Eighter -Scarlet Nocturne-
36ther 〜双虎は世界を廻す B〜



#3
梓與鷹(よたか)(確かに、相手の力量と自分の力量を比べることは戦いにおいては重要だ……)
(かみ)総介(まぁ、それを活かせるかどうかは別の話だがな……)
毛禰魯(ねろ)「君、小さい頃、死ぬような怪我をして、回復するのは絶望的だとか言われたそうだね……だけど
その後、何事もなかったかのように元気になったそうだね?……まるで奇跡でも起こったみたいだと……」
化野梶太郎(あだしの・かぢだろう)「あぁ?それがどうした?」
禰魯(ねろ)「いいや、これで君の勝ちは無い!」
 既に勝利を確信したかのような笑みを浮かべる禰魯(ねろ)。その自信はどこから来るのか?
梶太郎(かぢだろう)「あぁ?」
禰魯(ねろ)「強さとは美!……傷一つない美しい肉体にこそ力は宿る!」
 バっと上着を脱ぎ捨て絵画の様に美しい肉体を披露する禰魯(ねろ)
梶太郎(かぢだろう)「何言ってんだ、コイツ!?」
禰魯(ねろ)「来なよ、僕の美麗虎掌(びれいこしょう)の前に、お前は屈する!」
梶太郎(かぢだろう)「上等だコラ!死ねや!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
 ドドドドドドドッ
 ちょっと禰魯(ねろ)の物言いにカチンときた梶太郎(かぢだろう)は、怒りを込めて拳打の嵐を浴びせる。
梶太郎(かぢだろう)「な、なんだと!?」
 しかし、その拳は一切合切、禰魯(ねろ)に届くことはなかった。流れる水の様に、拳が受け流される。
 それはまるで金鯱流楼(きんこるろう)。しかし、それはあり得ない。なぜならば、金鯱流楼(きんこるろう)梶太郎(かぢだろう)が独自に編み出した奥義だ
からだ。
禰魯(ねろ)「美しくない……」
 ドドドッ
梶太郎(かぢだろう)「がはあっ!?」
 梶太郎(かぢだろう)が驚いているその隙に手痛い反撃を食らう。
與鷹(よたか)「あいつ、強い……」
 そして、與鷹(よたか)は同時に思った。美を意識する闘い。それは、かんなに力を貸す『位』の破壊神、茜瑙哭(セドナ)の様だと
……
與鷹(よたか)虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を極める、極めない以前に……そもそも勝てるのか?)
梶太郎(かぢだろう)(強さとは美!?……巫山戯(ふざけ)やがって!あの綺麗な顔に一発いれてやらないと気が済まないぜ!)
梶太郎(かぢだろう)「おあああ!極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
 懲りずに殴りかかる梶太郎(かぢだろう)。しかも、今度は顔を重点的に攻め続ける。
 しかし、先ほどと同じように一発も掠りもしない。
禰魯(ねろ)「攻撃とはこうやるものですよ、極彩虎襲(ごくさいこしゅう)!」
 ズドドドドドドッ
梶太郎(かぢだろう)「おごあっ!?」
 逆に、禰魯(ねろ)の攻撃は全て梶太郎(かぢだろう)にヒットする。
 そして、梶太郎(かぢだろう)はなぜか全身から七色の血を噴き出し吹き飛ぶ。

#4
與鷹(よたか)「なな、なんだありゃ!?」
禰魯(ねろ)「戦いは美しくあるべき……これが僕の美麗虎掌(びれいこしょう)!」
 よく見ると禰魯(ねろ)は絵具チューブをいくつか握りしめていた。
 そう、美麗虎掌(びれいこしょう)とはアクションペインティングのことだったのだ!
※つまり、先ほどの七色の血も単なる絵具です
梶太郎(かぢだろう)「ぐくっ……」
 今回、梶太郎(かぢだろう)はまだ虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を使っていない。だから虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を使えば逆転する可能性は微レ存(なきにしもあらず)
 しかし、ただ虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を使うだけでは極めるに至らない。これは今回総介、與鷹(よたか)から課せられたノルマであり、
この課題がクリアできるまで虎伏絶掌(こふくぜっしょう)は使わないと梶太郎(かぢだろう)は心に決めていた。
山咲(やまざき)桜「警部……」
 実は最初からいた桜は悲しそうな目で総介を見る。
総介(奴が虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を使いこなせない理由は分かっている……)
 先ほど禰魯(ねろ)が言った言葉……小さい頃の全身が動かせなくなるほどの大怪我……
 その後、奇跡的に復活したと奴は言ったがそうではない。先に答えを言うならば、梶太郎(かぢだろう)虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を応用して
動かない肉体を動かしているのだ。
 だから虎伏絶掌(こふくぜっしょう)を使ってもすぐに効果は出ない。(むし)ろ、効果が出ることが奇跡なのだ……


続

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