Eighter -Extra Voyage-
70ther 〜蒼き刃が煌めく時 B〜



#3
 なぜ、桜は誰にも抜くことができなかった大剣をいとも簡単に抜くことができたのか……
 それは、桜が台座のロックを解除したからである。
 先ほど、総介も言っていた大剣は台座を中心に円運動はできるが抜くことができなかったと……
 そして、ドラグルインは剣の先の方に丸い穴が開いているという特徴を持っていた。つまり、ここから導き出さ
れる結論は……
※ちなみに、桜はどうやってロックを外したのか……それは内緒です。

 さておき、総介は大剣を手に入れた。しかし、総介の膂力をもってしても、この大剣は扱いに困る代物である
 では、どうするのか……
 それは、勿論、自分の身の丈に合った刀に作り直すだ!
 総介は歴史の墓場から現実世界へ戻るや否やすぐさま京都へ、金枝業物店へと急ぐ。
金切(しょう)「あなたは……」
(かみ)総介「コレをベースに刀を二振り、打ってほしい」
 そういって総介はドラグルインを手渡す
(しょう)「これは……」
 確かに、この巨大な剣であれば、そこから刀を二振り作ることは不可能ではない。
(しょう)(しかし、コレは……なんだ……今までに見たことがない材質で作られている……?!)
 歴史の墓場で作られた代物であるが故の違和感。
 しかし、刀鍛冶として負けられない戦いがここにある。
(しょう)「お受けしましょう!」
 続けてどのような仕上がりをご所望でしょうか?と問うてくる。
総介「山咲(やまざき)!」
山咲(やまざき)桜「はい」
 総介に呼ばれて、桜は(しょう)蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)を渡す。
総介「コレに似た刀を作ってもらおうか」
(しょう)「なっ、正気ですか!?」
 一目見ればわかる、コレは神器だ。ソレに似せた刀を作れなどと、ある種の冒涜に似ている。
(しょう)「まさかとは思いますが、贋作を作れと?」
 犯罪の片棒を担ぐことになるのであれば、この依頼はなかったことに!と決意を固める(しょう)だ。
桜「確かに、こちらは神器になります。しかし、この神器を封殺する相手と戦うために、どうしても似た刀が必要
なのです」
(しょう)「……」
 暫くの沈黙の後、(しょう)は改めてドラグルインを受け取る。
 それは、この依頼を引き受けるということに他ならなかった。

#4
 数日後……総介は再び金枝業物店を訪れることとなる。
(しょう)「お待ちしておりました」
 店に総介が入るなり、すぐさま総介の元に駆け付けてくる(しょう)。目にはクマができており、疲労困憊に見えるが、
それをおくびにも出さない。
 それは刀鍛冶としてのドモンだ……違った矜持だ。
※いや、どんな間違いだよ!
(しょう)「流石に骨が折れましたが、その分、出来は保証しますよ?」
 二振りの刀を総介に手渡す(しょう)。
総介「フム……これが……」
 ドラグルインをベースに生まれ変わった二振り……ソレは確かに総介の手に馴染む。
 そして、刀を手にしたのならば、試し斬りしたくなるものが人情というモノだ
※いや、どこの人情だよ。むしろ刃傷沙汰……
(しょう)「でしたら……」
 店の裏へと連れていかれる総介。
 そこには、傷だらけの鎧がズラリと並べられていた。
総介「試し斬り……か……」
 早速総介は(しょう)が鍛えた二振りを手に一足飛びにかかる
総介「ハッ!蒼叉岐(そうさき)!」
 ズガガンッ
 早速第一の目標に見立てた鎧を左右の刀で十文字に切り裂き青き光に包む。
総介「フム……」
 続いて、総介は二つの刀を一本にくっつけて双身刀とする。
 蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)に似せて作られたこの刀は、当然その二つの刀の特徴を備えていた。すなわち神の特刀(デウス・エクス・ブルー)形
態もだ。
総介「おおおっ!臠蒼極連(れんそうごくりん)!」
 ガガガガガガガガガッ
 そのまま九回の斬撃を放ち他の鎧もズタズタに切り刻む。
総介「……いいだろう」
 気に入ってもらえてほっと一安心する(しょう)であった。
※いや、と、言うかなんでそんなに上から目線なのか……
(しょう)「後は、銘ですが……」
 これまでであれば、既に銘を刻んでいるところではありますが、いかんせん今回はモノが特殊過ぎまして……実
はまだ銘が決まっていないのですと(しょう)は告げる。
総介「フン、ならば、丁度いい……」
 この二振りは青臣(せいしん)だ!と宣言する総介。
(しょう)「セイシン……?!」
 蒼王の刃(ブルーロード)藍后の刄(ブルーエンプレス)……それは神器。鬥址偶襾(ツァトゥグア)の加護を受けしモノ。
 そして、それに似せて作られたこの二振りは臣下だ。故に青臣(せいしん)である。

#5
 流石は鍛冶界にその人ありと謳われた稀代の刀鍛冶なだけはあると総介は満足し、桜とともに店を後にするので
あった。
(しょう)「いやはや……今回ばかりは流石に骨が折れた……」
 総介を見送るや否や、ドタリとその場に大の字に倒れこむ(しょう)。

 さておき、こうして、総介はシレントワイザードのアーティファクトに対抗するための新たなる刀を手に入れた
のであった。
 まぁ、実際に活躍できたのかって言われれば、結果から見ると微妙なところな気がするが……
※いや、これだけ苦労して手に入れたのに、それはないでしょう
 ちなみに、シレントワイザードが壊滅したことでこの刀も役目を終えることに……なったら、それはそれでなん
かこう、かわいそうというかなんというか……最初からもっと違う手段を考えた方がよかったのでは?とか思って
しまうのだが、それはそれである。
 と、いうか、事実、化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)って手駒を見つけちゃってるし、ますます青臣(せいしん)を作った意味がなくなってしまう
のだが……
 (しょう)が聞いたら卒倒しそうなまま、青臣(せいしん)の生誕秘話は幕を閉じることとなったのであった。
※いや、どんな終わり方!?


END

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