Eighter -Midnight Howling-
38ther 〜南米に捧ぐ鎮魂歌(レクイエム) A〜



#0
 マナウス、アビスの大穴……それはかんなにご執心な怒愛座(ヌァザ)世界の神が一柱、過初叨素(ヨグ=ソトース)が張った罠だった。
 しかし、あえて罠に飛び込んだ一行。
 今後ますます激化の一途をたどるであろう場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)との闘いのために、ここで修業をしておこうという
策略だ。
※かなりはもともとそのつもりでここに来た。
 と、言うわけで、強化合宿のはじまりです。
 うはははは!頼もしいことに過初叨素(ヨグ=ソトース)は全知全能だぞ!
※それ『きょうか』の意味が違うから!

#1
白拍子かなり「さぁ、二人とも、準備はいいわね?」
 女王禍覚醒し、真殺影刃を大鎌にシェイプシフトさせているかなりが叫ぶ
白拍子かんな「ええ、私は、いつでもいいですよ」
 かんなも茜瑙哭(セドナ)覚醒し、神滅超越者(ラグナロクエクセル)を構える
白拍子かれん「あ、ちょっと待って……」
 しかし、かれんだけはちょっと前まで気をやっていたので準備ができていない。
かなり「さ、行くわよ!」
かれん「だから待ってって言ってるでしょうが!」
過初叨素(ヨグ=ソトース)「フッ」
 過初叨素(ヨグ=ソトース)も自らの神器、レンの硝子を召喚し襲い掛かる
かなり「いいこと、かれん、戦場ではいつも律儀に敵が待ってくれることなんてありえないのよ!」
 ガキンッ
 振り下ろされたレンの硝子をかんなとかなりが受け止める。
梓與鷹(よたか)「いや、確かにそうかもしれないけど……」
 なんか釈然としないものを感じる與鷹(よたか)ら観客であった。
 ちなみに、かんな、かなりが過初叨素(ヨグ=ソトース)の刃を受け止めている間に、かれんも奠夷瑪(ディーヴァ)覚醒し、予兆共鳴者(オーメンレゾナンス)を構えて
参戦
かれん「お待たせ」
かなり「じゃ、後は任せたわ」
かれん「ちょ、待って!」
 かれんが一歩前に出るとともにかなりはかんなを連れて下がる。そして、かれんに過初叨素(ヨグ=ソトース)の魔手が迫る。
かれん「闇龍極舞刃(あんりょうきょくぶじん)!」
 ドッ
 泣き言を言っても始まらない。覚悟を決めてかれんは闇の剣気で具現化した龍を過初叨素(ヨグ=ソトース)に叩き付ける。
過初叨素(ヨグ=ソトース)「下らん……」
 ぐしゃりっ
かれん「うっそ……」
 左手を突き出したかと思うと闇の龍を掴み、そのまま握りつぶす過初叨素(ヨグ=ソトース)
過初叨素(ヨグ=ソトース)「全力でかかって来い……さもなくば、死にはしないが……」
 ゾゾゾっとさっきのヤバすぎる昇天感覚を思い出して身震いするかれん。
白拍子かんな「かれん姉さん、下がってください」
 そう叫びつつ、かれんが下がるのを待たずに一足飛びにかかるかんな。一応注意だけはしときましたってスタン
スだ。(あと、かんなの運をもってすればかれんにぶつからないようにするのは容易い)
かんな「龍咬舞刃(りゅうこうぶじん)!」
 キインッ
 斬撃と共に、応龍(おうりゅう)に変幻する光の龍が舞う。

#2
かなり「六波羅蜜裂空牙(ろくはらみつれっくうが)!」
 ドドドドドドッ
 かなりもかなりでかんなの斬撃と挟み撃ちにする感じで六回の斬撃を繰り出す。
過初叨素(ヨグ=ソトース)「ぬるいわ!」
 かんなに向き合って気合一閃と共に光の龍をかき消すと、すぐさま後ろを振り向き迫る剣閃をレンの硝子で切り
払う。
かんな「……」
かなり「ふっ、流石ね……」
 これ位は想定内。
 ……いや、域外神(アウターゴッド)の中でも逕庭神(アザーゴッド)と呼ばれる種別たる過初叨素(ヨグ=ソトース)の力はまだこんなもんじゃない!……でも、諦め
ない、逃げない、従わない、媚びない!
 最初に出会った時も、不完全な召喚でやってきたときも、過初叨素(ヨグ=ソトース)は強かった。
 かろうじて撃退できたのはかんなの運のおかげ……
※三回目の時は過初叨素(ヨグ=ソトース)が死合ってないのでノーカンです。
かれん「ってか、過初叨素(ヨグ=ソトース)ってこんなに強かったの?」
 確かに規格外の強さだとは思っていたけど、これは流石に……とかれんが愚痴をこぼす
與鷹(よたか)「確かに……」
 これまで何度か過初叨素(ヨグ=ソトース)の強さを見てきたが、今回は桁が違うように見える。
元人交喙(いすか)「マジかよ……」
 過初叨素(ヨグ=ソトース)を始めてみるも、かんならが死合うのを見て、冷や汗が止まらない交喙(いすか)。
*「それは、この地の影響でもありますね」
一同「うおおっ!?」
 突如背後から声が聞こえる。
 振り向くとそこには、同じく怒愛座(ヌァザ)世界が一柱、過初叨素(ヨグ=ソトース)と同格の逕庭神(アザーゴッド)蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)がいた。
 『千匹の仔を孕みし蕭森(しょうしん)の黒山羊』の別名を持つ、夫の過初叨素(ヨグ=ソトース)に寛大な妻……そして、違う世界線では姉なる
もので有名である。
※待って、それって……
與鷹(よたか)蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)……」
交喙(いすか)「こっちも、ヤベぇ……」
 本能が告げる。蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)もまた、過初叨素(ヨグ=ソトース)と同じように危険だ……と。
 と、まぁ、それはおいといて……
與鷹(よたか)「ど、どういうことなんだ……この地の影響ってのは……」
蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「この場所は世界有数の界間撤鋼接衝点(アクセスポイント)だから」
交喙(いすか)「アクセス……ポイント?」
蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「ええ、この世界と別の世界とを隔てる壁を貫き、二つの世界にパスを張るもの……」
與鷹(よたか)「それは、真原紅人(シンハラ・ベニト)が描いた赫紅赭絳(かがやくくれないこうしゃ)みたいなもの……か?」
 かつて、日本のエイボンとして名高い異端の画家、真原紅人(シンハラ・ベニト)はエイボンの叡智に触発され、域外神(アウターゴッド)を召喚する絵
として赫紅赭絳(かがやくくれないこうしゃ)を描いた。
蒐葡貮繰(シュブ=ニグラス)「そうですね……」
 だが、転送量が違う。あちらがイライラするような速度ならば、こちらはサクサクと快適な速度なんだそうだ。


続

前の話へ 戻る 次の話へ