Eighter -Extra Voyage-
72nder 〜天四斗(あまよと)に眠る黄金 B〜



#3
元人交喙(いすか)「おい、與鷹(よたか)、働かざる者食うべかざるだぞ!」
梓與鷹(よたか)「……」
 勝手に休んでいる與鷹(よたか)を見つけてはそんなことを言いだす交喙(いすか)
 いや、どう考えてもお前、普段絶対働いてないだろ!と内心突っ込みつつ、與鷹(よたか)は石から立ち上がる。
與鷹(よたか)「しかし、なんだ……この石……妙に……」
 だが、何といえばいいのか、與鷹(よたか)にはそれが分からなかった。
 ともかくなでなでとその石を撫で続けてみる
白拍子かんな「これは御影石ですね」
與鷹(よたか)「御影石?……あぁ、そうか!」
 御影石とは、使い方として一番有名なのが墓石である。道理でどこかで見慣れたはずだよと與鷹(よたか)は独り言ち
與鷹(よたか)「って、まさかここ、墓地だったりするんじゃ!?」
 しかし、改めて周りを見てみても、御影石はこれ一個しかない。では、これは墓石ではないのか?
かんな「長い間風雨にさらされて今はこんなザラザラしていますが、当時はもっと滑らかな手触りだったと思いま
すよ?」
與鷹(よたか)「……それこそ墓石のようにか……」
交喙(いすか)「コラコラ!何二人でイチャついてやがる!とっととトレジャーハンティングをだな!」
與鷹(よたか)「いや、別にイチャついているわけではないんだが……」
かんな「ここらへんは朝日が差し込む位置とも符合しますね?」
交喙(いすか)「……まぁ、確かにな……で、それがどうした?」
かんな「そうですか……」
 言うなりかんなは神滅超越者(ラグナロクエクセル)を構えだす
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おいおい、何をするつもり……」
 ギャリィインッ
 鱗でもそぎ落とすかの如く、先ほどまで與鷹(よたか)が座っていた御影石に一閃(?)
 何ということでしょう!ザラザラで触り心地が微妙だった御影石はまるで鏡のような美しい光沢を取り戻したで
はありませんか!
交喙(いすか)「そうかッ!ここに朝日が差し込んで反射したその先にッ」
 早速翌朝を待つ一行なのであった
※いや、そこはシミュレーションとかで計算じゃないんだ……
 そして、翌朝、朝日が差し込み、反射した光が指し示す方向へと一行は急ぐ。
交喙(いすか)「ここだなッ!」
與鷹(よたか)「おいおい、これは……」
 そこには、野生の黒百合が(ひし)めいていた。
 この光景を見て與鷹(よたか)は確信した。佐々成政の埋蔵金など最初から存在しなかったのだと……

#4
與鷹(よたか)交喙(いすか)、そろそろ帰ろう」
交喙(いすか)「なっ、何を言い出すんだ!與鷹(よたか)!」
梶太郎(かぢだろう)「そうだぜ!埋蔵金はもう目の前だってのに」
 いや、まだ近いのか遠いのかハッキリしてないと思うんだが……
かんな「黒百合は佐々成政にとって破滅の象徴ともいえるべき存在なんですよ」
交喙(いすか)「何だって?」
 詳細は調べてほしいが、佐々成政には早百合という大変美しい側室がいたそうな。
 彼女が妊娠してすぐ、彼女のお腹の中にいるのは成政との子供ではないという噂が流れ、怒り狂った成政は早百
合とその一族を殺すという暴挙にでたそうだ。
 そして、その際に『立山に黒百合が咲き誇るとき、佐々家は滅亡する』という呪詛を残したと言われている。
 それから、恐れをなした佐々家では黒百合は禁忌となったらしい。
與鷹(よたか)「つまり、佐々成政の埋蔵金を示す場所に黒百合があることはおかしい。だから、佐々成政の埋蔵金なんての
は出鱈目だってことだ」
交喙(いすか)「ぐぬぬぬぬ……」
 どっかりとその場に座り込む交喙(いすか)
梶太郎(かぢだろう)「確かに、與鷹(よたか)、貴様の弁は正しいのかもしれん……だったらなんであの場所に御影石があったんだよ?」
交喙(いすか)「はっ、確かに!」
與鷹(よたか)「それは……だが、御影石ってのは墓石として使われているだろ?」
 墓場であって、宝などないのではないか?
梶太郎(かぢだろう)巫山戯(ふざけ)んなよ!ここまで来て手ぶらで帰れるかってんだ!」
 ドコオンンッ
 八つ当たりにも似た怒りに任せて近くの大岩を殴りかかる。
梶太郎(かぢだろう)「グハッ、痛ぇ……な、なんだこれ!?」
 じんじんと痛む拳を抑えながら涙目になる梶太郎(かぢだろう)。
 そんな梶太郎(かぢだろう)を見て、お前も馬鹿だなぁ……なんて與鷹(よたか)が思っていた。砕かれた大岩……その中より現れる漆黒
の扉を見るまでは……
與鷹(よたか)「な、なんだと!?」
 それは、間違えようがない。カイサイトで出来た扉だった。
與鷹(よたか)「闇夜に輝くなんてのは、ま、まさか!?……だとしたら、今まで誰にも見つけられなかったというのは……
そんなことがあるか!?」
 埋蔵金が隠されているのは歴史の墓場……そう結論付けた與鷹(よたか)だった。
※いや、どうやって歴史の墓場への入り口を見つけたんだよ?ってそもそもの疑問が出てくるんですけど……

#5
 それは扉の形状をしているが、ゲートだ。ぶっちゃけると歴史の墓場しか行けないどこ〇もドアみたいなものだ
 一行は意を決してドアの向こうへ……
梶太郎(かぢだろう)「しかしよぉ、七つ結び七つ結びってなんだったんだ?」
交喙(いすか)「フッ、黄金の数だろ」
 おそらく49箱の千両箱かなんかに黄金がザックザックって寸法よ!と豪語する交喙(いすか)であった。
與鷹(よたか)「いや、まぁ、普通に考えたら謎でも何でもないわな……」
 そして、しばらく洞窟のようなところを進んでいくと、一行の目の前にあるものが現れる
交喙(いすか)「こ、これはッ!?」
 それは棕櫚(シュロ)の文様が捺された千両箱であった。
 佐々成政の家紋と言えば棕櫚(シュロ)である。つまり、これはアタリということだ。
交喙(いすか)「おっしゃあ!遂に見つけたぜ!」
 しかし、その中は空っぽだった
梶太郎(かぢだろう)「おい、これは一体どういうこった?!」
交喙(いすか)「し、知るかよ……」
與鷹(よたか)「既に使われた後……いや、だとすれば、箱だけ残されているというのは妙な話か……」
かんな「おそらく現地の人に持っていかれたのではないかと……」
交喙(いすか)「が〜ん!」
 トレジャーハンティングにはこういうこともある。
 ちょっと残念だが、世界にはまだ見ぬトレジャーが隠されているかもしれない。
 交喙(いすか)の冒険はこれからもまだ続くのだった
※いや、真面目に働けよ!


END

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