Eighter -Scarlet Nocturne-
25ther 〜この世全ての姉様(アンリ・シス) A〜



#0
 韓国海軍のパク・リチャウからの逆恨みにも似た果たし状。
 バイラヴァ兄弟、イスマイル兄弟まで雇って苦戦を強いられたこの死合は、突如颯爽と現れた傭兵のおかげで簡
単に決着がついた。
 しかし、まだ、全てが終わったというわけではなかったのだ……

#1
セイ・ニングライト「……」
 ユーサーは去った。ならば、もはやこの場に用はない。颯爽と立ち去ろうとした矢先、出音(でおん)がそれを止める
出音(でおん)・グロウシュベル「おい、アンタ、ちょっと待てよ」
セイ「……あぁ?なんだ?」
 ギロリと睨まれて思わず一歩後退りそうになる出音(でおん)。しかし、ここで躊躇っていては《ザ・テンペスト》に勝て
るわけがない。
出音(でおん)「アンタも《ザ・テンペスト》に恨みを持っているのか?」
セイ「だったらなんだ?」
出音(でおん)「俺も同じ……奴に姉さんを殺された」
セイ「だから?」
 志が同じならば共闘できる。そうだろう?と出音(でおん)は言うが、しかし、セイはそれを一喝する。
セイ「ハッ!貴様は馬鹿か!共闘だと……寝言は寝て言え!そういう奴は復讐を果たせず途中で死ぬんだよ」
梓與鷹(よたか)「し、辛辣すぎる……」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「まぁ、復讐はチーム組んで仲良しこよしでやるようなモンじゃねぇからな……」
 それは、もはや復讐ではなく、復習ですね(いや、本当か、それ?)
 さておき、確かに同じ相手に恨みを持つ二人が復讐をしようとしたら、どちらかは志半ばで朽ち果てる……みた
いな展開はよくある……のかもしれない。
※本当か?中にはガン〇ソードみたいに二人とも復讐を果たせたパターンもあるよ……多分
セイ「そんなんだと、死んだ姉も浮かばれないだようよ」
出音(でおん)「貴様ぁッ!」
 ぽつりと呟いたセイの一言に、出音(でおん)はキれた。
出音(でおん)「貴様にッ、!貴様に姉さんの何がわかるッ!」
與鷹(よたか)「あ、おい、ちょっと待てって……」
 與鷹(よたか)が止めるのも無視して、怒りに任せてセイに飛び掛かる出音(でおん)。
セイ「フン……流揣轉(るしてん)出音(でおん)「あッねぇッ」
 しかし、セイは慌てず騒がず出音(でおん)の斬撃を完全回避して痛烈なカウンターを叩き込む。
 ちなみに、峰打ちなのはセイの最大限の優しさである。
※断末魔(?)まで『姉』って……流石は訓練されたシスコンですね(誉め言葉)

#2
出音(でおん)「ぐっ」
 ガルシテラヴを杖代わりになんとか立ち上がる
セイ「……まだやるというのか?」
 根性だけはあるようだな……と少しばかり驚きを隠せずにいるセイであった。
出音(でおん)「当然……姉さんのことを馬鹿にされたままで終われるかよ!」
與鷹(よたか)「お、おい。気持ちは分かるが……」
 戦力差は絶望的……あまりにも無謀……だとしてもッ!負けられない戦いがここにある。故に出音(でおん)は立ち上がる
セイ「無駄なことを……」
出音(でおん)「無駄かどうかは、貴様が決めることではないッ!」
 既にふらつきながらも、ただ、亡き姉への想い、それだけを糧に!
出音(でおん)「うおおおおッ!陽明閃刃破(ようめいせんじんは)!」
セイ「流揣轉(るしてん)」
 ズドッ
 目にも止まらぬ速さでガルシテラヴを煌めかせ、セイ目掛けてX字に斬りかかる。
 しかし、あらゆる攻撃を回避してカウンターを叩き込む流揣轉の前では全てが無意味。徒労。
與鷹(よたか)(……双狼拳の使い手だからこそ、分かる。あの技を破るのはほぼ不可能だと……)
 それこそ、永遠に攻撃を繰り出すが、回避無視の技を繰り出すか、いずれにせよ物理法則を無視した攻撃でもな
い限りアレを破るのは無理だ。
※ってか、無茶苦茶チートな技だな……

與鷹(よたか)「もう、止せ!」
 見ていられない。たまらず声を張り上げる與鷹(よたか)出音(でおん)「まだだッ!まだッ!」
セイ「気合だけは認めるが……実力の差を認められない愚か者は死ぬだけだ」
 ズドンッ
 横薙ぎ一閃。体力も気力も限界……いや、もはや限界をとっくに超えていた出音(でおん)にそれを回避する術はなく、直
撃を受けて派手に吹き飛ばされる出音(でおん)
出音(でおん)「ガッ?!」
 かくて、勝負にもならないこの死合は幕を閉じた。
出音(でおん)(姉さん……俺に、力を……)
 その時、走馬灯のように姉との思い出が頭を過ぎる。
 例えば、それは浴衣を来た姉と巡り歩いた夏祭りの夜……姉がいた夏は遠い記憶の彼方、空に消えてった打ち上
げ花火
※いや、なんかの歌詞じゃないんだから……
 しかし、次の瞬間、その映像がパリンと砕けて消える。
出音(でおん)「アアアアアアアッ!」
一同「なん……だ!?」
 そして、死に体だった出音(でおん)が再び立ち上がる。
セイ「何度やっても無駄……」
 出音(でおん)、マジで死ぬつもりか!?


続

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