Eighter -Noble Gathering-
34ther 〜憤る紅き災厄の章 C〜



#5
元人の実家の蔵の地下に封印されし災厄、ザイフリート……それは交喙いすかの父を死に至らしめた仇敵であった……
かくて、交喙いすかは父の仇を討つべく立ち上がる。
*「お前が来るのを待っていた」
元人交喙いすか「何だ?」
突如どこからともなく声が聞こえる。
しかし、辺りを見渡しても、声の主は見当たらない
*「何処を見ている……私はここだ」
交喙いすか「へ?」
……そう、地面に突き刺さった杭が喋っていたのだ……
いや、正確には、杭の背後にある何かが……
交喙いすか「何だ?お前は……」
*「私のことなど今はよかろう……それよりも、この杭を取れ……金匙玉楊きんしぎょくようを」
交喙いすか金匙玉楊きんしぎょくよう?」
ともかく、地面からその杭を引っこ抜く交喙いすか。
それは、杭ではなく、オール……
なるほど、見方によってはそれは匙……だから金匙玉楊きんしぎょくようか……
交喙いすか(こいつは……)
神器・黎t劫棍れいきょうごうこんを手にした際もその神々しさを感じ取ることが出来たが……この金匙玉楊きんしぎょくよう
もまた、同じように力を感じることが出来る
交喙いすか(行ける……こいつならば、ザイフリートを斃せる!)
*「往け……」
交喙いすか「言われなくともだ!」
そして、交喙いすかはその場から走り去る。

一方……

梓與鷹よたか「……交喙いすかの奴、本当にどこへ?」
白拍子かんな「リーダー、彼なら既に戻ってきていますよ」
與鷹よたか「何?」
振り向くと、そこには交喙いすかの姿が
與鷹よたか「お前、どこへ?」
交喙いすか「へ?何処って……お前たちこそ……」
與鷹よたか「……ってか、交喙いすか、お前、それは……」
突如交喙いすかが再び現れたことにも驚きを隠せないが、交喙いすかが櫂を持っていることにも驚きを隠せない與鷹よたか
交喙いすか「なんだか知らんが……呼ばれた……?いや、託された……」
與鷹よたか「……」
なんでもいいや……ともかく、総介のところへ戻るぞ……と與鷹よたか。
かくて、3人は総介とザイフリートが死合っている場所へと戻る
かみ総介「フン、そろそろか……」
ザイフリート「フッ……どうやらそろそろ死ぬ覚悟が出来たか……ならば死ね!」
ズドンッ
上段から一気に黎t劫棍れいきょうごうこんを打ち下ろすザイフリート……しかし、それを予見していた総介はいとも簡単に回避
してみせる
ザイフリート「貴様……どこまで我を愚弄する……」
総介「時間は稼いでやったぞ……」
そのまま総介は引き下がる
交喙いすか「え?」
全ては、交喙いすかが新たな武器を手にして帰ってくるまでの時間稼ぎ……
真理の断片の見せる未来故に、総介はザイフリートと死合っていたのだ。
ぽかんとする交喙いすかを余所に総介は呟く
総介「父親の仇なんだろ?」
交喙いすか「……」

#6
総介にも告げられ、交喙いすかは一歩前に歩み出る
ザイフリート「死に損ないが……今度は完全に殺す!」
交喙いすか「ハッ、やってみろってんだ!」
ドガンッ
そして、ザイフリートの打ち下ろしに対して交喙いすかの薙ぎ払いが決まる
ザイフリート「何ぃ?」
先ほどまでとはまるで別人……この短期間に一体何があった?とザイフリートは目を見張る
交喙いすか「親父の仇……討たせてもらうぜ!」
そのまま縦横無尽に金匙玉楊きんしぎょくようを操りザイフリートをはたき続ける交喙いすか
ザイフリート「グッ」
交喙いすか「はああ!紅旋闘渦こうせんとうかッ」
ズドガアアッ
金匙玉楊きんしぎょくようを回転させながら突き出し紅い竜巻を作り上げる交喙いすか
ザイフリート「ぐおおおお」
その竜巻に吹き飛ばされ、盛大に地面に叩きつけられるザイフリート
ザイフリート「ふざけおってぇ……」
交喙いすか紅気剪躯こうきせんく」
ズガンッ
紅いオーラを纏った金匙玉楊きんしぎょくようを横にして櫂先で両断にかかる交喙いすか
ブシュウ〜
ザイフリート「ガッ」
與鷹よたか「ザイフリートに傷を?」
硬くて全く歯が立たなかったザイフリートの肉体に傷が……
ザイフリート「貴様……殺す!」
交喙いすか「へっ……だったらやってみやがれッてんだ!ザ・イフリート!」
交喙いすかも総介と同様に挑発。
その挑発に乗ったザイフリートは黎t劫棍れいきょうごうこんに今まで以上に炎を纏わせ殴りかかる
ザイフリート「閉ざされろ!叡焔えいえんの扉ッ」
交喙いすか紅気剪躯こうきせんく」
ガキィインッ
紅いオーラを纏った金匙玉楊きんしぎょくようが焔を……黎t劫棍れいきょうごうこんの先を斬り飛ばす
ザイフリート「何だと!?我が神器が……」
交喙いすか「お前の時代はもう終わった……ここで幕を引け!」
ザイフリート「ほざけ!小僧がッ」
バキッ
與鷹よたか「何!?」
なにを思ったか、ザイフリートは突如黎t劫棍れいきょうごうこんを真っ二つに圧し折る
ゴゴウッ
真っ二つになった黎t劫棍れいきょうごうこんから焔が噴き出し、元の長さへと戻る……
焔の刃を持つ棍の二刀流となりて交喙いすかに勝負を挑もうというのだ
ザイフリート「弾かれろ!焔燗えんかんの理ッ」
焔が猛り狂いながら左右から交喙いすかに迫る
交喙いすか「フッ、終わりだ!幻紅十字げんこうじゅうじ!」
対して、交喙いすかは斜め上から袈裟に撃ち落とす
ザイフリート「無駄だ!」
しかし、交喙いすかの打ち込みは、ザイフリートの左の黎t劫棍れいきょうごうこんに阻まれる。
ザイフリート「死ね!」
ガガアァンッ
勝利を確信したザイフリート……しかし、右の黎t劫棍れいきょうごうこんにも衝撃が走る
ザイフリート「何ぃ?」
幻紅十字げんこうじゅうじ……それは一撃でX字に攻撃を繰り出す交喙いすかの……絳征棒術こうせいぼうじゅつの秘儀。
交喙いすか「言っただろう、これで幕引きだと……はあああ!九留紅霄くどこうしょう」
ズドドドドドドドドドッ
ザイフリート「ガッ……グガッ」
次の瞬間、9回の打撃がザイフリートを襲う。

#7
ザイフリート「馬鹿な……この、我がぁ……」
金匙玉楊きんしぎょくように貫かれ……体に九つの穴が開くザイフリート
交喙いすか「親父……仇は殺ったぜ!」
かくて、交喙いすかの復讐は成った……
総介「……行くぞ、山咲やまざき山咲やまざき桜「はい、警部」
それを見届けると、総介は足早に帰って行く。
※断じて蔵の整理をしたくないから颯爽と帰ったわけではないぞ……
……しかし、それにしても交喙いすか金匙玉楊きんしぎょくようを託した存在……それは何だったのか……


END

前の話へ 戻る 次の話へ