Eighter -Grand Harmonise-
25ther 〜侍はあか色がお好き A〜



#0
剣に生き、剣に逝く……それが侍……ただひたすらに剣の道を極め……その果てには何があるのだろうか
……これは、そんな侍に纏わるストーリー
※ちなみに、いさむをメインにしたストーリーではないのであしからず

#1
天四斗あまよと、羅将門
松子しょうこは今日もここで夕日を眺めていた……
その夕陽のベストスポットは……しかし、松子しょうこ以外に誰も気に留めず……故に松子しょうこの貸し切り状態となって
いた……
ザムッ
と、そこに現れたるは……1人の女……刀の鍔を模した眼帯を右目につけ、刀を携えている……羅将門の奥
深くまで入り込むとは……なかなかの腕の持ち主か!?
*「アンタが盲目の松かい……!?」
前田松子しょうこ「……だとしたら……何ですか?」
彼女の問いに振り向きもせず答える松子しょうこ
*「……うん、まぁ……なんつ〜か……」
ボリボリ頬をかきながら話す女。そのまま暫し考え込み……
*「おっと……名前がまだだったねぇ……私は伊達……伊達宗美だよ」
彼女は、奥州の独眼竜……伊達正宗が子孫……
松子しょうこ「……そうですか……ところで、宗美さん……何をしに来たのですか?」
すっと千寿院せんじゅいん村正に手を添えて振り向く松子しょうこ
伊達宗美「盲目の松……噂に違わぬ手練れだねぇ」
話が早くて助かるよ……と宗美
松子しょうこ「……あなたの殺気が分かりやすいだけですよ……」
宗美「やれやれ……言ってくれるねぇ……」
スラッ
愛刀(宗美曰く『村正・梵天丸』)を抜刀する宗美
宗美「ま、とりあえず死合おうや……」
松子しょうこ「……はっ!」
ガギンッ
ギギイイッ
先に飛び込んだのは宗美……だが、しかし、瞬時に間合いを詰められて切り込まれる……
宗美「これが、噂に名高い穀蔵院こくぞういん一刀流かい……!」
松子しょうこ「はっ!」
ドオオンッ
そのまま振り下ろし宗美を弾き飛ばす
宗美「おおおっとぉ……やるじゃないの……」
ザザザザッ
余裕の表情で体勢を立て直す宗美
宗美「だが、奥州の独眼竜を甘く見るんじゃないよっ」
ガギンッ
ギギギギイイッ
そして……松子しょうこに勝るとも劣らぬ剣腕で互角に渡り合う

#2
松子しょうこ「……奥州って、今は江戸の世じゃないですよ……」
宗美「だったらヨーロッパの方にするよ!」
※欧州の独眼竜って何だよ!……ってか第一それって日本人の通り名にしちゃあ似合わないってか不釣り合い
 ってかなんていうか……
ギャガインッ
ギギギギッ
かくて、死合は激しい鍔迫り合いへと移行する
宗美、松子しょうこ「はあああ!!」
ドガガンッ
そのまますれ違う両者
ザザザザザッ
距離を保って再び向き合う
宗美「面白い……面白いよあんた……」
松子しょうこ「……そういうあなたこそ……やりますねぇ……」
宗美「でも、まだ何か隠しているだろアンタ」
松子しょうこ「……それはお互い様ですよ……」
宗美「ふふん……だったら私の独眼流……見せてあげるよ……」
独眼竜通り名独眼流流派って……ダジャレかいッ!
松子しょうこ「望むところです」
コオオオオオオッ
両者の殺気が増していく……
ガカアアッ
松子しょうこ「はっ!秘刃・血雨ちさめ!」
宗美「おおっ!骸鴉閃がいあせん!」
ギョガギイインッ
相手を一刀両断するという松子しょうこの剣に対して疾風の如き剣閃で横薙ぎを繰り出す宗美
松子しょうこ、宗美「ぬ!?」
ギリギリギリギリギリッ
両者の刃が真っ向からぶつかり、そのまま両者、一歩も動けなくなる
松子しょうこ、宗美「ハッ!」
ジャリィンッ
ザザザザザザッ
すぐさま互いに刃を退いて、そのまま退く
宗美「いやぁ……まいったまいった……さすがにこの村正・梵天丸を壊すわけにはいかないしなぁ……」
村正・梵天丸を見ながら宗美が豪快に叫ぶ
※ちなみに、宗美の愛刀……村正・梵天丸なんてまぁ大層な名前を付けてはいるがその実際は政宗の愛刀と
 して名高い山城大掾藤原国包やましろだいじょうふじわらのくにかねなのである。
松子しょうこ「……続けますよ……」
そんな中、松子しょうこはマイペースに死合の続行を宣言……
宗美「おうともよ……」
ガッギギギギインッ
そして両雄は一足飛びにかかり、再び鍔迫り合いが展開される
・
・・
・・・
一方、その頃……
天四斗あまよと、某所
*「あの方は今頃松子しょうこさんと会っているころでしょうか?」
*「……」
隣の女性に語りかけるも……彼女は無口を貫く……
*「……ええ、まぁ、当然でしょうねぇ……侍なのですから、剣の道に入ったものならば避けては通れない
 宿命ということは分かっていますわ」
更に、仕方のないことなのです……と首を振りつつ隣の女性に同意を求めつつ彼女は語る……
*「……」
左右非対称な袖の着物を着、大きな刀を携える小柄な女性と、無表情で無口な女性……
*「……ところで、もう1人のあの方はどこにいらっしゃいますの?」
*「……」
が、しかし……やっぱり沈黙を貫く彼女……その相貌は……天を見つめる……
*「……あの……少しは喋ってくださいませんか?」
1人で喋っているみたいで寂しい……いえ、寂しいことはなくはないのですけど……虚しいのですよ……
と彼女……
……果たして……この2人は……そして宗美との関係は一体……!?


続

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