Eighter -Verdant Nightmare-
2nder 〜暗闇を封じる護符 A〜



#0
 世界は破滅へと向かっている。
 しかし、それを知るものはいないと言っても過言ではない。
 と、いうことはさておいて、今回はとあるお守りに関する物語
※いや、何が『と、いうことはさておいて』やねん

#1
 神奈川県某所
*「うあああっ!?……ハァッ……ハァ……」
 悪夢に魘されて目を覚ます一人暮らしの少年、久我原真優(まひろ)。
 彼は最近、夢の中で闇に襲われるなどという訳の分からない事象に遭遇し、漠然とした不安を抱えていた。
久我原真優(まひろ)「なんなんだ、一体!」
 しかも、こんなこと、人に言えば頭がおかしいと言われて終わりだ。だから、彼は誰にも相談できずにいた。
 ある時、悪夢に魘されるのならば、単純に寝なければいいとも考えたのだが、人間は寝ずに生きられる存在では
ない。そんなことは不可能だった。
 おかげで今日も寝不足。ふらふらした足取りで家を出て学校へ向かう途中、彼は何か柔らかいモノにぶつかる。
 ぼうんっ
真優(まひろ)「んがっ!?」
メイド「君、大丈夫?」
真優(まひろ)「はい、大丈、夫ぅ!?」
 目の前にいたのは最近雇った(わけでは断じてないのだが)怪しい褐色のメイドさんがいた。ToVの主人公でな
くとも思わず怪しいと呟きたくなる存在だった。
※いや、それユーリ違いだから!残念!
 なんでここにメイドが!?と思わず思考停止してしまう真優(まひろ)。まさか、これは夢か!?とか思っていると、彼女
は真優(まひろ)の手を取り優しく微笑みかける。
メイド「夢ではありませんよ?」
真優(まひろ)「うわあああっ!」
 あまりにも非日常すぎて、一気に目が覚めた彼はその場を走って去っていく。しかも学校とは正反対の方向へ…
…
 おかげで遅刻決定である。
メイド「……見つけた……」
 なお、彼が去ったのち、そのメイドさんは邪悪な笑みを浮かべていたが、それを見たものはいなかった。
メイド「アレ最後の鍵……こちらは一足お先に見つけましたよ。そちらはどうですか?」
 誰にも聞こえないような小さな声で、そんなことを呟くと、その悪目立ちしすぎる怪しいメイドさんは雑踏の中
に消えていった。
 そう、比喩でも何でもなく、文字通り消えていった。だから、メイドさんが出現したことで大騒ぎになることは
なかった。
※寧ろ、人が一人消えたらそれはそれで大騒ぎになるんじゃねぇか?

#2
 一方その頃、総介も桜を率いて神奈川へやってきていた。
(かみ)総介「アイツか……」
 謎の協力者、レース・アルカーナから得た情報、その情報に基づき総介は久我原真優(まひろ)を探していた。
山咲(やまざき)桜「では、行きましょう」
真優(まひろ)「はぁはぁ……思わず逃げてしまったが、学校とは正反対!これじゃあ遅刻確定じゃねぇか!」
 別の意味でもハァハァしているのだが、まぁ、それは置いておこう。
桜「少し、いいですか?」
真優(まひろ)「今度はなんだってんだ?」
総介「貴様が久我原真優(まひろ)だな」
真優(まひろ)「アンタは誰だよ?」
総介「上総介、SRAPだ!」
真優(まひろ)「す、すらっぷぅ!?」
桜「端的に言うと警察です」
真優(まひろ)「なっ、それでも俺はやってない!」
 特に疚しいことはないのだが、咄嗟にそんなことを叫んでしまう真優(まひろ)であった。
総介「貴様が悪夢を見るのは貴様が持つそのお守りのせいだ!」
真優(まひろ)「なっ、何をいきなり!?」
 だが、そう宣言されて腑に落ちることがあった。確かに、このお守りがあるせいで……いや、正確にはこのお守
りがある日突然熱を帯び、それがトリガーで悪夢に魘されるようになった。
真優(まひろ)「し、しかし、このお守りは……」
 今は亡き両親から貰った形見のお守り。
総介「このままお守りを所持し続ければ、貴様はいずれ死ぬ!」
 ビクッ
 総介の言葉に、真優(まひろ)は思わずお守りを差し出した。そして、そのまま逃げるように去っていった。
総介「行くぞ、山咲(やまざき)!」
桜「はい。警部」
 お守りを手に入れた総介は萬聖院(ばんしょういん)家へと足を運ぶ。

 一方、総介から逃げた真優(まひろ)は、来た道を戻って逃げていった。それは、つまり、どういうことかと言うと……
 ぼうんっ
真優(まひろ)「んぐ!?」
メイド「あら、またお会いしましたね」
真優(まひろ)「まっ、また出たぁ!?」
 再び怪しい褐色のメイドさんと遭遇するという意味である。
メイド「……貴様ッ!」
 しかし、次の瞬間、その褐色の怪しいメイドさんは真優(まひろ)の襟首を掴んで持ち上げる。とても女とは思えない怪力、
であり、やはり怪しい!怪しすぎる!
メイド「貴様!アレをどこへやった!?」
真優(まひろ)「あ、あれってなんだよ!?」
 怒りに満ち満ちた表情で問い詰めてくるメイドさん。


続

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