。
*「しかし、具体的な証拠は一切ありませんな……」
浜離宮蔵摩(ぞうま)「ッたりめぇよ、奴らがそんな証拠を残すヘマをやらかすわけがねぇ!」
*「では、訴えるには不十分かと……」
蔵摩(ぞうま)「ぐっ……」
 このままでは築地の不始末として恥をかくことになる。
 しかし、それだけは避けたい築地の料理人であった。
 今や関厨連としてもこの問題に頭を抱えている。
 豊洲派と築地派の激しい派閥争いにだ。
 これまでは互いに互いの市場を貶める噂を流す程度の嫌がらせで済んでいたのだが、ここにきて遂に実力行使に
走ったのだろう。
*「このまま豊洲の連中をのさばらせておいていいんですか?」
*「だが……」
蔵摩(ぞうま)「アンタらが動かないんだったらこっちにも考えがある!」
警官「ま、待ってください!」
 怒り腰の蔵摩(ぞうま)を宥めにかかるのは、付き添いの警官の一人だ。
警官(ここでこんな啖呵を切って、豊洲で火災でも発生したら、この場での発言が犯行声明とみなされてしまいま
すよ……)
蔵摩(ぞうま)(ぐっ……それは、確かに……)
 この場での軽挙妄動は豊洲派に付け入る隙を与えてしまう……と蔵摩(ぞうま)は歯噛みしながら一旦席に座るのであった

#2
*「お前たちの言うことも最もであろう……」
蔵摩(ぞうま)「だったら……」
*「しかし、これは高度に政治が絡む問題である……」
 既に豊洲移転に向けて莫大な金が動いている今、おいそれと中止にできないというのも大きな理由の一つだ
*「このままいがみ合って嫌がらせ行為を続けても誰に何の得もあるまい」
*「そこでだ、築地と豊洲……どちらが優れているか料理勝負で決着を付けるというのはどうだろう?」
蔵摩(ぞうま)「料理勝負だと!?」
*「面白ぇ!豊洲のガキどもが俺たち築地の料理人に勝てると思うなよ!」
蔵摩(ぞうま)「ちょ、ちょっと待ってください……我々築地はその勝負、了承しましょう……ですが、豊洲は、豊洲はこの
勝負、受け入れるんでしょうか?」
 た、確かに……ここでイキナリ一方的に勝負を持ちかけても、相手が応じてくれないことには話は始まらない…
…
*「何、心配はいらん」
 と、その時、どこからともなく声が聞こえる
一同「なっ、誰だ!?」
 すると、ウィ〜〜ンと天井からモニターが下りてくる。
 そのモニターには豊洲派の重鎮(とはいえ若造)、アバンドック・ラ・ラポートの姿が映し出されていた。
一同「貴様はっ!」
アバンドック・ラ・ラポート「その料理勝負、豊洲としても乗った!」
蔵摩(ぞうま)「なっ、聞いていたのか!?」
アバンドック「フッ、我々豊洲は最新鋭のテクノロジーを駆使して情報を仕入れるプロである。ノコノコ直談判に
行くような古臭いジジィ連中とはワケが違うんだよ!」
*「な、なんだとぉ!?」
 Web会議、在宅勤務(テレワーク)、これからの時代に必要なものは電子化だと豪語する豊洲派。
アバンドック「我らの究極の目的は、食材の電子化!……食材を電子化することに成功して、初めて我らはこの業
界のトップに躍り出られる!」
※いや、それ絶対に不可能な奴。ってか、電子化しちゃアカン奴や!
蔵摩(ぞうま)巫山戯(ふざけ)るなよ!食材にデジタル化など言語道断!」
*「そうだ!どれだけ時代が進歩しようと、食材だけはアナログのままであることが人類が人類であるために必要
不可欠ッ!」
※こっちもこっちでスケールでけぇな……
*「では、料理勝負で雌雄を決するということに異論はないのだな?」
一同「異議なしッ!」
 こうして、築地 VS 豊洲……互いの維持をかけた一大料理イベントが開催されることとなったのだった


続

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