Eighter -Scarlet Nocturne-
51ster 〜降真靈(こうしんりょう)は辛くない A〜



#0
 ヴァルカナ争奪戦を裏で操る秘密結社、《ザ・テンペスト》は壊滅した。(厳密には壊滅したわけではないのだ
けれど……)
 これにより、ヴァルカナ争奪戦は終局へと向かうこととなる。
 だが、それは何もしなければの話ではない。ヴァルカナ争奪戦を終局に導くには誰かがソレを進行しなければな
らないのだ。

#1
 天四斗(あまよと)、Eighter本部。
 嵐ヶ丘の決戦を終え、出音(でおん)は燃え尽き症候群のようになっていた。……いや、違うな、幽闘術を使いすぎて後遺
症に苦しんでいるというのが正しいのかもしれない。
 そして、セイはセイでソリスを追うべく一人旅立ってしまった。
 だが、Eighter・有嗎幇(ユーマハン)の連合はまだ続いている。
新田姜馬(きょうま)「それで、どうするんだ?」
 嵐ヶ丘で入手した四つのヴァルカナを手にする総介に対して、姜馬(きょうま)が問いかける。
(かみ)総介「分かり切ったことを聞くんだな……」
姜馬(きょうま)「こればっかりは、性分でな……」
古畑呂司(りょうじ)「え?どういう?」
 何もわかっていないのは呂司(りょうじ)だけかもしれない。
梶太郎(かぢだろう)も同類と思います。與鷹(よたか)「《ザ・テンペスト》は当分活動できそうにない。だから、ヴァルカナ争奪戦は終わった……ってわけでも
ないんだよな」
総介「当然だ」
 まだ所在を把握できていないヴァルカナがある以上、ヴァルカナ争奪戦はまだ終わらない。
 寧ろ、《ザ・テンペスト》が管理してないヴァルカナが世に出回るので、一層厄介なことになるかもしれない。
総介「だが、ここより先は俺たちがヴァルカナ争奪戦を仕切る」
一同「えぇ!?」
 総介のとんでもない発言に一同びっくり仰天。
姜馬(きょうま)「それは《ザ・テンペスト》がやってきたようなことを俺たちが代わりにやるということか?」
総介「まぁ、正しくもあり間違いでもあるな……」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「どういうことだよ?」
山咲桜「では、簡単に説明しましょう」
 シレっと参上する桜。気配もなく登場するのは心臓に悪いのでやめてほしいものだ。
桜「現在、ヴァルカナを狙う組織は私たちを除いて三つあります。これまでは《ザ・テンペスト》が無差別にヴァ
ルカナを出現させていましたが、今度は私たちが任意に好きな場所でヴァルカナ争奪戦を行えるというわけです」

#2
総介「そして、俺たちがまず狙うのが大神の降真靈(こうしんりょう)だ!」
一同「大神の降真靈(こうしんりょう)?」
 シュタッ
包英清堅(つつみひで・きよかた)「そういうことならば、俺も強直させてもらおう」
一同「うおっ、びっくりした……」
 突如出現するは送魔(オクタマ)の棟梁にして《病魔(イル)》のヴァルカナリアクター。現在は有嗎幇(ユーマハン)の拠点に身を寄せている清堅(きよかた)
である。
與鷹(よたか)「総、大神の降真靈(こうしんりょう)を狙うのは分かった。しかし、奴らの拠点がどこにあるのか分かっているのか?」
清堅(きよかた)「フッ、その点において抜かりはない。我ら送魔(オクタマ)はもともと諜報活動が得意」
與鷹(よたか)「あ〜……」
※かんなの超運を使えば一発ですけど、それでは面白くないからね。(そもそも第六部でヒロインたるかんなが殆
 ど登場しないのは何故なんでしょうか?)
清堅(きよかた)「大神の降真靈(こうしんりょう)というのは蘆屋道満を崇拝する陰陽師が作り上げた秘密結社である。故に場所を特定するのに
も蘆屋道満に所縁のある場所を探せばいい」
一同「なるほど……」
 一理ある。
清堅(きよかた)「と、言うのは建前で実際にはコッソリと陣野影路(かげみち)に発信機を付けていたので分かったんですけどね」
一同「をい……」
 諜報活動はお手の物ってのはどこへ行ったんだ?と一同が盛大に突っ込んだ瞬間であった。
 さておき、奴らの拠点は兵庫県にある。と清堅(きよかた)は叫び、一行は兵庫県へと飛ぶのであった。

 兵庫県某所、嘉曦渋寺(かぎじゅうじ)
 その日、寺では何やらバタバタと慌ただしい動きが目立った。
陀疎(だうと)「これは、一体……?」
 何事ですか?と問うと、韻麗(いんれ)がやってきて告げる
韻麗(いんれ)「そうだったな、お前はまだ入って浅いから分からないかもしれないが……」
慈円(じえん)「あのお方がやってくるのですよ」
陀疎(だうと)「あの、お方?!」
 それは一体だれか?と首をかしげる陀疎(だうと)。
 組織のNo.2である反永(たんえい)がやってくる場合でもここまで慌ただしくはない。
陀疎(だうと)(と、なれば……ま、まさか!?)
 反永(たんえい)よりも上の存在が、やってくる!?
 だが、よく考えると、大神の降真靈(こうしんりょう)に入って間もない陀疎(だうと)は組織のトップがどんな人なのかをまだ知らなかった
陀疎(だうと)「その……あのお方とは?」
 だから、ここで陀疎(だうと)が組織のトップがどんな人物なのかを聞くのは当然であった。


続

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