#3
　突如、吐き気とともに倒れ、保健室、病院へ運ばれた少女……彼女は妊娠していたのだが……そのお相手はなん
と！自分自身だった！？
　ちなみに、余談だが月経が続く限り、一生妊娠し続ける可能性がある……ということに気が付くのは暫く経って
からであった……
　そんな頃……
　富山県、富山県警
上(かみ)総介「……」
山咲(やまざき)桜「警部……電話です……天四斗(あまよと)大学付属木彡谷(きさたに)キャンパスの……」
総介「……フン……」
　自分に電話をよこす奴など限られている……総介はすぐさま電話に……は出ず、桜を引き連れ富山県警を後にす
るのであった。
総介「……やれやれ……厄介なことになったものだ……」
　頭を掻きつつ、天を仰ぐ総介……彼は一体、何を知っている……いや、何を察知したのか……

　天四斗(あまよと)、天四斗(あまよと)大学付属木彡谷(きさたに)キャンパス
＊「おお、これはこれは総介さん、お待ちしておりました」
総介「……まずは話を……それからだ……教授……」
＊「はい……先日、急な吐き気を催した女子生徒が運ばれまして……検査の結果、妊娠していることが判明しまし
た……」
　教授と呼ばれた漢……尾住砲遣(おずま・ほうけん)が告げる。
　この尾住砲遣(おずま・ほうけん)なる人物、総介の数少ない友人……のようなモノである。
※友人のようなモノって……数少ないって……
桜「それが四月一日(わたぬき)まりあ……というわけですね」
尾住砲遣(おずま・ほうけん)「流石……既にご存じで……」
総介「フン、教授、前置きはいい……」
　たかが小娘一人妊娠し程度で教授とあろうお方が総介を呼ぶわけがない。
　なかなかに酷い言い草であるが、総介もまた忙しい身なのでいちいち些事に関わっていられないという事だ。
砲遣(ほうけん)「そうでしたな……」
　本題に入りましょう。
　と、いうわけで教授が総介をここへ呼んだそのワケを語る。
砲遣(ほうけん)「検査の結果とんでもないことが発覚したのです！」
　それは……
桜「まりあは無性生殖で自分のクローンを妊娠した……ってことですね」
一同「……」
　教授がソレを言うのかと思いきや、何故か桜が告げる。
　と、言うか、桜はどうやって情報を会得したのか！？……それは謎に包まれております。
※でもって、今回の話とはあまり関係がないので割愛します。
　さて、話を戻そう。
　人間が無性生殖で自分のクローンを妊娠するなどと、通常ではありえないというか、まず不可能というか、ソレ
が出来たら最早人間じゃないというかなんというか……
父親は当然、そのことを知らない……ならば、いつ、こうなってしまったのか……疑問が付きない様子だったとい
う。

#4
砲遣(ほうけん)「……さて、結論から言いましょう……ズバリ、彼女もまたクローン」
総介「フン、だろうな……」
　教授が衝撃の事実を告げるも、総介は既にそれを予知していた。
　では、まりあは一体誰のクローンなのか……それは彼女の母親の……である。
砲遣(ほうけん)「まりあの母……今は亡き彼女の名はあんなというんですがね、彼女は不妊に悩んでいたそうで……」
　そして、ある時、不妊を治せる画期的な治療法を知るという謎の医者に出会ったのだという。
総介「それが自分のクローンを作るなんて巫山戯(ふざけ)た芸当だったというわけだ……」
砲遣(ほうけん)「それだけではない！」
　彼女の治療にはあるモノが使われた。そのあるモノとはオーパーツ！
　……そのオーパーツの名前は『我らに秘伝を問え(アスク・レシピ・アス)』……
桜「まるで医学の神、アスクレピオスみたいな名前ですね」
　アスクレピオスと言えば、ギリシャ神話の神……名医であり、死者をも黄泉帰らせたたその腕は正しく神の腕…
…かつて世間をにぎわせた13番目の星座、へびつかい座としても有名である。
砲遣(ほうけん)「それでだな、少〜〜しばかり困ったことになったのよ」
総介「まさか！？」
桜「……彼女……まりあは……その子供を産むと言うのですね？」
砲遣(ほうけん)「あぁ」
　彼女は自分の子供が自分のクローンであるということを知らない……しかし、例え知ったとしても、堕胎はしな
いだろう……それが彼女の生きる道。
※ちなみに、父親である基督(きとく)は娘が母と瓜二つ……良く似ている……などと思って過ごしていたがクローンなので
　それはまぁ、当然である……
　こうして……彼女は処女で懐妊し、出産した……娘の名前は『いえす』……であるという……
　まりあの母、あんなから始まったこのクローンは……奇しくもキリストの家系をなぞらえるような形で進むこと
となったのである
※聖母マリアの母親はアンナ。そして、マリアの息子は言うまでもなく、イエス・キリストである。
　そのせいか、彼女は平成の聖母などと呼ばれ、一部の人間からは崇められることとなったらしい。

　天四斗(あまよと)、天四斗(あまよと)西部中学
生徒「……しっかし、アレだな……処女で懐妊……ってよくよく考えるとありえない話ではないよな」
生徒「何ぃ！？」
生徒「つまり……だな……その……行為を行わずに危険な日に……わ、分かるだろ！？」
　頬を赧めながら言い出す生徒……
一同「……」
※何を考えているんだ！？こいつらは……
　……ちなみに、出産時、総介らは教授を立ち会わせ、密かにオーパーツを使い、まりあといえすのクローン精製
機構を解除したのだが……その元凶、我らに秘伝を問え(アスク・レシピ・アス)が現在どこで誰が所持しているのかについては……終ぞ分
からなかった……


END