Eighter -Blindness Wizard-
43rder 〜月蝕の嘘殺黒蜥蜴 B〜
#3
重力制御を駆使して敵を討つ袁宸汪(
そんな相手に手も足も出ない一行に見えたが、桜は一つ手があるという。果たして、それは……
チャッ
鞄の中からFNファイブセブンを取り出す桜。
袁宸汪(「拳銃!?……フッ、そんなものは無駄だ!」
ダアンッ
ボトッ
まずは一発射撃を行うのだが、銃弾は宸汪(に届く前に重力の壁に叩き落される。
梓與鷹(「やっぱり無理か……」
上(総介「フッ、今のは試し撃ちよ!」
山咲(桜「はい。次は行けます」
総介の言葉に力強く頷いて見せる桜。
宸汪(「何をするつもりか知らんが、無駄よ!」
桜「……そこです!」
ダァンッ
一同「なっ!?」
なぜか、桜は上空に向けて銃弾を一発放つ。
宸汪(「何がしたかっ……」
どうして明後日の方向に向かって射撃などしだしたのかと思っていた次の瞬間、銃弾は重力の壁により急激に落
下。
ガキィンッ
そして、宸汪(が左手でこれ見よがしと掲げるかのように持っていた次元天球に激突。上半分が銃弾を受けた反動
で回る。
白拍子かんな「はっ!」
ドガンッ
更に、かんなが一足飛びにかかり、神滅超越者(の腹で宸汪(が手に持つ次元天球を叩き落す
宸汪(「なっ!?馬鹿なぁッ!?」
化野梶太郎(「お、おい、一体何を!?」
全てはこの一瞬のために。そして、その隙を逃すかんなではなかった。
では、そのとき、一体何が起こったのか!?
まずは、改めて説明しておくが、次元天球とは……いや、その内部に組み込まれている或いは愛しても佳き哉(と
は上半分と下半分を掴んで回すことで重力を制御する代物である。
と、ここまで説明すれば先ほど桜の放った銃弾がソレを回した意味が分かるだろう。
そう、桜は重力の壁によって落下する銃弾の位置を計算し、次元天球にブチあてて見せたのだ。
こんな芸当は通常の人間には不可能であるが、しかし、桜は……桜だけはソレが可能なのだ。なぜ桜にはそれが
可能なのかは、今は詳しくは語れないが……
※いずれ語られる日がくるのかは不明です。(え〜?!)
そして、重力の壁がなくなった瞬間、かんなが神的タイミングで宸汪(から次元天球をはたき落したのだ。
#4
これまた運の女神として名高いかんなだからこそ、何の打ち合わせもなくできた芸当なのだ。
総介「これで形勢逆転。だな……」
地面に転がり、こちらへやってきた次元天球を手に、総介が告げる。
梶太郎(「おっしゃあ!これでをブチのめせるってことか!」
意気揚々と拳を掌に叩きつけて梶太郎(が叫ぶ。
宸汪(「だが、それで勝った気になるなよ!」
そして、宸汪(は二つ目の次元天球を取り出す。
宸汪(「次元天球は二つあった!」
※いや、だから、その言い回し何なの!?
梶太郎(「これで勝負は振り出しに戻ったってことか!?」
敵にも味方にも重力制御を行う術があるのであれば、確かに、勝負は振り出しに戻ったと言えよう。
しかし、あちらはエンジン王とギルターボ。こちらは與鷹(、梶太郎(、総介、かんな。戦力差は明らかだ!
※いや、だからエンジン王とギルターボって言うのやめい!
総介「フッ、貴様一人で俺たちにかなうとでも思っているのか?」
宸汪(「ぐっ、それは……」
袁洲葎(「ま、待ってくれ!オヤジをどうする気なんだ!?」
と、ここで息子がしゃしゃり出てくる。いくらなんでも父親がボコボコにされるのは見たくない息子や娘であっ
た。
しかし、空気を読まない梶太郎(は物騒なことを嬉々として語る。
梶太郎(「そりゃ当然、奴をぶっ殺す!」
袁高藷(「ひ、人殺しッ!」
與鷹(「いやいや、殺しはしないから……殺すなよ!」
梶太郎(「……」
総介の手駒であり、與鷹(の命令にも従えない梶太郎(は、與鷹(の言葉に従うしかない。
総介「まぁ、いい。ならば、こいつと戦え!もし、お前が勝てば次元天球は返してやろう」
與鷹(「おい、総……」
いくらなんでも勝手に……と與鷹(が続けようとしたが、梶太郎(が前に出る
梶太郎(「俺が勝ったら……って展開だな!いいぜ、こいや!てめぇの力を見せてみろや!」
宸汪(「……ならば、お望みどおりに!」
ドゴオンッ
一足飛びにかかる両者。
交差する拳……そして、頽(れたのは宸汪(の方だった。
宸汪(「ば、馬鹿なぁ!?」
梶太郎(「アンタは次元天球ありきでしか勝てないようだな!」
まさかの勝負は一瞬だった……
#5
宸汪(「な、なぁ、どうしても、コレを譲らないとならんのか!?」
與鷹(「えぇ……」
往生際が悪いにも程がある……先程の約束は何だったのか!?と言いたくなってくる與鷹(。
総介「くどい!」
洲葎(「オヤジ、アンタは負けた……ならば、潔くそれを渡せばいいじゃないか」
宸汪(「し、しかし……これは私の……」
かんな「ですが、あなたがそれを持ち続ける限り、ずっと狙われ続けることになりますが?」
高藷(「お父さん、そんなの手放してよ!」
それは娘の心からの叫びだった。
宸汪(「うぐっ……」
そして、しばらくの葛藤の後、宸汪(は次元天球をEighterに託すのであった。
ちなみに、余談だが、七罪塔(は既に見限っている。そのため、この場に場違いな白き遺物(や天命(を回収には来な
い。
それは、結果的に命拾いしたという意味にもなる。
そして、七罪塔(がやってこないということはシレントワイザードもやってこないということである。
こうして、スパイ容疑の事件は密かに幕を閉じ、これより先、袁(教授にスパイ容疑がかかることはなくなったと
言う。
END
前の話へ 戻る 次の話へ