Eighter -Midnight Howling-
3rder 〜オタクツワモノ共が夢の跡 C〜



#5
 ブリッツノベルワークスの作家の一人、夏越レンに熱烈なファンから度を越した驚愕まがいな行為が行われた…
…
 依頼を受けた與鷹よたかは早速犯人の家へと乗り込むのだが……
 奴は場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツに支配された傀儡となっていた……

梓與鷹よたか「女を殴るのは趣味じゃないが……全力でいかせてもらう!神狼九断しんろうくだんッ」
 スカアアッ
 ブラックキャット……もとい、場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツ深沈せし聖女シンク・サロメを発見した與鷹よたかは早速双狼拳奥義を解き放つの
だが……しかし、刹那の瞬間に繰り出された九回の拳打は虚しく空を切った……
與鷹よたか「何?」
*「危機一髪なのである……」
 そして、背後から聞こえる声……
 振り向くと、深沈せし聖女シンク・サロメをお姫様だっこしている謎の少女の姿が……
 いや、少女と言ったが、それは作り物じみた不気味さを誇る中性的な子供であり、もしかしたらロン毛の少年と
言う可能性もあるのかもしれないが、とりあえず少女ということで話を進めよう
與鷹よたか「……何だ?お前は……」
 どこから現れた……いや、そんなことよりも……『〜である』などという個性的な語尾……それは忘れるはずも
なく森メメントのものであった……
與鷹よたか「……お前は……まさか、森メメントか?」
森メメント「そうなのである……」
 ……アレはアバターじゃなかったのか……と驚きを隠せない與鷹よたかであった。
與鷹よたか「……その場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツを回収しに来た……ってことか?」
メメント「違うのである……折角造ったシンサロを、破壊されては困るのである……」
與鷹よたか「シンサロ?……」
 そんな本当にピンクサロンみたいな略し方をされても反応に困るのだが……
 ……しかし、そんなことよりも、今、メメントは『自分が造った』と発言した……
與鷹よたか場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツを……造ったのか?」
メメント「おっと、口が滑ったのである……ふふふ、ここから先は有料チャンネルなのである……」
與鷹よたか「……まぁ、いい……メメント、それをこちらに渡して貰おう……」
メメント「絶対にお断りなのである……」
 そう言いつつ、メメントはお姫様だっこしていた深沈せし聖女シンク・サロメをおろして與鷹よたかの前に立ちはだかる
ブラックキャット「ここは私に任せなさい……」
 だが、しかし、メメントを護るかのようにずいっとメメントの前に出る深沈せし聖女シンク・サロメ……
 深沈せし聖女シンク・サロメが破壊されないようにメメントが登場したというのに……その創造主であるメメントを護るべく、
深沈せし聖女シンク・サロメが更に前に出るなどと、本末転倒も甚だしい。
與鷹よたか(……メメントがどう動くか……)
 與鷹よたかは拳法家の眼力で相手の力量がある程度把握できた……
 そして、深沈せし聖女シンク・サロメは斃せる相手だと判断した……だが、メメントだけは未知数であった……
 だからこそ、與鷹よたかはメメントの動向に気を配っていた……
 ……そして、外では相変わらずかんなとおりるが激闘を繰り広げている
メメント(……ふふふ……)
與鷹よたか「チッ」
 早くどうにかしないと……と思う反面、迂闊には動けない與鷹よたか……
 そんな歯がゆい静の膠着状態……
與鷹よたか(……ん?待てよ……こいつは……)
 と、その時、與鷹よたかはあることに気がつく……
メメント「……しかし、立っているのも存外疲れるのである……」
與鷹よたか「分かったぜ……」
 かくて、與鷹よたかは行動に移る

#6
與鷹よたか「行くぜッ神狼九断しんろうくだんッ」
メメント「な、何故である?」
ブラックキャット「ッ!」
 與鷹よたかは迷いもせずメメント目掛けて拳を繰り出す。
 自分の力は未知数……故に迂闊に手を出すのは命取りであり、自分に攻撃が来るとは思いもしなかったメメント
は不意を突かれて硬直……
 だが、そこにすぐさま深沈せし聖女シンク・サロメがかけつけメメントを後方に圧しだす
ブラックキャット「ぐぅ……」
 そして、深沈せし聖女シンク・サロメ與鷹よたかの渾身の一撃を九回、完全に受けてしまう
 ズドムッ
メメント「なっ……カハッ……」
 更に攻撃はそれだけにとどまらなかった……
 まるで狙ったかの如く、かんなに弾き飛ばされたのであろう……おりるが妄想具現化した漆黒の剣がメメントを、翠
緑の剣が深沈せし聖女シンク・サロメを同時に貫く
メメント「……どうして……である……か……」
 なぜこんな土壇場で打ち合わせでも行ったかのような連携攻撃が出来るのか……
與鷹よたか「何、かんなが教えてくれたんでね……」
ブラックキャット「……ありえない……」
 ギン、ギギ〜〜ンと、まだ剣撃は続く……それを聞いてメメントは察する
メメント「まさか、モールス信号……であるか?」
與鷹よたか「……ああ、そうだ……」
 剣と剣とが打ち合う音……それを利用してかんなは與鷹よたかにメッセージを送ったのだ……
 −・−・−、−・−・・、−・−・、−・・・−、−・・・−、・−・−・、・・−・・、−・・−・、−−・
 ……『サ・キ・ニ・メ・メ・ン・ト・モ・リ』……狙うならば森メメントである……と……
※ちなみに、このモールス信号は和製……つまり、アルファベットではなく五十音のモールス信号です。
 そして、與鷹よたかが攻撃を繰り出したことを知り、超運でメメントが後退った場所に対して襲いかかるおりるの剣を弾き
飛ばし攻撃へと転ずる……
 こんな芸当は超運の持ち主かんなだから出来る連携であった……
メメント「……人間パーツ風情が……やってくれるである……」
 突き刺さった剣を抜き、メメントがゆらりと立ち上がる
百鬼あろえ「そして、ここで助っ人参上……ってね」
 あろえも駆けつけ、死合は二対二……いや、深沈せし聖女シンク・サロメもメメントも、既に手負い……今や二人で漸く一人分
の戦力になるかどうか……

*「そこまでです!」

メメント「ッ……!」
與鷹よたか「な、何だ?」
 と、その時、謎の声が響き渡り、メメントが驚きの表情を見せる
*「……《キツネザルの使徒》を甘く見過ぎるな……と言ったはずですよ……」
メメント「……も、申し訳……」
*「言い訳はあとで聞きます……」
あろえ「リ、リーダー……」
與鷹よたか「なっ?」
 その次の瞬間、メメントも深沈せし聖女シンク・サロメも、自分の陰にとぷんと沈み、跡形もなく消えてしまった……
青井おりる「グガアアアアアアアァ〜〜〜〜」
與鷹よたか「な、何だ、今の……」
 そして、まるで獣の咆哮の様なおりるの叫び……それは、おりるの断末魔であった……
 深沈せし聖女シンク・サロメおりるの元から去ったことにより、場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツの効力が切れたのだ……
 故に、おりるは……死んだ……
白拍子かんな「……」
與鷹よたか「……帰るか……」
かんな「……はい……」
 その後、與鷹よたからは天四斗あまよとへ戻り、依頼人クライアントに状況の終了を伝え、この事件は集結した……

#7
 そして……
*「……深沈せし聖女シンク・サロメは散り、メメントもこれでは使い物にならないんだな……」
 あの翠緑の剣による一撃は深沈せし聖女シンク・サロメに対して致命傷であった……
 そして、強がっていたものの、メメントもまた重症……あのまま闘っていたら、全滅は必至であった……
*「ツメが甘いのかもね?」
*「……じゃあ、あなたならうまくやれると言うのかしら?」
*「……任せてほしいかもね……」
*「じゃあ……お手並み拝見と行きましょうかしら……」
 ……場違いな黒き遺物ネガティヴ・オーパーツの暗躍はまだ終わらない……


END

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