Eighter -Extra Voyage-
71ster 〜虎が吠ゆ赤い一撃 B〜



#3
 與鷹(よたか)よりも先に交喙(いすか)を倒さねばならない!
 トレジャーハンティングの前に、梶太郎(かぢだろう)を倒さねばならない!
 今、ここに出会ってはならない二人が出会ってしまったのかもしれない。
※本当か、それ!?
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「死ね!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
元人交喙(いすか)「てめぇの方こそだ!九留紅霄(くどこうしょう)!」
 ゴドガガガガガガガガッ
 まずは小手調べ……と言いつつ軽く拳打の嵐を叩き込む梶太郎(かぢだろう)。
 一方交喙(いすか)もそんな拳を受ける義理など持ち合わせておらず、刹那の瞬間に九回の打撃を叩き込む。
梶太郎(かぢだろう)「少しは出来るみたいじゃねぇか!」
交喙(いすか)「チッ、てめぇこそだ……」
 互いに軽口を叩きながら距離を置いて対峙する
梶太郎(かぢだろう)(クソッ、腐っても與鷹(よたか)の友人ってことか……油断したワケじゃねぇが、強い……)
 金匙玉楊(きんしぎょくよう)と打ち合った拳が軽く痺れる。だが、この程度ならば死合に差し支えはない
交喙(いすか)(いつも與鷹(よたか)に負けてるっていうからどんなもんかって思ったが、これは侮れねぇな……)
 交喙(いすか)も思いもせぬ梶太郎(かぢだろう)の力に驚きを隠せずにいた。
梶太郎(かぢだろう)「ちょっと本気でいかせてもらうぜ!虎伏絶掌(こふくぜっしょう)!」
交喙(いすか)「何だと!?今まで本気じゃなかったってのかよ」
梶太郎(かぢだろう)「真の力はなるべく隠す、これが双虎拳(そうこけん)の神髄よ!」
※いや、そんな神髄ある!?
梶太郎(かぢだろう)「おらあ!銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 ガオンッ
交喙(いすか)「クッ、幻紅十字(げんこうじゅうじ)!」
 ドゴオンッ
 虎の咆哮の如き衝撃波を繰り出す梶太郎(かぢだろう)に対して、斜め上から打ち下ろしただけなのになぜかX字の打撃が与え
られる攻撃で応戦。
交喙(いすか)(チッ、奴が本気でかかってくるというのなら、俺も早々にケリをつけないといけないかもな……)
 そもそも、交喙(いすか)がここに来たのはトレジャーハンティングの助っ人を頼むためであり、この死合はそもそも想定
外の事態なのだ。
交喙(いすか)「終わりだ!衝錐紅嘴(しょうすいくし)!」
梶太郎(かぢだろう)「ハッ、終わるのはてめぇよ!銀號懺月(ぎんこうざんげつ)!」
 紅いオーラを纏った金匙玉楊(きんしぎょくよう)で突撃しつつ、梶太郎(かぢだろう)を滅しにかかる交喙(いすか)。さり気にオーバーキルであるが、しか
し、梶太郎(かぢだろう)の虎の咆哮の如き衝撃波を相殺するだけにとどまった。
 いや、留められてしまったというのが正しい。

#4
交喙(いすか)(チッ……)
 競り負けたのはおそらく虎伏絶掌(こふくぜっしょう)のせいだろうと交喙(いすか)は察知していた。
 だが、交喙(いすか)もまた、梶太郎(かぢだろう)虎伏絶掌(こふくぜっしょう)が不完全で時間をかけないと真価を発揮できないことを知らない。
交喙(いすか)抉雲紅衝(かつうんこうしょう)!」
梶太郎(かぢだろう)金鯱流楼(きんこるろう)!」
交喙(いすか)「何!?」
 金匙玉楊(きんしぎょくよう)梶太郎(かぢだろう)を掬い上げるように打ち上げて、落下してきたところに一撃を叩き込もうとした交喙(いすか)。
 しかし、梶太郎(かぢだろう)は流れる水のような動きで華麗にソレを回避。
 驚き覚めぬままの交喙(いすか)に拳打の嵐を叩き込む
交喙(いすか)「ぬおおおおっ!」
 ガゴゴゴゴゴゴッ
梶太郎(かぢだろう)「チッ、浅い……」
 思わず金匙玉楊(きんしぎょくよう)でガードする交喙(いすか)交喙(いすか)(これ以上長引かせるのは得策ではないッ!)
 改めていうことでもないが、全ては早く切り上げてトレジャーハンティングに行きたい一心だったりもします
※いや、それはつまり、梶太郎(かぢだろう)との死合は遊びだって言ってるようなもんなんだが……
交喙(いすか)「終わらせるッ!八卦蘇芳衝(はっけすおうしょう)!」
 ドドドドドッ
梶太郎(かぢだろう)「何だと!?」
 交喙(いすか)の幻影が七人!本体と同時に八方から梶太郎(かぢだろう)に襲い掛かる
梶太郎(かぢだろう)双虎漣天殺(そうこれんてんさつ)!」
 薙ぎ払うような蒼虎薙(そうこてい)、腹にかます黄虎蹄(おうこてい)、肩から刳りにかかる白虎噛(びゃっこごう)、心臓に狙いを定める黒虎咬(こっこきょう)と続けざま
に四つの幻影を叩き潰し、トドメに銀號懺月(ぎんこうざんげつ)でまとめて残り三人の幻影を吹っ飛ばす!
 ここまでは順調だった。ここまでは!
 双虎拳(そうこけん)究極秘奥義を繰り出したことで勝利を確信した梶太郎(かぢだろう)であったが、梶太郎(かぢだろう)が倒したのは交喙(いすか)の幻影に過ぎ
ないのだ。
 ゴインッ
梶太郎(かぢだろう)「あげはッ!?」
 本体である交喙(いすか)が背後から隙だらけの梶太郎(かぢだろう)に一撃をかます。
 こうして、呆気なくこの死合は決着したのであった。

交喙(いすか)「ふぅ……」
 一仕事終えてスッキリしている交喙(いすか)
與鷹(よたか)「その……なんだ……勝利おめでとう……と」
交喙(いすか)「おうよ!これで心置きなくトレジャーハンティングに行けるな!」
 明るい笑顔でそんなことを言いだす交喙(いすか)。
 こんな心境の交喙(いすか)に負けたのならば、梶太郎(かぢだろう)は悔やんでも悔やみきれないかもしれない……

#5
梶太郎(かぢだろう)「チッ、くそがッ!」
 その後、しばらくして梶太郎(かぢだろう)復活
交喙(いすか)「ほう、まさかこんなに早く復活するとはな……」
 もう少し長くノびていると思っていたのに、素早い復活に目を瞠る交喙(いすか)であった。
梶太郎(かぢだろう)「てめぇ、言っとくがもう少し経っていたらきっと俺が勝っていた!」
交喙(いすか)「負け惜しみか!?」
與鷹(よたか)「あ〜〜、その、なんだ……あいつが使った虎伏絶掌(こふくぜっしょう)って技があったろ?」
 それはもしかしたら事実だったかもしれない。と、いうわけで與鷹(よたか)が思わず助け船を出す
交喙(いすか)「それが?」
與鷹(よたか)「コイツのソレはまだ未完成でな、時間が経たないとエンジンが完全にかからないんだとさ」
交喙(いすか)「……」
 と、いうことは……と交喙(いすか)は暫し考える。
交喙(いすか)「だが、勝負はアミバの運だからな!」
梶太郎(かぢだろう)「それを言うならトキの運だ、ボケ!」
※いや、なんなの!?このボケと突っ込み……めっちゃ仲いいやん……
 さておき、これで心置きなくトレジャーハンティングに行けるってもんだぜ!と交喙(いすか)ははしゃぐ。
 ちなみに、そんなトレジャーハンティングの話はいずれまたの機会に……


END

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