Eighter -Blindness Wizard-
39ther 〜常闇孕む母子孕む B〜



#3
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「おい、あいつは誰だよ!」
天然蛍(あましか・けい)「ん〜、そっちこそ誰?」
 (けい)梶太郎(かぢだろう)。実はこれが初対面だった。
※って、そんなことはどうでもいいから!與鷹(よたか)「あいつは……」
 しかし、悲しいけどここは戦場。談笑している場合ではないのだ。
カシム・カシム・シマハウラ「そろそろ死んでもらおうか」
(けい)「嫌だ!」
カシム「ならば、貴様から死ね!」
(けい)「死にたくないから抵抗するね……其の右に纏いしは紅き炎爪……燃ゆる紅蓮の(かいな)……夢炎の刃、真・炎双刃」
 ボボッ
 炎が集いて刃を成す。
(けい)紅龍炎舞(こうりゅうえんぶ)!」
カシム「導力接続、コーラン・二章五節!これらの者は、主から導かれた者であり、また至上の幸福を成就する者
である」
 ドッガガッ
 斬撃と同時に深紅の炎の龍が四匹、カシムに襲い掛かるが、カシムが展開した防壁がこれを防ぐ。
(けい)「わぁ、凄いね」
突込魁(とつこみ・かい)「感心している場合かッ!」
カシム「フッ、これこそ、アラーの神の思し召しよ!」
(けい)「でも、その力を過信しすぎて、あらぁ!?ってならないように注意した方がいいよ?」
カシム「貴様ッ!アラーを侮辱するとは万死に値する!」
 (けい)巫山戯(ふざけ)た発言に、カシム、大いに怒る。
※当然です。何やってんの……
カシム「貴様はタダでは殺さん!死なない程度に痛めつけてから、そこにいる貴様の女を、全兵力をもってして輪
姦してやるわ!」
 なんかもう無茶苦茶である。
カシム「死ねッ!導力接続、コーラン・一章四節!最後の審きの日の主宰者に」
 ドッ
 つい先ほど死なない程度に痛めつけるって言っておきながら死ねって言って襲い掛かるカシム
(けい)「ほいっと」
 光り輝く六角形を組み合わせてできた手甲を纏った拳を軽々と回避すると(けい)はそのままお返しとばかりに凶刃を
叩き込む。
カシム「導力接続、コーラン・二章五節!これらの者は、主から導かれた者であり、また至上の幸福を成就する者
である」
 ドッ
 しかし、(けい)の凶刃は光り輝く六角形を組み合わせたような防壁に阻まれる
(けい)「え〜〜、その技、反則〜」
カシム「ほざけ!貴様如き愚物を阻むための防壁よ!」

#4
(けい)「じゃあ、そろそろ俺も本気を出そうかな……」
 と、言いつつもいつもと何ら変わらない様子の(けい)。
カシム「導力接続、コーラン・十三章十三節!雷はかれを讃えて唱念し、また天使たちもかれを畏れて唱念する。
かれは雷鳴を送られ、かれらがアラーに就いて論争している間に、これでかれの御好みの者を撃たれる。かれは力
ある強烈な方である」
 ズドオンッ
 カシムを中心に同心円状の衝撃波が飛び、触れるものを爆砕していく
(けい)「あっ!?」
 そして、ぼけ〜〜っと突っ立っているような(けい)は格好の的である。
 爆砕、(けい)死す!?
カシム「フッ、これがアラーの神の思し召しよ!」
(けい)「ふ〜〜ん、へ〜、そうなんだ……」
カシム「なっ!?」
 背後から今しがた死んだはずの漢の声がする。
 恐る恐る振り返ってみると、そこには欠伸を噛み殺した(けい)が無傷で立っていた。
一同「馬鹿なっ!」
 カシムはもとより、その場に居合わせたボシ・ハラムの連中一同が驚きのあまり声を上げた。
カシム「貴様ッ」
 どうして……と続けようとしたとき、(けい)はこう呟く
(けい)「夢でも見たんじゃないかな?」
 これこそが、この世界の人間では(けい)にしか使えない究極秘奥義、夢間天鐘(むげんてんしょう)である。
 コレの前では、すべては夢と化す!
 だから、カシムが導力接続で(けい)を爆砕したと思ったのも、彼が見た夢だったのだ……いや、夢にされたのだ!
カシム(な、なんだ……奴は……得体が知れなさすぎる……)
 ここにきて、カシムは(けい)という漢に底知れぬ恐怖を抱いた。心なしか、体の震えが止まらない。
カシム(お、俺は選ばれし神の戦士……あんな信仰もないような奴に負けるわけがない!)
 そして、何よりも俺には立方晶窒化炭素をあしらったコーランがある!と、少しだけ落ち着きを取り戻す
カシム「我が信仰の全てをかけてでも、貴様を殺す!」
(けい)「じゃ、やってみれば?」
 カックンと首を傾げつつ、(けい)が言う。
カシム「導力接続、コーラン・十二章一節!アリフ・ラーム・ラー。これらは明瞭な啓典の印である」
 光り輝く六角形を組み合わせてできた巨大な釘が出現するとそれを掴んでは一足飛びにかかる
カシム「フンッ」
 ドカアンッ
 コーランをハンマー代わりに釘を打つ!しかし、そこに(けい)はいない
カシム「チッ」
 すぐさまコーランで釘の頭をひっかけて引き抜くと(けい)を探す

#5
(けい)「ばいばい。炎水之極(えんすいのきわみ)夢刃冽火(むじんれっか)」
 ドンッ
カシム「あがあ!?」
 しかし、カシムの死角を突いた(けい)は水と炎を螺旋の様に絡めた巨大な刃でカシムを薙ぎ払う。
 回避することも叶わず、カシムは崩れ落ちるのであった。
一同「そ、そんな、大戦士長までも……」
 愕然とするボシ・ハラムの連中。もはや連中に戦う意思は残されていない……所謂戦意喪失!というヤツだ
※いや、なんでキル〇キル!?

(かみ)総介「さて、では後始末は俺がやろう……」
與鷹(よたか)「もう大丈夫なのか?総……」
 大丈夫か、大丈夫じゃないかと問われれば、大丈夫ではないが、そういうわけにもいくまい。ボシ・ハラムの連
中を捕縛するのはSRAPたる俺の役目でもあるからな……と総介は老骨(いや、老いちゃいないが……)に鞭打って
事後処理をするのであった。
※ちなみに、ボシ・ハラムはここにいる連中が全てっていうわけではありません。
(けい)「じゃ、また遊びに来るね〜」
突込魁(とつこみ・かい)「マテやこらぁ!」
 ひらひらと手を振りながら帰ってしまう(けい)を突っ込みつつ(かい)もその場を後にするのだった
與鷹(よたか)「全く、あいつらは自由過ぎるよな……」
 まぁ、今回は助かったけど……と與鷹(よたか)は独り言ち
與鷹(よたか)「それにしても、今回のは何だったんだ?」
総介「俺が知るか!」
 それもそうだ……
 そして、これが単なる嫌がらせだと気づいたものはかんな以外にいないのだが、それはまた別の話である。


END

前の話へ 戻る 次の話へ