Eighter -Blindness Wizard-
16ther 〜怨念の魔王拳強襲 A〜



#0
 覚えているだろうか、シレントワイザードに入門したとある復讐鬼のことを……
 ネサリウスの元修行に励んだその漢は今、魔術師としての力を手に入れる。
 そう、これは、そんな怨念の漢の物語。
 君の名は……
※別に入れ替わりません。

#1
 山梨県、富士青木ヶ原樹海、シレントワイザードの日本本部
*「おらっ、おらおらおらっ、あ〜たたたたたたたたたっ、あたっちゃぁああッ!」
 ドコッドコドコッ
 ドコドコドコドコドコドコドコドコドコドコッ
ラキエル「ぐっ……こいつ……」
 魔力のこもった拳打(オラオラ)連撃(ラッシュ)を前に苦戦を強いられるラキエル。
*「砕け散れぁああ!」
ネサリウス「そこまでッ!」
 ドンッ
 あと一歩止めるのが遅かったならば、確実に殺られていた……そう思わせるだけの威力がその拳にはあった。
ネサリウス「どうやら、モノにはできたみたいだね」
*「ヘッ」
 ネサリウスを一瞥してすぐさま目を逸らす漢
ラキエル「貴様、ネサリウス様になんて態度を……」
ネサリウス「まぁ、いい……ともかく、おめでとう。これで君も晴れてシレントワイザードの一員だ」
 ぱちぱちと乾いた拍手をしながらネサリウスが言う。
*「そんなこと言われてもちっともうれしくないがな……」
 俺は早くあいつをブチ殺したいんだ!とググっと拳を握りしめる漢。
ネサリウス「では、早速君に魔術師としての名を授けよう」
*「ケッ、要らねぇよ、そんなモン」
ラキエル「なっ、貴様馬鹿か!」
 シレントワイザードの魔術師にとって名を送られるということは大変名誉なことなのである。
※普通の魔術師もそうかもしれないけど、違ったらアレなのであえて『シレントワイザード』限定にしてみました
 ……それ以前に魔術師が真名を使うことはありえない。真名を掌握されれば、魔術師は敗北必至なのだから。
 だから、魔術師は真名を使わない。偽名といえば聞こえが悪いが、代わりとなる名を使うのだ。
 それを要らないと突っぱねるこの漢は正気の沙汰とは思えなかった。
ロズエリク「だが、魔術師としての名をつけるのはシレントワイザードの義務なんでな……悪く思うなよ」
ネサリウス、ラキエル「ロズエリク様……」
 突如現れたシレントワイザード参謀に思わず平伏するネサリウスとラキエルであった。
ロズエリク「そして、お前の魔術師としての名は既に決まっている……ウディンだ!」
一同「ウディン?!」
ロズエリク「フッ……そして、これはお前の目的にも関係する名だ!」
ウディン「……面白れぇ……俺は今日からシレントワイザードのウディンだ!」
 その名の意味を知り、ウディンはニタリと極悪の笑みを浮かべる。

#2
 天四斗(あまよと)、Eighter本部
 その日、與鷹(よたか)の元に一通の果たし状が届いた。
梓與鷹(よたか)「……これは?!」
百鬼あろえ「リーダー、どうしたんですかぁ?!」
 果たし状と書かれた封筒を見て思わず素っ頓狂な声を上げるあろえ
テノ「だる〜〜〜」
 そして、そんな雰囲気(げんそう)をぶち壊すのがテノだ。
※特に幻想でも何でもないけど……
あろえ「果たし状なんて私、初めて見ましたよ」
 まぁ、そりゃそうだわな……
あろえ「で、差出人は?」
與鷹(よたか)天宮(あまみや)天宮裕(あまみや・ゆたか)……」
 あいつも懲りない奴だなぁ……などと考えていると、そこへいつの間にか総介が現れる。
(かみ)総介「どうやら来てしまったか……」
一同「うおっ、びっくりしたぁ!」
 いつの間に出現したのか、あまりにも突然な出来事に心臓が止まりそうになる一行であった。
與鷹(よたか)「総……お前、何か知っているのか?」
総介「……」
 ってか、そこで黙るのよ!って心の中で突っ込むあろえ
山咲(やまざき)桜「伝えるのが遅くなってしまって申し訳ないのですが、もう、随分も昔の話になりますが、天宮裕(あまみや・ゆたか)が脱獄し
ました」
あろえ「遅ッ、情報遅ッ!」
 今更そんなこと告げられても困る。って何故か当の本人でもないのにあろえが突っ込む。まぁ、気持ちは分かる
よ……
 ちなみに、余談だが、(ゆたか)與鷹(よたか)のフリをして道場破りを繰り返し、與鷹(よたか)の名声を地に叩き落すと同時に與鷹(よたか)を殺
そうと画策し、そして、失敗に終わって投獄されていたのだ。
総介「奴は脱獄してすぐさま行方が分からなくなった……」
 そして、困ったことに、無能な部下(バカども)はそれをひた隠してきた。
 行方不明になってあまりにも音沙汰がなくなっていたのですっかり忘れており、今に至ったのだという。
※つまり、総介らも悪いよね……
白拍子かんな「リーダー……」
 ちょっと不安そうな目で與鷹(よたか)を見つめるかんな。
総介「気を付けろよ、今になって挑戦状を叩きつけてくるってことは、それだけ自信があるってことだ」
與鷹(よたか)「あぁ、分かっている……」
 ぐしゃりと果たし状を握りつぶす與鷹(よたか)。
 この死合、どうあっても逃げ出すわけにはいかない。
 同じ双狼拳(そうろうけん)の使い手として、奴には引導を渡してあげなくてはならない。
 それが、双狼拳(そうろうけん)正統伝承者たる與鷹(よたか)の使命なのだから。
與鷹(よたか)「では、行ってくる!」
テノ「だるだる〜〜〜」
一同「いや、いい雰囲気ぶち壊し!」
 戦場へ赴く緊張した雰囲気を、テノがぶち壊す。


続

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