Eighter -Grand Harmonise-
12ther 〜無双傾奇者の裔冑えいちゅう C〜



#5
天四斗あまよとの夕陽の名所、羅将門にて始まったいさむ松子しょうこの死合……双方、心眼を使うがため、力量は互角……
そして、死合は無血では済まない方向へと展開していく……果たして、この死合……どうなる!?
天四斗あまよと、羅将門
ガギャギャギャギィインッ
幾度もの鍔迫り合いを経て、両雄は幾度めかの距離を取る
ダダンッ
ダムッ
前田松子しょうこ「……やりますね……」
激しい剣戟により、負った掠り傷を拭いつつ、松子しょうこが叫ぶ
某敢それがし・いさむ「お主も……流石は穀蔵院こくぞういん一刀流……でござるか……」
戦国時代から遠くかけ離れたこの時代に……ここまで剣の腕を磨いているとは、見事でござる……といさむも
感嘆する
松子しょうこ「……でも、あなたこそ……まだ何か隠していますね?」
チャキッ
千寿院せんじゅいん村正を構え直して松子しょうこが静かに語る
いさむ「……いや、隠していることなど……」
ジキッ
明星幻爪みょうじょうげんそうを構え直しつつ、いさむも語る
ズズズズズズズズズッ
そのまま、距離を保ちつつ、対峙する両雄……
いさむ(……しかし……この感覚は……一体!?)
死合う度に……いや、刃を交える毎に感覚が研ぎ澄まされていっているいさむ……その感覚に戸惑っている様子
……松子しょうこはそれを感じ取り、まだ何か隠し持っていると判断したようである……
松子しょうこ「……さて、まだまだ遊びはこれからです……派手に傾いていきましょう……」
ひゅおあっ
一足飛びにかかり、そのまま一気に間合いを侵食して斬撃を叩き込む松子しょうこ
いさむ「左かっ!」
ギャリィ〜〜ン
松子しょうこ「なっ!?」
……だが、刃はすんでのところで弾き飛ばされる
キュラキュラキュラキュラッ
ドスッ
いさむ「……!!?」
松子しょうこ「……くっ……」
ババヒュアッ
すぐさま飛ばされた刀の元へと飛ぶ松子しょうこ
ぐぐっ
松子しょうこ(私の心眼が……見切られた!!?)
地面に刺さった千寿院せんじゅいん村正を引き抜き、もう一度構え直す。

#6
いさむ(……今、何故拙者は松子しょうこ殿の動きの先を……読めた!?……いや、相手の動きの先は……ある程度は
 読める……しかし、それは、拙者と相手との実力に差がある場合のみでござる……)
いさむいさむで、一体何が起きたのか正確に把握できていない様子……呆気にとられている
チャキッ
いさむ「クッ……」
松子しょうこ千寿院せんじゅいん村正を構え直したことを察知し、死合に集中するいさむ……
しかし、先ほどのことをうまく把握できていないのは松子しょうこもまた同じ……
戸惑う両者はそのまま刀を構えつつ動かない……いや、動けない
松子しょうこ(……?『真なる剣聖』……何をしているの!?……この機を逃すなんて……まさか……さっき
 のは偶然!?……そんな……ことが……!?……でも……身に染み付いた挙動が……侍の魂が
 起こした行動!!?)
*(……心眼を超えた心眼……其は過去と未来の現象を認識し、現在に活かす……故に……其を『神眼じんがん』
 と云う)
と、そのとき、いさむは師匠、剣聖丈太郎の声を聞く……
いさむ(……今のは!!?)
剣聖丈太郎(いさむ……お前は今、剣術の『極限』を得た……)
いさむ「……師匠……」
コオオオオオオオッ
丈太郎の声を聞き……いさむの殺気が清々しく晴れ渡っていく
松子しょうこ(……?……『真なる剣聖』の氣が変わった!?これ……は!?)
いさむ松子しょうこ殿……次で、幕引きでござるよ……」
松子しょうこ「望むところです!!」
いさむ「……某敢それがし・いさむ……参る!!」
かくて、両雄は決意を新たにし、対峙して気をためる
松子しょうこ(……次で……極める!……穀蔵院こくぞういん一刀流……その身に受けよ!!)
松子しょうこ「はああああ!!!!秘奥刃ひおうじん幻影まぼろし!」
ドドドドドドドッ
分身を作って一気にいさむに斬りかかる
いさむ「……おおぉおお!命驪天禽舞みょうりてんきんぶ!」
ゴバアアアッ
松子しょうこ「なっ!!?」
次の瞬間、光が落ちてきて松子しょうこの分身を全て斬り飛ばす
松子しょうこ(……これは……何!!?……何も……見えない……感じない……)
ビタリッ
そして、本体に明星幻爪みょうじょうげんそうが突き付けられる
いさむ「勝負あり……でござるよ……」
松子しょうこ「……参りました……」
完敗であった……
・
・・
・・・
そして、2人の死合はほぼ無血にて終焉す
松子しょうこ「流石は『真なる剣聖』ですね……」
もっと手傷を負って死合が終わるかと思いきや、そんなことはなく、松子しょうこは感嘆の声を漏らす
いさむ「……いや、拙者の剣の道はまだまだ……」
松子しょうこ(……私の心眼でも何も見えないなんて……こんなことは……光を封じて以来久し振りだわ……)
死合が終わったころ、辺りはとっぷりと暮れていた……
松子しょうこ「夕陽……沈んじゃいましたね……」
いさむ「……そうでござるな……」
松子しょうこ「『真なる剣聖』……いさむさん……また、お手合わせお願いします」
いさむ「……承知」
松子しょうこ「今度は……私が勝ちますよ?」
……そして、いさむは羅将門を後にする……
松子しょうこ「……」
……前田松子しょうこ……彼女は今日も羅将門にて(見えない眼で)夕陽を眺める……そんな彼女は……後に
ある組織にスカウトされたりするのだが……今はまだ、先の話である。


END

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