Eighter -Extra Voyage-
77ther 〜中華双虎拳(そうこけん)鉄の掟 D〜



#7
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)(チッ、少し焦りすぎたか……)
 もう少し時間を稼いでから勝負に出ればよかったかもしれないが、今はそんなことを言っている場合でもない。
※さっき啖呵切っちゃいましたからね……嗣鸞(しらん)「見な!これがアタイの双虎拳(そうこけん)琥琉殲撃(こりゅうせんげき)!」
 拳打を放つと同時に琥珀色の虎が梶太郎(かぢだろう)に襲い来る。
梶太郎(かぢだろう)「ハッ!銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 ゴワオッ
 虎の咆哮の如き衝撃波が琥珀の虎を打ち砕く。
梶太郎(かぢだろう)「なっ、にぃ!?」
 勝った!と思ったのも束の間、砕け散った琥珀の虎が梶太郎(かぢだろう)に襲い来る。
嗣鸞(しらん)「アタイの双虎拳(そうこけん)を甘く見たのが運の尽きよ!」
梶太郎(かぢだろう)「くっそぉおおっ!」
 転がるようにその場から回避する梶太郎(かぢだろう)嗣鸞(しらん)「ハッ!無色虎獄屠(むしきこごくと)!」
 ドオッ
 更に追い打ち。気で具現化した虎が梶太郎(かぢだろう)に迫る
梶太郎(かぢだろう)「クソッ!そっちこそ、俺をあまり甘く見るなよ!無色虎獄屠(むしきこごくと)!」
 梶太郎(かぢだろう)もすぐさま体制を立て直すと拳を放つ、と同時に気で具現化した虎が襲い掛かる
梶太郎(かぢだろう)「おおおお!」
嗣鸞(しらん)「ハアアッ!」
 虎と虎が激突し、虎自体は消滅するも、衝撃波はそのまま二人を襲う
梶太郎(かぢだろう)「ぐうっ……」
嗣鸞(しらん)「きゃうっ!?」
 そのまま吹き飛ばされつつも距離をとって対峙し直す両雄
嗣鸞(しらん)(くっ、日本の双虎拳(そうこけん)、侮れん……)
梶太郎(かぢだろう)(チッ、これまでの巫山戯(ふざけ)た奴らとは段違いだぜ……中国にはまだこんな奴がいたってのかよ!)
 確かに認めよう……心の片隅で女だと侮っていたことを……だが、これより先は違う!
※要は顔だけ見れば毛沢東なので、顔だけ見ていれば問題ない……ってそういう問題じゃねぇだろ!
梶太郎(かぢだろう)「……行くぜ!」
嗣鸞(しらん)「ハン!遂に覚悟を決めたか!いいさ、だったら死ね!」
梶太郎(かぢだろう)「おおおっ!」
嗣鸞(しらん)「はい!?」
 覚悟を決めたかと思ったら突如逃げ出す梶太郎(かぢだろう)。思わず嗣鸞(しらん)もぽかんとする。
嗣鸞(しらん)「てめぇ、覚悟を決めたと思ったら逃げるとは笑止千万!殺すぞ!」
 しかし、梶太郎(かぢだろう)もただ闇雲に逃げているわけではない。時間を稼いでいるのだ。梶太郎(かぢだろう)虎伏絶掌(こふくぜっしょう)が最大限に発
揮されるその時を……
嗣鸞(しらん)「にげるんじゃあ、ないよッ!琥琉殲撃(こりゅうせんげき)!」
 琥珀の虎が、無数の欠片に砕けつつも梶太郎(かぢだろう)に迫る……が、なんとかそれを回避する。

#8
嗣鸞(しらん)「いつまでも逃げてるんじゃないよ!」
梶太郎(かぢだろう)「いいや、逃ぃ〜〜〜げるんだよぉ〜〜」
 いや、もはや目的がおかしくなってね!?
嗣鸞(しらん)「ええい、もう知らんッ!双虎王天撃(そうこおうてんげき)!」
 まずは虎の前足と後ろ足で引き裂きにかかり、続いて尻尾で繋がった二匹の虎をヌンチャクのように扱い打撃を
繰り出す。更に偃月刀と見紛うばかりの牙を生やした虎が刺突にかかり、最後に虎の顔がドリルのように回転しつ
つ貫きにかかる。
 これが、中国四千年の歴史とか言いつつどこからどうみてもタイ〇ントオーバーブレイクのパクりにしか思えな
い双虎拳(そうこけん)究極秘奥義である
梶太郎(かぢだろう)「はっ!?」
 ズドゴオンンッ
嗣鸞(しらん)()ったぁッ!」
梶太郎(かぢだろう)「そういうセリフを吐くときは、大体やってねぇんだよ!」
嗣鸞(しらん)「な、なんだと!?」
 無傷とは言い難いが、梶太郎(かぢだろう)は生きていた。そして、今、正に梶太郎(かぢだろう)のイグニッションキーは完全に回された
梶太郎(かぢだろう)「今度はこっちから行くぜ!見せてやる!これが俺の双虎拳(そうこけん)究極秘奥義ッ!双虎漣天殺(そうこれんてんさつ)!」
嗣鸞(しらん)「ふん……」
 そんなもの……と思ったが、しかし、嗣鸞(しらん)の予想を大きく超えて梶太郎(かぢだろう)は動いた。
 薙ぎ払うような拳打の蒼虎薙(そうこてい)、突き抜けるような掌底の黄虎蹄(おうこてい)、刳りかかるような拳打の白虎噛(びゃっこごう)、貫きかかるよ
うな拳打の黒虎咬(こっこきょう)……とコンボを繋げ、そして、至近距離からの銀號懺月(ぎんこうざんげつ)嗣鸞(しらん)「あっ、がああ!?」
 さしもの嗣鸞(しらん)も、このコンボの前に成す術もなかった。
 吹き飛ばされて、地面に激突、ボロ雑巾のような状態になる。
嗣鸞(しらん)「くっ、見事だ……」
梶太郎(かぢだろう)「どうよ!これが俺の双虎拳(そうこけん)よッ!」
嗣鸞(しらん)「だが、アタイを倒しても、第二第三の毛沢東(のクローン)がお前を狙うだろうさ!アンタに安息の日なん
てものはないと知れ!」
 そのセリフを最後に、ガクリと項垂れる嗣鸞(しらん)
※いや、そもそも、ご本人は既にいないのですが……
梶太郎(かぢだろう)「……百人の毛沢東って言ってたな……ってことはマジかよ!?」
 まだ、90人以上もクローンがいるのか!?とげんなりする梶太郎(かぢだろう)であった。

#9
 中国某所
*「どうするんだ!」
 ダンッと机を殴りつける毛沢東似の漢。(と、言うか、毛沢東のクローンの一人)
*「落ち着け……」
*「これが落ち着いていられるか!」
 日本の双虎拳(そうこけん)の使い手を屠るために何人かの毛沢東のクローンを送り込んだ……しかし、結果は散々である。
*「このまま引き下がっていいのか!?」
*「奴の力の底を見極めるまでは動かない方が得策だということだ……」
*「ぐっ、それは、確かに……」
*「ならば、奴の情報を集めろ!それも徹底的にだ!」
 どんな手を使ってもかまわん!
 その結論をもってして、その会合は終わることとなる。

 毛沢東のクローン……その数百人!
 しかし、これは失敗作も含めた総数を意味する。つまり、実際には成長の途中で死亡したなどの個体も含まれる
のだ。
 つまり、毛沢東のクローンは今何人生き残っているのか、その全容を知る者はいないのだ
※いや、それはそれでどうなの!?
 さておき、梶太郎(かぢだろう)と毛沢東のクローン……両者の間の双虎拳(そうこけん)の因縁はまだ終わらない。


END

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