Eighter -Blindness Wizard-
48ther 〜魔眼輝く憤怒の花 C〜



#5
シャイターン「ぐっ……ぐぐぐ……」
 ジリジリと迫る萌にたいし、手足がないため、身動きも取れずただ睨みつけることしかできないサタン。
 そして、四つの刀を携えた萌がサタンの眼前に迫ると萌はこう告げる。
冥時(みょうじ)萌「もう二度と俺の前に姿を現すな!」
シャイターン「は?!」
 そのままサタンにトドメを刺すかに思われた萌だが、しかし、そんなセリフを告げると刃を納めてその場から立
ち去ってしまう。
 通常ならばこの傷では再起は不能。放っておいても死ぬだろう……だが、サタンは七罪塔(しちざいとう)である。この程度では
死なないのだ。
シャイターン「あははははは。はははは……私を斬らなかったこと、いずれ後悔させてやるわよ!」
 それは負け惜しみではない。必ず同じ目に合わせてやるというサタンの新たなる決意だ。
ネサリウス「残念だが、お前に後悔する機会はない!」
シャイターン「なっ!?」
 萌が去ったと同時に入れ替わるかのようにネサリウスが出現。
ネサリウス「七元徳(ななげんとく)、《正義(ディカイオシュネ)》がミカエル!」
 ガショゴッ
シャイターン「あがああ!?」
 USBメモリと見紛うアーティファクトがサタンの首に突き刺さる。
シャイターン「貴様ra、いつかra?!あああ?!」
 ガクガクと小刻みに震えだすサタン
シャイターン「……triGon0、OS初期設定プログラムを開始します……この度は場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)七罪塔(しちざいとう)をご利
用いただき誠にありがとうございます。メインメニューです……」
 抑揚のないシステムボイスで突如喋りだすサタン。
 それは、レヴィア、ビュートに続いてサタンもシレントワイザードの前に陥落した瞬間であった。
ラキエル「しかし、あいつがトドメを刺さずに去っていったのは僥倖でしたね」
ネサリウス「いや、奴はあえてとどめを刺さずに去っていった……」
ラキエル「え!?それは一体!?」
ネサリウス「正確に言うならば、奴は我らが潜伏していることに気づいていた」
ラキエル「馬鹿なっ……」
 そんなことがありえるのか!?七罪塔(しちざいとう)でさえ気づかなかった我らのステルスを、萌は見破っていた!?と戦慄す
るラキエル。
ラキエル「ネサリウス様……では、どうしてあいつは、我々に気づいていながら……」
ネサリウス「七罪塔(しちざいとう)が我らの手に落ちることが、七罪塔(しちざいとう)にとって最も屈辱的なことだと、あいつにはわかっていた
んだろうなぁ……」

#6
 更に言うならば、もはや、サタンに次はない!
 そう考えたからこそのあの行動だったのだろうとネサリウスは推測した。
ネサリウス「いずれにせよ、我らの目的は達成した。帰るぞ」
ラキエル「はっ、ネサリウス様」
 そして、ネサリウスとラキエルもまた、その場を後にするのであった。
 七罪塔(しちざいとう)、残り一つ。

 歴史の墓場
ルシュファー「あぁ、遂に私だけになってしまった……」
 誰もいないその場所で、ルキは一人寂しく呟く。
 それにしても、七罪塔(しちざいとう)の魔手から逃れられる人間がこうも何人も出てくるなどと、思ってもみなかった。
ルシュファー「どういうことだ!?」
 あるいは長い人類史の中で、七罪塔(しちざいとう)に対抗できる進化が始まっていたとでも言うのだろうか
ルシュファー「……まさか……ね……」
 それよりも、厄介なのは七元徳(ななげんとく)である。
 未だその全容は掴めず、対抗策も何一つとして存在しない。
ルシュファー「人間(パーツ)風情が我ら七罪塔(しちざいとう)を操るプログラムを作成できるわけがない……」
 と、言うのは思い上がりか……
 ただ、おそらく、シレントワイザードは三つだけでは満足しないであろう、人の欲望とは際限ないものなのだか
ら
ルシュファー「だが、アンタら如きに、この私が、屈服するとでも思うなよ!」
 人知れず天命(ネフェシュ)を奪って力を蓄えることで、七元徳(ななげんとく)にだって抗って見せる。
 根拠はないが、場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)とは人を使役することが存在意義。
 たった一人になってしまっても、今まで通りに、いや、今まで以上に天命(ネフェシュ)を食らいつくして見せる。
 それが、ルキのプライド。
 そういうわけで、ルキは天命(ネフェシュ)を食らうため、暗躍するのであった。

 一方……
萌「フン、奴もくたばったようだな……」
 ネサリウスがサタンを陥落させて連れ去ったことを萌も察知した。
萌「奴の言葉を借りるならば、俺の剣もまだまだ未熟ということか……」
 今回の件で、萌も一層の研鑽をしなければならないと感じとったのだった。

#7
 そのころ、(かく)眼同盟本部では……
直江万夏(まなつ)「ええと、いろいろあったけど、とりあえず続けようか……」
 なんかどっと疲れたので、もう今日はお開きにしたい思いもあるけれど、宗美(むねみ)友近(ゆこん)は妙にやる気が滾っている
みたいなのでそんなことが言い出せる雰囲気ではない万夏(まなつ)。
柳生衞琉(えいる)「尾張柳生!」
柳生兵子(ひょうこ)「ですから、私の名前はそれではありませんが」
 そして、同じように衞琉(えいる)もやる気満々だ。
前田松子(しょうこ)「じゃあ、早速模擬死合始めようか!」
万夏(まなつ)「あっ、ちょっと待ってみんな」
一同「何よ!?」
 これから死合おうってんのに水を差さないでくれると一行の視線が万夏(まなつ)に突き刺さる
万夏(まなつ)「ほら、今いるメンバーだと一人あぶれるじゃん……」
 だから、私、見学でいいかな〜って万夏(まなつ)が告げようとしたのだが、兵子(ひょうこ)がそれにこう答える
兵子(ひょうこ)「大丈夫ですよ。あぶれることはないですから」
万夏(まなつ)「はい!?それはどういう?!」
 と、そこへ現れたのは萌だ!
一同「なっ!?」
兵子(ひょうこ)「ほら、ね?」
 いや、ほらねじゃないでしょ?というのは万夏(まなつ)だけのようだ。
 その後、敢と萌、宗美(むねみ)友近(ゆこん)兵子(ひょうこ)衞琉(えいる)松子(しょうこ)万夏(まなつ)とでとことん死合いを行うことになるのだが、それはま
た別の話である。


END

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